ちゃよなら、寝子祭！｜リアクション

ちゃよなら、寝子祭！

【けせない"かこ"】

　サキリ・デイジーカッターは暗い闇の中にいた。
　光の見えない世界で五歳児の姿になったサキリは泣いていた。
「……えーん……えーん……」
　幼児化は神魂の仕業にほかならなかったが、暗い闇の原因は彼自身の心の内側――幼い頃のトラウマにほかならなかった。
「おとうさん、どうしてぼくをたたくの？　おかあさん、どうしてわらっているの？」
　五歳のサキリはただ泣き叫ぶことしかできない。
　そこには闇しかない。
　掴むべき光などあるはずもない。
　だが、
「え……？」
　しかし、そのとき、五歳のサキリの目の前で地面に横たわる何かがキラリと妖しい光を放つ。
　サキリは、ほとんど反射的にその何か――幼児化した子供達が暴れまわることで家庭科室の床に落ちていた『包丁』に手を伸ばし、そこではたと現在の自分の記憶を取り戻した。
「……なんだ、これ？」
　幼児と化した子供達で上を下への大騒ぎとなっている部屋を見まわして、サキリはしばし呆然とする。
　それからすぐにそれが神魂の仕業なのだと気づき、そのせいで自分の過去の記憶が甦ってしまったのだということにも気づいた。
「……やれやれ。ぼくのこどものころのきおくなんて、ロクなものじゃないな……」

　一つ大きく息を吐いて、サキリはひとまず当初の予定通り（子供なりに）料理をしつつ、神魂現象を止める方法を探すことを決めた。