その鐘を鳴らせ　～異空間脱出～｜リアクション

その鐘を鳴らせ　～異空間脱出～

　青い影を己のろっこんをつかってジュストは攻撃する。しかし、なれない環境と初めてつかうろっこんの所為か、心なしか疲れたように見えた。
「さ、さすがにバテてきたんじゃねーの？」
「ま、まだまだっ！」
　バットを振って影を殴り飛ばした雅也にそう言われ、背中合わせになったジュストは負けじと叫ぶ。
　影の攻撃を高いところへと飛んで避けた陽毬は、霧が僅かに晴れた瞬間に青い鐘をはっきりと見た。
「もう少しでアウトレットモールですっ！」
「おや、もうそんな所まで着ましたか」
　別の瓦礫に登った記士郎が、道路標識のような物を見つけて大きく鳴らす。と、ぞろぞろと影が記士郎の方へと向かっていく。頃合いを見計らって霧に紛れ走り抜けた彼は、倒され、動けなくなった影と３人の高校生に出迎えられる。
「位置的に、近くなっています。確かに、青い影が４体、鐘の周りにいるわね。まるで守っているみたい」
「それじゃあ、どうにかしなくちゃな」
　陽毬の報告を聞きながら、ジュストが苦笑する。雅也は顔をぱんぱん、と叩き、記士郎は手袋を嵌めなおす。
「行こう」
　記士郎の言葉に一同が頷いた。

　円の愛猫、にゃーくんが何かを察知して威嚇する。
「どうしたの、にゃーくん？」
　円がその方向を見ると、青い影が１体近づいてくるのが見えた。轟は真白たちに、隠れるよう指示する。
「こっちの方は……少し遠回りになるけれど、影は居ないみたい」
　偶然見つけた地図を見ながら紫がそういえば、美咲紀がうんうん、と頷いて自転車のハンドルを握り締める。
「自転車があるので、私が最後にでましょう。まだ相手も気づいていないみたいですし、瓦礫に隠れて向こうの道へ」
「そうだな……。俺は椿と一緒に行く。体力には自信があるからな」
「んじゃ、円ちゃんと紫ちゃんと私で先行するね！」
　真白がそう言えば円と紫も頷く。５人は周りに新たな敵が居ない事を確認して迂回ルートへと入るのだった。

（そういえば、この猫は……）
　修はそれとなくトワに抱っこされている猫を見た。テオに良く似ていた猫は疲れた様子で眠っていた。
「がおー、ご苦労なのだ！」
　傍では真央ががおーを抱えて労を労っている。楓と刀は共に敵が居ないか辺りをチェックしている。その様子を見ながらトワは猫を膝の上においた。
「暖かいデースネ。good sleeping……」
　トワも疲労からか眠気を覚えるも首を横に振ってがんばって起きる。そんな様子に楓がため息をついていると刀が一方を見る。
「何かあったか？」
「アレが、例のヤツか？」
　刀が指差す先に、青い建物があった。ショッピングモールから見えるのは不思議だが、近づいている事は確かだ。
　修たちも見たものの、直ぐに霧の向こうへと消えてしまう。一堂は目標地点を見て急ごう、と心から思うのだった。

　ある者は戦い、ある者は隠れ、ある者は走って目的を達成せんと進み続ける。
　そうして、アウトレットモールに１４人と３匹の猫が集う。
　……戦いは、最高潮を迎えようとしていた。