ランチタイムはウォータイム！｜リアクション

ランチタイムはウォータイム！

▽寝子高・３年２組教室

　午前の授業が終わり、ある者は中庭へ、ある者はカフェテリアへ。思い思い昼食を取り始める。
　三夜静音はどこに移動することもなく、自分の席で、自分で作った弁当を食べる。
　機能性重視のシンプルデザインのお弁当箱の今日の中身は――カツ丼。
　開くと同時に――

や、やぁ。

「……こんにちは？」

　挨拶が飛び出しました☆

キミは僕を食べたいんだよね？　でも、僕はまだ生まれたばかりで世界を知らないんだ。
食べるなだなんて贅沢は言わないよ。……ただ僕をひととき自由にして欲しいんだ。

「はぁ、成程、生まれたからには自由を謳歌したいと」

そう！　僕はカツ！　勝利のカツ！　自由を知らずに死んでいくなんて、そんなの勝利とはいえないだろう？

　よくわからない持論を振り回すカツ丼にやや辟易しながらも、静音はまずは手を合わせた。

「いただきます」

って、ええええええええええええ！？　僕の話、聞いてた？

「聞いてましたよ。ですがその食いやすさを重視したスペックの肉体でいかがなさるおつもりで？
　外に出たらあっという間に文字通り野生動物の餌食ですよ……モグモグ」

ぎゃああああ、食べてる。食べてるよぉおおおお！！？？

「第一貴方の体は食べられる為に生まれ育った豚さんと、食べられる為に庭で育てたキャベツと、食べられる為に生まれたご飯と食べやすくするために作られたソースで成り立ってるんですよ？
　その最終形態がそんなごね方をしたんじゃ、それら全ての生き様が無駄になります、モグモグ」

うぎぃいいいいいいい、ぐぅ……そ、そうじゃない、んだ。僕が、こんなところで死んだら、それこ、そ……うぐぅ……ウガッ！

「というかモグモグあんまり御託並べられると既に空腹でイラついてる私がどんな汚い食べ方をするか分かりませんよ？　モグモグ」

食べ方っていうか、もう食べてるぅうううううううううう！！！！

「もういいじゃないですか、食べる前に『頂きます』と宣言してるんですからモグモグ」

だから、せめて僕に自由を――

「おいしくモグモグされてくださいよモグモグ」

もう、だ、めとさえ、言わせてもらえなかった……ぐすん。

「ふぅおいしかった、やはり早起きして弁当を作るのも悪くないですね」

でも、まだ生きてるんだ。たとえ胃の中のカツ丼でも、僕は、僕なりに生きていくんだ。

「……さっきのは忘れましょう」

む、無視しないで……？

「とりあえず今日はいつもより多く走りますか、えぇ」

無視しないでぇぇえええええええええ！！！