急募！　カンタン引越作業未経験OK！｜リアクション

急募！　カンタン引越作業未経験OK！

　カラオケ屋へと消えるプロフェッサー萩原を見送った短期アルバイター１１名。彼らの心を見透かそうとするかのように、人気のないオフィス街にビル風が吹き抜けた。

　目の前にそびえる３０階だてのオフィスビル。その１５階から、通りを挟んだ向かいのオンボロビルの３階へ、オフィス引越をする。１１名に与えられた仕事がそれだ。

　さらにプロフェッサー萩原に告げられた衝撃の事実。「エレベーターが使えない」。

（人間のクズがいるな……）
　心中毒づきながら、草薙龍八、ポケットに忍ばせていたスマフォのレコーダーアプリを停止させる。こういうことに関しての嗅覚で、龍八に並ぶ者はいないだろう。穏やかでない事態を察知した彼は、すぐさま証拠の確保に動いていた。
（バイトは真面目にやっておくとしよう……祭りはその後だ……）
　クッと口角を上げる。
「草薙、何か企んでいるな」
　不穏な気配を感じ取って、八神修が声をかける。
「悪事を見逃せない性質なんでね」
　そう言い返すと、龍八はビルへと歩を進める。
「ふむ。まあ俺も俺で行動させてもらうか」
　修もレコーダーを回していた。これからどう調理しようかと、思案するのだった。

「これがブラック企業……いや、ブラック社員ね！」
　こちらは楽観勢。阿寒湖まりもが調子のいいことを言うと、
「全力でバイトに打ち込む！　それが漢じゃけぇ！」
　休日なのになぜか学生服、「喧嘩上等」「夜露四苦」と書かれたコートをはためかせ、ささくれた学生帽を深く被った大豪寺騎刃が、そびえるビルに向け敢然と言い放つ。
「真・漢大原則一つ！」
　回りの目をはばからず、
「漢は黙って行動すべしっっっっ！！」
　と喋くり散らし、気合を入れ、彼もまた１５階を目指し始めた。

「やれやれ、とんだバイトに申し込んだな」
　神木煉が恵御納夏朝に声をかける。夏朝、肩をこわばらせると、
「そ、そうだね〜」
　ぎこちなく対応する。
「？」
　首を傾げる煉。どうやら身体測定での一件を夏朝は気にかけているらしいが、当時理性を失っていた煉には解せないようだ。

　とまあ、なかなか濃いメンバーで構成された、オフィス引越作業アルバイトの面々。気圧された梅戸有留がポカンとした顔で集団から置き去りにされている。
「寝子高生だよね。よろしく、僕は佐藤英二」
　優しい声をかけられ、ホッと安心する有留。
「僕は梅戸有留。なんか大変なことになっちゃったね」
「だね。でもやるしかないね」
「うん」
「平凡属性同士、仲良くやろう」
「へ？」
「いや、こっちの話だよ」
　有留に自分と同じオーラを感じ取る英二だった。

　いよいよ引越作業を開始させる、「Nyago　Worker（にゃーご　ワーカー）」より派遣されし者たち。一方その頃、ヒトカラに赴いたプロフェッサー萩原は、ドリンクサーバーの前で何を飲むか悩みまくっているのだった。

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