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雨の日、秋の日、フツウの日?
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●
生物部の黒板にはその日噂になった、謎の生物の情報が書きつけられていた。
「これね」
「これだね」
神野 美野梨
と
新井 すばる
はそのうちの一つ、『巨大生物、ネッシー現る?』で意見が一致していた。
「生物部員としては、放っておけないわね」
「うん、首長竜らしきものの目撃情報を聞いたんじゃ、調査しなきゃね」
生物部では個人が好きなように活動を行う。雨の日であろうともそれは変わらない。巨大生物の調査のため、早速二人は調査に必要な準備をしていく。双眼鏡、メジャー、採取用の道具、記録用媒体。ナイフとランプはないが、メスとちくわと懐中電灯はある。
「寝子島だから、ネッシーじゃなくネコシーかしら?」
「ネコシー? そりゃいいね、ユニークだ」
部室から出た二人は、ネッシーならぬネコシー談義に花を咲かせ始めた。
同時刻――
「あいにくの雨か……」
夏神 零
は、神社での日課が終わったところだった。一息つきながら、朝から変わらぬ薄曇りの空を見る。予報通り今日は降り続けるようだった。
「ふむ」
手持無沙汰となった零だが、そう強くない雨の勢いに一声出して頷くと、近くの建屋に入っていく。
数分ののち出てきた彼の手には、釣り具一式があった。
――雨の日に海釣りというのも、乙でござろう。
釣り人の少ない時こそ狙い目。零は出がけに、止まり木でくつろいでいる鷹に声を掛けた。
「リン、大物が釣れたら食べるでござるか?」
背中に彼女の返事を受けて、零は海へと向かった。
「海に巨大生物?」
絹織 真由良
と
風雲児 轟
は、まったく違う場所で、まったく同じ声を発した。
「その話、さっき教室でも聞いたような」
フラメンコ教室帰りの真由良。ビルや建物の向こう、暗く沈んで見える海へと目を向けた。噂は悪戯かもしれないし、実の所少々疲れてはいるが……
「神魂絡み、だとしたら放ってはおけないか」
帰路から外れ、真由良は緩やかな傾斜を降りて海岸方面へ。
「夏の海に怪獣、なんてシチュエーションならヒーローの出番だけどな」
一方、轟はそんな苦笑を浮かべていた。
「これだけ聞くとなると、ただの噂でもないだろ」
ちょっと確かめてやるさ、と話してくれた知人に言って、轟は足を海へと向けた。
●
海へと向かいながら、すばると美野梨の会話は続いていた。
「光るカエルも気になったけど、こちらの方が興味わいたのよね」
ネコシー談義。まずはなんといっても、実在するのか否かは重要なポイントだ。
「いるかいないかは、研究しないうちから推論はできないわね。ネス湖のネッシーにしても問題なのは写真の真偽じゃないわ。本物がいるかもしれないもの」
「そのとおりだよ」
すばるがちくわを咥え、雨空に目を馳せる。
「これが本物であっても偽物であっても確認はしたいよね。見間違い、いたずらの類なら排除すればいい。それだってデータだ。そうやっていくなかで排除できないものを、ボクは見つけたいと思う」
真摯なその声に美野梨が深く頷く。寝子島海岸が見えてきた。灰色と深い黒の混ざった海面は不気味にうねっていて、砂浜に強い波音を残していく。雨は先ほどより少し強くなっていた。
「うーん、この雨じゃ観察は難しいかしら……」
「一筋縄じゃいかないようだね」
時間的にもさほど余裕があるわけではない。どこから着手すべきか海を見入る美野梨とすばる。そこに声が掛けられた。
「あの……皆さんも巨大生物の噂を聞いてここへ?」
一見、大人しそうな文系少女――真由良だ。彼もまた海にたどり着き、現地での情報収集あるいは共有に努めているところだった。
「あ、隣のクラスの」
彼を見かけた記憶に、美野梨が口を開こうとした時、空から声が降ってきた。
「近くに何人かいるみたいだな。ちょうどよかった、こいつをなんとかしてこい」
「……テオ?」
美野梨が聞き覚えのある声に疑問を発した時には、視界が一変していた。雨が止んでいる。雲一つない茜色の空。穏やかな海は夕陽色に染まり輝いていた。
「切り分けられた空間か……神野さん、なんとかしろってどういう意味かな?」
すばるのそんな疑問に答えるように、突如海面が大きく波打つ。
現れたそれに、真由良が半ば諦念も混じえた声を出す。
「ああ、やっぱりな……」
ま た 神 魂 絡 み だ!
●
「何……? なんとかしてこい?」
釣り糸を垂らしていた零は集中のあまり、聞こえてきた声に胡乱な声を返した。
「ふむ?」
気づけば夕陽を身体中に浴びていた。水面はもはや黒く濁ったそれではなく、溢れんばかりの光に底まで透けて見える。
――今日は一日雨の予報だったはずだが。
「っと、ようやくヒットしたか」
竿から伝わる気配に疑問は捨て置き、零は糸を巻き取っていく。なかなか重い手応えだ。口元が微かに描いた綻びは、しかし直後失望に変わった。針にぶら下がっているのは、長いわかめのような物だ。
「やれやれ、今日はわかめの味噌汁でござるかな?」
わかめを手繰り寄せる。長いわかめだ、と思った時には、遠く離れた水面が山のように盛り上がっていた。生じた波から飛び退きながら、零は夕陽から自分を隠した、その大きな物体を見上げる。
最初、それは巨大な柱が突き出たものかと思った。それが長い首だと分かったのは、大蛇のような頭部が先に付いていたからだ。それだけで十メートルは軽く超えているだろう。加えて波の隙間から、巨大な胴体が垣間見えた。
「……なんとかしてこいとは、こいつのことか?」
ようやく、自分が釣り上げたのはその巨大生物の一部らしいと気づいた零。驚きこそないが、思わず手元の戦利品を見つめた。
「食べることは、できるのでござろうか?」
「……って、なんだこいつ!?」
テオの声と別空間に分けられた瞬間、「戦衣着装!」の声と共にザ・ストレイトに変身していた轟。最近、危機察知とその対応が高速化した気がしないでもない。
しかしそんな轟でも、目前に現れた(たまたま海岸線に立っていた!)それにぎょっと一歩引く羽目になった。
「大きいな。この姿……まさかネッシーか! ネッシーって寝子島にいたのか! 寝子島の『ね』だけに!」
少年心を躍らせる存在の出現に、テンションも高くなる轟=ザ・ストレイト。
「違うわ、それはネコシーよ!」
そこへ美野梨、すばる、真由良が砂浜へと駆け下りてくる。美野梨の主張に、ストレイトは納得して首肯した。
「なるほど、ネッシーではなくネコシーか!」
寝子島だけに!
「っと、うおっ!?」
急激に増した影の領域。ストレイトが視線をネコシーに戻せば、巨大な右前肢のヒレが上空から彼に振り下ろされていた。間一髪、飛び離れた彼の視界で、砂浜が爆撃でもあったかのように土煙が巻き起こる。衝撃に吹き飛ばされて砂の上を転がるストレイト。
「大丈夫かい!?」
すばると真由良は彼を助け起こす。
「ああ……それより、一旦離れるか散るかしないと危険だ!」
四人の視線の先で、ネコシーの頭部らしき部分がもたげられるのが見えた。走り出した彼らのすぐ後ろで、頭部がうなりを上げて振るわれ、豪風が巻き起こる。
その光景を、
御剣 刀
はやや離れたところから目にした。
「また神魂かよ! おいテオ、いきなり引きずり込んで何とかしてこいじゃねーよ!」
夕焼け空に向かって怒鳴るが、案の定というべきか返事はない。目の前で荒ぶっている巨大質量を放っておくこともできず、刀は竹刀袋から刃引きした刀を抜いた。息を整える。
「せっかくの機会だ。俺の拳の腕を高めるため、俺のフツウを守るためにも、この場で片をつけ――」
「御剣さーん」
緊張感のない声が刀の動きを止めた。見知った少女がにこやかに手を振って近づいてくる。
「って舞!? なんでここにいるのさ!?」
「買い物帰りに、さっき御剣さんを見かけたんです」
このような場所でお会いするなんて奇遇ですね、という
橘 舞
は幸か不幸かネコシーの姿をまだ見ていなかった。焦った刀の表情と視線に頭を巡らし、そこで目を見開く。
「よければお話をと思ってたのですが……何か取り込み中でしょうか?」
「危ないから隠れていてくれ。話は終わったら聞くから」
先ほどの頭の薙ぎ払い……リーチを考えれば今いる場所も安全とは言いがたい。
「分かりました。ではお言葉に甘えて」
近くの木陰に歩いていく舞。素直というか、一種大物めいた自然体で振る舞う彼女に背を向け、刀は今度こそ走り出す。急ぐ理由ができてしまった。頭の中で、撃鉄を引き起こすイメージをする。
「最初から全開で飛ばすぜ!」
撃鉄が落ちたと同時、視界から音が消えた。
加速した刀が、四人を狙った首振りの軌道に割り込み、得物を切り上げる。斬撃がネコシーの首へと吸い込まれた。
「……!」
だが、途中で斬撃は止まった。手応えはゴムのような弾力と、巨大質量の抱える運動エネルギーだった。得物にかかる負荷に、刀は砂地に身を投げ出しながら刃引き刀を切り上げる。
砂地に伏せる形で五人は首振りを避けた。すぐさま立ち上がり走り出す。
「刀っちじゃないか」
「襲われてたのは新井たちだったのか。風雲児も」
「御剣」
「オーケー、間違えた。ストレイトも駆けつけてたんだな」
見知った顔にそんな言葉が飛び交うが、あまり余裕はなかった。巨大なだけに、一歩のリーチが走った分をかき消していく。
「首長竜がほんとにいたのは嬉しいけど、なんか違和感があるな――おっと!」
真上から落ちてきたヒレを、すばるは美野梨を引き寄せて回避する。舞い上がる砂を防いだすばるは、そこで大岩を目にした。
「神野さん、ボクたちが囮になる。あそこから見ていてくれないかい?」
「それって……」
「いや邪魔とか、そういうものじゃない。あれをどうにかするには、誰かが冷静に観察して、何か手を考える必要がある。全体を見て、考えて、策を出してほしい」
美野梨の言葉を制して、すばるは彼女にウインクした。
「心配無用。ボクは新井すばるだ――キミを信じてる。たのんだよ」
「……わかったわ」
信頼の言葉に強く首肯し、美野梨が岩の方へ行く。刀が言った。
「『俺たち』か」
「うん? 刀っちはイヤだった?」
「問題ない」
「こっちも問題ないぞ」
ストレイトが体の砂を払って構える。
「テオが関わっている時点で、こいつも神魂の産物だろう。何とかしろと言っておいて、弱点は教えてくれなかったしなぁ。このまま相手にするのは厳しい」
「体表はワカメが覆ってるみたい」
真由良が手にしたものを掲げる。砂で汚れたワカメだった。先ほど刀の攻撃で削れた表面部分だ。
「あとは、中に生物がいるかどうかだけど」
「貴重な生き物なら、できれば逃がしてやりたいが……」
真由良の言葉に唸るストレイト。刀も刃引き刀では有効打は難しいと感じていた。あの弾力を斬るには、剣そのものの切れ味も必要だ。
「生物でないなら手はある。だけど、神野さんが分析する間の足止めが必要だね」
すばるも言いながら、ちくわを指につける。真由良が一歩、前に出た。
「それなら、任せてほしい」
力強い口調となった彼の身に、変化が起こる。
「面倒そうな相手だが、やるしかなさそうだな……!」
転瞬、そこにいたのは三メートルを超える頑強なロボットだった。金属質の声が響き、振り下ろされたヒレの一撃を受け止める。重い激突音が砂浜に広がっていく。
ろっこんによって真由良の変身した姿、『フェノメノン』だ。
「おお、巨大ロボットか!」
同じ変身系、それも戦隊ヒーローものではおなじみと言える存在に、ストレイトの声は上ずっていた。真由良=フェノメノンは、ネコシーのヒレを払うと接近。海から現れた相手の巨体に体当たりし、押し返していく。
「加勢する」
刀が走った。フェノメノンを攻撃しようとしたネコシーのヒレに、加速しながらの一撃を振るう。斬断こそ叶わないが、込められた速度エネルギーがヒレを弾き、ネコシーが体勢を崩す。フェノメノンがすかさず押し込み……そこで苦しげな声を上げた。
「くそっ、ワカメがヌメヌメして……!」
どうやら濡れたワカメのぬめりのせいで、力が入らないらしい。ストレイトが跳躍して蹴りをネコシーに放つが、ぬめりは摩擦係数に関与しているのか、インパクトがうまく入る前に体が流れてしまう。
「むぅ。巨体に加えてこの身体のぬるぬる感――味噌汁に合いそうだな! どうにかできないか……」
「ストレイト、砂を投げるんだ!」
唸るストレイトの頭上で、フェノメノンが言った。
「ヤツの身体に砂をかければ、少しは乾燥して有効打が与えられそうだ」
「そうかなるほど! 待ってろフェノメノン」
阿吽の呼吸で突破口を見出す変身タッグ。ストレイトがすかさず砂を固めて投げる。砂の塊はネコシーの体表で弾けるが、フェノメノンが手を押さえる頃にはその殆どが貼りつくこともなく落ちていく。砂を触ったストレイトが気づく。
「しまった。ここの砂は雨が降ってたせいか、かなり水分を含んでいるぞ!」
故に水分を吸わない上に、貼りつきにくい。
「なんだって……くっ」
ネコシーが押し返してきた。刀がヒレの攻撃を防いでいるが、フェノメノンをはるかに上回る巨体が再び前進を始めていた。フェノメノンの足が大地を抉って交代していく。
「ストっち、もう一度砂を投げてくれ。僕に考えがある」
すばるがストレイトの隣に駆け寄った。
「ストっ……いや、分かった。任せてくれ」
再び砂の塊を投げ上げるストレイト。すばるが砂塊に、ちくわをはめた指を向けた。
「そこだ!」
ろっこん発動。ちくわから放たれた冷凍ビームが、ネコシーの体表で弾けた直後の砂を、ワカメごと氷漬けにする。
「生き物なら傷つけられないけれど、体表のワカメなら大丈夫だろう。これで滑らなくなったと思うよ」
「助かった……いくぞ、デカブツ!」
全力を出せるようになったフェノメノンが巨体と激突する。ネコシーが大きくのけ反った。
美野梨がもれいびたちの戦いを観察していく。
「わかめ……に神魂が宿っているのかしら?」
それとも中に何かいるのだろうか。動物なら保護できるのかが今回の重要ポイントだ。
――巨大な分、どこが中心かすぐわかるわね。
規模の大きい動作は近くでは分からないが、離れてみればその起点となっている箇所が分かってくる。そして骨格を持つ生物であるなら、おのずとその可動域も分かってくる。
「可動域が……ない。筋肉の伝わりもないから――」
他の要素も踏まえて、出てきた結論を声に出す。
「すばるくん、後ろにまわりこんでも無駄よ! それは生き物じゃないわ! わかめを神魂が動かしてるの!」
「なんだって、また紛い物か!」
聞こえてきた彼女の声に、すばるが失望の交った声を上げた。見上げれば後ろへ回り込もうとしていた彼へと、頭部があり得ない軌道で振り下ろされてくる。横によけるすばる。彼のいた場所を頭部が打ち砕き、砂浜が陥没した。
「筋肉も骨もないから可動域制限だってない。真後ろにだって攻撃できるのよ」
美野梨が言って、ネコシーの胸部を指さす。
「正面から中心をねらって。そこに神魂があるから! 生き物じゃないから遠慮はいらないわ!」
「なるほど、確かにそうだ――ならば遠慮はしない!」
すばるが冷凍ビームの出力を上げた。容赦なく凍ったネコシーの身体の一部を、フェノメノンの繰り出した拳が粉砕する。
「拙者も加勢致そう」
静かな声とともに、空気が渦巻いた。刀に襲いかかろうとしていた尻尾が、突如両断される。斬撃の威力に刀が目を瞠った。
「切り分け空間で雨がやんで幸いだ。
夏神 零
……いざ、参る」
美しい舞を踊ることで、零の手刀から生まれ出た力が、遠く離れたネコシーの身体を両断していく。それまでの斬撃や打撃に比べて、ネコシーに対する相性は抜群だった。
「これまで幾つか巨大な物体を見てきたが、さすがに全部味噌汁にするには量が多いな」
相性はいいが、動く対象を正確に切断するためにはコントロールが重要だ。普通の斬撃とは違うためによる苦労もあった。なるべく動きの少ない箇所を狙い、零は確実に攻めていく。
「……く」
歯噛みしたのは刀だった。ワカメといえど巨大質量は大きな武器だ。加速して戦うにも得物の耐久力を思えば、決定打を与えるには至らない。
一撃では、斬れない。
「…………待てよ」
自らの心中で生じた言葉を吟味して、刀の表情が変わった。そこにネコシーの頭が振り下ろされる。
「これならどうだ」
直後、刃引き刀を振り切った刀の背後で、ネコシーの首は半ば以上が斬れかかっていた。
高速の斬撃は一度ではない。何度も同じ場所を斬りつけることで、表面のワカメから順に撫で切ったのだ。限界まで加速し、相対的に目に映る世界の動きが緩慢になったからこそできる、連続の斬撃。
「一枚ずつ切り裂きながら、最奥を目指すまでだ!」
「刀っち!」
すばるが冷凍ビームの出力を上げ、襲いかかってきたヒレを氷漬けにする。もろくなったワカメへを、今度こそ刀の斬撃が両断していった。
「さあ、これでラストスパートだ!」
すばるが両手にちくわをはめた。手数の増した冷凍ビームが、ネコシーの全身を氷漬けていく。零のろっこんが動きを止めた首や尾、ヒレに集中攻撃を行い、斬断していく。残る胴体にフェノメノンとザ・ストレイトが駆けた。
「この一撃で」
「終わらせる!」
フェノメノンの拳が巨体の多くを砕き散らす。砕けた残骸の内、中心と思しきものから神魂の気配が感じられた。ストレイトの裂帛が轟く。
「『ザ・ストレイト/バーストトランス』!」
身体能力を高め、右足を震脚させてからの右ストレート。脈動するワカメの塊がその一撃に粉みじんに吹き飛んだ。
神魂の気配が拡散していくのを感じると同時に、残ったワカメが音もなく地面に落ちていった。
●
穏やかな海の向こうに、夕日が沈んでいく。
「わかめ相手とはいえ、見てる間ははらはらモノだったわね」
美野梨が安堵の息をつきながら、ネコシーの残骸へと歩み寄る。すばるが笑って出迎えた。
「神野さんの指示あればこそだよ。流石だね、相棒」
ウインクして手を差し出す彼に、美野梨も笑顔とともに手を握り返す。
「神魂の採取はむりみたいだけど……体の一部は持ち帰りたいわね。研究のために」
採取用のタモとメスを持ってきた美野梨。ふと思うのは、これだけ大量なら食料として、猫鳴館で喜ばれそうだなということだった。
「舞、無事か?」
「ええ、大丈夫ですよ。あれはワカメだったのですね」
舞は海岸に散乱したワカメを見て、興味深そうに首肯する。
「うごくワカメ……なんかそういう商品ありましたよね?」
「ふえる、じゃないかな。そういえば話って?」
「ええ、以前食事にお付き合いいただいたお礼をと――」
「あー、あれか」
確かそれは俺がお礼をする立場のような――そう言おうにも、疲労も相まって断り切れない刀だった。
「それで、イタリアンとフレンチなら、どちらがよろしいでしょうか? それと、甘いものは食べられますか?」
「それならイタリアンが……おっ、美味しそうだな」
舞が渡したのは苺ティラミスだった。作りすぎてしまったらしい。ことお菓子作りに関して、舞の「あまりうまくないですが」は詐欺の疑いがあるレベルだ。美味しくいただく刀に、舞が補足する。
「そうそう、ティラミスは、北イタリア生まれのチーズケーキの一種でして、イタリア語でTirami suは『私を引っ張りあげて』転じて『私を元気付けて』という意味もあるのですよ」
「ふーん、そういう意味があるんだ……舞は元気づけて欲しいのか?」
頑張れ頑張れ、と頭をポンポンと撫でる。ふと、彼女の妹もそうだったのかと考え込んだ。
――今度元気づけようかな。
そんな彼を、舞は小首をかしげて見ていた。
「またつまらぬものを斬ってしまった、というところか」
零がワカメを見ながら、ふと呟く。
「そのうち巨大ビル群とも戦いそうな気がしてきたな」
「そういう神魂には、しばらく会いたくないです……」
フェノメノンから人間の姿となった真由良。フラメンコ教室の帰りから全力戦闘と、疲労がピークに達していた。一方ストレイトは変身を解かぬまま、遠く夕陽を眺めていた。
――今朝は朝からずっと雨だったからな。
こうやって綺麗な夕日を眺めるくらい、今回の報酬にしたっていいだろう。
穏やかな潮騒が夕焼けの中、奏でられていった。
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日常
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30人
参加キャラクター数
30人
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シナリオガイド公開日
2015年07月08日
参加申し込みの期限
2015年07月15日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年07月15日 11時00分
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