財布が落ちている！？｜リアクション

財布が落ちている！？

　放課後を迎えて綾辻綾花は旧市街に足を向けた。今晩の献立を頭に思い浮かべる。必要な材料に指を折り、何故か横手の公園に入っていった。
　ベンチの上に猫が丸くなっていた。綾花は微笑み掛けて隣に座ると制服のポケットから文庫本を取り出した。猫の耳が少し動いた。
　綾花は静かに本を読む。空いた手で隣の猫の背を撫でた。すると他の猫が続々と集まってきて甘えた声で鳴く。
　綾花は本を閉じた。足元に集まってきた猫達に目を向ける。その中に赤い財布が紛れていた。
「交番に届けないといけませんね」
　拾い上げた拍子に中身が零れた。綾花は膝に落ちた紙に目を向ける。
「暗号でしょうか？」
　書かれた内容に目を通し、閃いたように携帯電話を手にした。画面に平仮名が継ぎ足されていく。
『みやこのちかくのてんぼうだい』
　完成した文章を目にした瞬間、綾花は立ち上がった。直感が働いたのか。足早に公園を出てロープウェイの乗り場へと向かった。