ねこでんの１日。｜リアクション

ねこでんの１日。

　――再び平日――

　１３　普通を、ありがとう

　部活を終えた御剣刀は、寝子島シーサイドタウン駅に着くと改札をくぐり、ホームへ向かう。いつもは足腰の鍛錬を意識して歩いて帰っているのだが、今日は、参道商店街に寄る予定なのだ。
　今朝、トイレットペーパーが切れたから是が非でも買い物をしなければいけない。
　もっとあったと思ったのだが、勘違いしていたようだ。迂闊である。
　日曜日の買い出しまで待てるものではないので、予定を変更しての寄り道だ。

　ホームは、１日の予定を終えて帰宅途中の人々で混み合っていた。サラリーマンらしき人の背中を目の前に、今日あった事を思い出しながら電車を待つ。
　天井から吊り下がった電光掲示板の案内通りの時間に、ねこでんはホームに入ってきた。開いた扉から、人が一気に吐き出される。空いたのもつかの間、入れ替わりに乗り込む皆によって車内の人口密度はまた上がる。最後の方で電車に乗った刀は、閉まった扉に寄りかかって外に目を向けた。
　電車の振動に身を委ね、ゆっくりと移り変わる街の景色を眺めながら今日買う物を頭の中で整理する。
　考え事をしている間にも、彼の目は流れていく風景を、彼の耳は乗客達の立てる音や電車が走る音を捉えている。
　当たり前なのだと皆が思えるほどに、毎日電車は運行している。それが可能になっているのは、この電車が安全だからだ。
　毎日、同じことを時間の狂いなく繰り返すというのがどれだけ凄いことなのか。
　普通じゃないフツウに関わるようになって、刀はふとした拍子に考えるようになった。

　――落神によって、寝子島の普通は乱された。

　テオが空間を切り分けてくれるから大事に至ってはいないが、それだって完全じゃない。
　そんな普通じゃないフツウに関わっているから、こんな何気ない普通が凄いことなのだと気付けるようになったし、それを考える機会が増えた。
　それが良いことなのか悪いことなのかは分からないけれども、今は、この素晴らしいう通を充分に感じよう、と刀は思った。

　ねこでんは徐々に減速し、寝子島駅で止まる準備を始めている。

　――今日も変わらない普通をありがとう、明日もよろしく。

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あとがき

担当マスター：沢樹一海
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お待たせいたしました。「ねこでんの１日。」リアクションをお届けします。

全体的に、ゆったりとした流れのリアクションになりました。
電車の中でのそれぞれの出会いや、恋の行方や、ひとりひとり違う景色が見えて、とても楽しかったです。
何名さまかには飯テロも食らいまして、あーこれ食べたい……とこっそりブクマしたりとかですね。

秋の日のとある平和なひとときを楽しんでいただけると幸いです。
現実でも、早く秋が来ないかなー……（暑い）

ではでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました！

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