古々しくも手入れの行き届いた空手道場。
人数こそ少ないものの猛者揃いの盆倉門下たちが日々汗を流している。
土日には子供空手教室なんかも行っていたりする。
時折態度のでかい居候がやって来て指導をしたりしなかったり。
(からぶった掌底は楓の首の動きに合わせる様にサッと素早く引っ込めて全身から一度力を抜く
だらりと軽く両腕を下げ、肩幅に足を開いた状態で迎え撃ち)
…スッ(僅かな呼吸と共に息を止め、全身へ今度は一気に力を込める)
(一段目、へその下への一撃により肉を叩く打撃音が響く。二段目、鳩尾への一撃により肉を叩く打撃音が響く
三段目、喉笛。その刹那、右足が僅かに動いた、と同時にスッとその拳だけを全身を横の態勢にして回避)
(その後の動きはこうだった。すぐさま左手で相手の回避した相手の腕の手首を掴み、右手で相手の襟を掴み
そしてそのままくるりと右足を軸に左足を180度回転させながら足腰の筋肉と全身のバネと遠心力を使い、左手で腕を引き込みながら相手の体を持ち上げ
そのままフッと言う力強い呼吸と共に流れる様な動きで相手を背中から道場の床へと叩きつけ、投げ伏せさせようと。もちろん、上手く動きが決まればだが)
クハッ、女人禁制とか何時代の話だっつーの。
実際そーゆーお堅い所もあるっちゃあるが
此処は普通の町道場だしそうカタい事言わねーよ。
(門弟達は照れくさそうに鼻の下を伸ばしている。
純朴な盆倉門下達は基本的に女慣れしていないのだ!)
あ、お前も顔見知りだった?
まあ狭い島だしな―――っと。
(全身の運動を使った強烈な掌底。まともに食らえば相当な威力だろう。
だが立ち上がりの分距離がある。その猶予でもって軌道を見切り、首を反らしたのみで難無く躱す)
……分かってねェな。もう一度言うぜ、この状況は「俺の間合い」だ。
あんま気ィ抜いてっとお前、次で沈むぜ。
(回避と同時、ザザッという踏み締めの音と共に楓の拳が掻き消える。
立ち上がりながらの掌底でガラ空きのボディへと繰り出されるのは一本拳。
明星・水月・喉笛と、全て人体急所を狙った神速の正中線三段突き)
ん?知り合いだったのか…(道場内に入ってきた冴来を見れば)
…あぁ、あの庭で出会った…(と、ここまで言いかければ既に楓が間合いの中に入っていたので、ゆっくりと正座のまま視線を楓へと向けた後)
ん?あぁ…もう間合い…であるな!!(スッと正座から右足を僅かに前に出すと立ち上がりと同時に全身のバネを使いながら楓の顎めがけて掌底を打ち込もうとする)
え、入ってもいいの?
道場って、武術を極めるための神聖な場所だっていうし
安安と足を踏み入れちゃ
いけないかなって思ったんだけど…。
…お邪魔します。
(スカートの裾をつまみ、優雅に一礼して道場の中へ)
ふふ、ありがとう。
お持て成しされるのはいい気分がするなぁ。
(機嫌良さそうに微笑み
座布団に座って、門弟から麦茶を受け取る)
…試合、見られるのかな。
…楽しみ…。
(楓さんの放つ殺気を感じ取り
二人の様子を興味深そうに眺める)
(気配に気が付き)
ん? おお、冴来じゃん。
そんな所に突っ立ってねぇでナカ入れば。
オラ門弟共、珍しい女子の来客だ丁重にもてなせや!
(そうどやすと慌ただしくモブ門弟達が冷えた麦茶と座布団を持ってくる)
(試合、と聞いて同じく口の端を吊り上げ)
へェ、そうかい。
まあテメーはかなり練り上げてる人種だろうし、
始めから多少本気で戦るのもよさそうだ。
(そのままズカズカと相手に歩み寄り)
……で、既に「俺の間合い」だが。どうするよ?
(もう始まっている、とばかりに濃密な殺気を滲ませる)
>楓
余は素直に感服しただけなのだが…いや、すまない
うむ、見学目的であったが…(「遊んで」と言う言葉を聞いて僅かに考えた後)
「遊んで」行くつもりは無いな
やるならば、やはり「試合」であろう。そうではないか?(僅かに口角を吊り上げながら)
…それにしてもだが、入口の方から誰かの気配を感じないか?先ほどから
……。
(息を潜めて入り口から中をそっと覗いている。
見学しているつもりらしい。
そうか。そりゃ一安心だ(ケケケと笑い)
応、またいつでも来いよ。
次はどんな風に驚かしてくれんのか期待してんぜ。
(ひらひら、と軽く手を振って見送った)
だーもーだからそう必要以上に褒めんなよ。
背中痒くなってくるっつーの!
(しかめっ面で頭をバリバリと掻いて)
…ん? ああそういやお前は見学目的だったっけか。
まだ見てんなら好きなだけ見てきゃいいし、
お前も「遊んで」いきたくなったってんなら相手になるぜ。
(ぐぐ、と柔軟で腕の筋を解しつつ)
咄嗟では無かったか…しかし、獅子搏兎と言うであろう?
「格下相手に使ってもいい」では無く「例え格下が相手であろうとも全力を出し切る」
…負けた方も清々しいと思うぞ。余に取っては
汝の全力をその身で受けたから、であるな。だからこそ、余は感服しているのである
(その後、ねむるの方に顔を向けて)
疲れてはいるが、気分は良いであろう?「彼の力を全力を受け切った」のだから
それに「全力を受けた」からこそ、また挑みたいと思わないか?彼に
余はそう思うが…まぁ、余がそう思っているだけだ。気にしないで欲しい
(最後にゆっくりと頭を下げてねむるを見送った後は)
さて、余はどうするか…(僅かに考える仕草をする)
いや、今はまだやめておこうかな。
(そっと立ち上がり)
まだその看板は僕には重たすぎるから・・
それにどうせなら力づくで奪いたいからね。
(門下生の方を向き微笑み)
さて、今日はここらでお暇しておくよ。
流石に体がヘトヘトだからさ。んじゃ、またね・・鳴神くん
一から鍛え直して出直してくるよ。
(そっと出口の方へと歩き出し)
へェ、八極拳士じゃなく喧嘩師を名乗ってるのか。
そいつァとても「楽しめそう」だな……。
(ギラリ、と禍々しい笑みを浮かべて呟き)
ま、もし機会があればよろしく頼むぜ。
(黄流の言葉にゆるゆると首を振り)
いや、咄嗟じゃねーよ。俺は意図して空手をやった。
その一撃をねむるが防げないのも理解した上でな。
明確な格下相手に「使ってもいい」と思わされちまった、
こりゃ実質負けみたいなもんだぜ。どーするねむる、看板持ってく?
(くい、と顎で看板を示す。流石に門弟たちも「えっ!?」って顔で振り向いた)
(楓に手で制されれば拍手を止めて)
何、やはり尤も馴染んだ動きが咄嗟に出たのであろう
体に馴染んでいると言った所であるな
自らに取って尤も馴染んでいる動きが最大限の力となる、と言った所であろう
(そのままコクリと頷き一つ入れて)
(そのまま次にねむるの方を見れば)
確かに歯の立たない相手ではあろう
ただ、食らえば一撃で終わるであろうアッパーを寸前で回避を行ったり
ジリ貧になった時の返し手での鉄山靠…
咄嗟の判断力が高くなければ避けたり行動を起こすのは無理であったと思う
状況に応じた咄嗟の判断力。ほぼ条件反射に近い物であるな
それが高ければ高いほど強い者であるぞ。もちろん基礎的な部分も大事ではあるが
(やはり頷きをもう一度入れるのであった)
そりゃそっか・・
(ちょっと痛がりつつ起き上がり床にあぐらをかき)
八極拳ができる・・というよりかは八極拳の技を何個か使える
その程度の練度さ(自嘲気味に笑みを浮かべ)
ちなみに犬神さんという喧嘩師さんが僕の師匠だよ。
多分、鳴神くんと互角にやりあえるレベルには強いと思う・・
今度会う機会があれば紹介しておくね。
(黄流さんの拍手に気づき)
いやあ、実のところ鳴神くんには全く歯が立ってなかったけどね。
それでも褒めてくれるのは純粋に嬉しいかな、ありがとう・・
バァカ、こちとら生まれた時から武術やってんだ。
そう簡単に追いつかれたらたまんねェっつーの。
(ふっ、と息を吐きつつ残心。相手に継戦の意が無いとみて構えを解き)
あー、まあでもやっぱお前センスいいよ。
あの状況で八極拳が出て来るとは思わなんだ。
いい老師の下に就いているとみたね。よし今度紹介しろ、バトりたい。
しかし節操無く手ェ出してんな。ボクシングに八極拳、他にも何か齧ってそうだし。
何なの? 地上最強の弟子でも目指してんの?
(黄流の拍手を手で軽く制して)
よせよせ、そう過剰に褒めんな。
俺がやったボクシングもどきなんざ見様見真似のお遊びみてーなもんだ。
つーか今日は空手使うつもりは無かったんだけどなァ。(ボリボリと頭を掻き)
うむ、良き戦いであったな(その場で拍手をしながら)
ねむる…だったか。ボクシングを習い始めたと言ったが、闘い慣れしていたな
ボクシングの型のまま瞬時に動ける様なバネを持っている
それに最後の局面であえてのボクシングの型を止めての鉄山靠
防御のままではジリ貧になると考えての攻めであった。決定打にはならなかったが判断としては見事である
鳴神…であったか?汝もやはり実戦経験が豊富なのであろう
相手がボクシングの型で攻めているからとあえてボクシングの型で攻めを始めている
それも変則的で隙を与えない様な手で絡めとる様な振り方であった
初撃もすぐさま足並みを整えて体を横倒しからのアッパーであったな
相手を見据えて型を変えられる、と言うのは見事であったぞ
もちろん最後の一撃は得意の空手での正拳突きである
…最後の最後は一番の得意手であった。感服したと同時に眼福であったぞ(二人の戦いぶりに感激したのか、心の奥底から拍手をしている)
くそ・・踏み込みが浅かったか・・は!?
(背筋を伝うさっきに身震いし一瞬判断が遅れ)
くる!ガードしなく・・っ!?がはぁっ
(ガードの予備動作を始めた時点で鳴神さんの拳は既に体にめりこみ、そのまま数m弾き飛ばされ床を転がり)
ち・・くしょ。はぁ・・はぁ
(意識こそあり、立ち上がろうとするも既にそんな余力は突き崩れ落ち)
はぁ・・参ったな。やっと追いつたと思ったのに。まだ全然だったみたいだ。
(倒れたまま手を天井に伸ばすも、その表情は負けたにもかかわらず笑みを浮かべている)
ほらほらどうした!
守ってるだけじゃあ勝てねェぞ、――ッ!?
(豪雨のような連打の中を、被弾覚悟で飛び込んでくる相手に目を見張る。
相手に背中を向けたこの動きはボクシングではない。これは――)
八極拳、かッ!!
(左腕をガード位置まで引き戻そうとするが、間に合わない。
フリッカーは構えの性質上防御に移りにくいという弱点がある。
ガードを掻い潜った鉄山靠がその勁力を発揮し、弾かれるように楓の身体が数メートル程押し戻される)
……、……惜しいな。
あと5年、いや3年功夫を積んでりゃ今のは完全に有効打だった。
(コオォ、と深く息を吐いて体勢を整える。鉄山靠が決まりきる直前、
すんでの所で自ら後ろに跳び、更に脱力によって衝撃を逃がしていたのだ)
しかし今の一撃が見事だったのは間違いなく事実。
そこんトコに敬意を表して、――少し本気を出してやろう。
(直後。ズダァンッ!! という炸裂音と共に楓の身体が砲弾の如く打ち出される。
床板を抉る程の踏み込みにより十歩の距離を三歩で駆け抜け、放つのは中段正拳突き。
ごく基本的な、しかし極限まで研ぎ澄まされた「空手」の一撃)
(ジャブの乱打…それも軌道は変則的…フリッカージャブであるな)
(正面、裏拳、掬い上げ…様々な軌道で乱打を行っている)
(…下手なガードはジリジリと崩されていくな…ただ、速さの為、常人ならばガードせざるを得ないか…)
(いや、常人ならば一方的に食らって終わる物であるな…)
(と、ここでねむるがボクシングの技では無く違う技を繰り出してくるのを見れば)
(…やはり「闘い慣れ」と言った所であろうか…習ったばかりのボクシングの型を捨てて別の技に入っている)
(鉄山靠、中国拳法であるな。背中からの体当たりである)
(元々下半身のバネがしなやかである。型が決まっていれば悪手では無い、が…)
(僅かに考える仕草をしながら鋭い眼光は変わらず二人の戦いの様子を見ている)
くっ!!
(変則的な乱打に防戦一方になり)
まずい。付け入る隙が全然ない。一体その歳でどんな鍛え方をすればそんな・・痛ッ
(フリッカージャブの一発がガード越しに効いてきて)
くそ・・このままじゃジリ貧だ。どこかで形勢を変えなくちゃ。
でも少しでもガードを下げたら畳み掛けられる・・
どうする?考えなくちゃ・・・
・・・はっ!・・・
あれしかない。師匠に教わったあの技、試してみます
(ガードをしたまま玉砕覚悟で懐に入り込む。その間適度に拳がヒットしながらも)
はぁ・・はぁ・・イチかバチかっ、鉄山靠ッ!!
(鳴神君に背を向け呼吸を集中し、体当たりを放ち)
よし、良い反応だ。
ディフェンスもちゃんと練習してるようだな。
(即座に追い打ちはせず一旦その場に立ち止り)
いやいや、さっきも言ったがお前も中々いいパンチしてるよ。
だがボディブローってのは長期戦向けの「積み重ねる」攻撃だからな。
サービスなんて舐めた事ぬかす相手にゃ遠慮せず急所狙った方が得だぜ。
……そうだな、じゃあ舐めてるついでにもう一つ。
今日はお前のボクシングの練習に付き合ってやろう。
えーと、確かこんな感じだったよなっと!
(言うと、やはり空手のものとは違う軽快なステップワークで距離を詰める。
異様なのはその構え。肘を曲げて下げた左手を振り子のように振るうヒットマンスタイル。
しならせた左腕を鞭のように打ち出す変則軌道のジャブ、所謂フリッカージャブの連打が襲い掛かる)