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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
猫鳴く館、と誰ぞ云ふ
●古水路
長身のコブラが取っ手を回す。
ゆっくりと歯車が回る。
呼応して、丑寅の門と思しき木製の戸が、上方に持ちあがる。
奥に暗い通路が続いている。
「この丑寅の門ってのは水門だったのかもな。今でこそ枯れてるが、昔は水路だったんだろう」
民谷 鋭二がそうつぶやく。
何人かは『ミャァァァゴォォォォ……』という猫の声のようなものが聞こえると言った。
普段から病弱そうな細身の鬼久保 美桜はいつにもまして辛そうだ。
「鬼久保先輩、大丈夫か？」
「……平気。歩けるから、いいよ……。慣れてる」
オカルティックな彼女は拒絶したが、鋭二はいつでも支えられるように彼女の近くを歩こうと決める。
古井戸探検隊の面々は、身を屈ませて丑寅の門をくぐった。
入口こそ狭かったが、奥は立って進めるほどの高さがある。
長く閉じられていた空間特有の、すこし饐えたようなにおいがした。
難波 辰が明るくいう。
「みんな、はぐれんなよ。うっかり遭難なんてことになったら目もあてらんねー」
次の言葉で、場の空気がすこし和んだ。
「そうだ、合言葉決めるか。俺が『パンツ！』って言ったら『白！』って叫び返してくれ」
「パンツ！」
「白！」
古井戸探検隊、ノリのいいやつら（一部）である。
調子が出てきたのか、暗い穴の中に、陽気な歌声が響きだした。
「ゆけ～ゆけ～山口サトシ、ゆけ～ゆけ～山口サトシ♪」
シャベルを担いで先頭をゆく雨崎 荒太郎と大田原 いいなの歌声だ。
鋭二も「懐かしいな」という。
「俺も見てたぜ、あの番組。あれだと次から次へと何かしらのトラブルが……」
「『その時、洞窟の中で彼らが見たものとは！？』」
荒太郎が往年の名台詞を口にしたそのときだった！
「ア、あそこにナニカガ！」
アレハンドロ・佐助があらぬ方を指差す。
「えっ」
「何！？」
「で、でたああああああ！」
うすぼんやりした影が、たしかに、そこに！
一番驚いたのは佐助自身だった！
「マジですカ！？」
女性がびっくりしている顔を撮ろうという佐助の悪戯……のはずだったのだ。
指に力が入りカメラのシャッターを押してしまう。
パシャリ！
「ぎゃああああああああああああ！！！！」
絶叫が木霊した。
フラッシュライトに驚いたのだ。
いいなと荒太郎のものすごい形相が、皆の網膜に焼きつく。もちろんフィルムにも。
「神は言っている、ナイスリアクションです、と……のわあっ！！」
ゴワァン！ と気持ちのいい音がして。
いいなと荒太郎が、がむしゃらに振り回したシャベルがクリーンヒット！
佐助と、そして、いいなまでが、気持ちよーくノックアウトされた。
「アカーン！」
「なんでこうなるのじゃ！」
「……みんな、落ち着いて。今のは、霊じゃない……」
一種の恐慌状態に陥った探検隊一行を鎮めたのは美桜だった。
「……だって、みんな、見えてた……だから偽物……」
「そういえば……」
荒太郎はともかく、いいなは霊感ゼロだといっていた。
にもかかわらず、隔たりなく驚いていた。見えていたということだ。
「じゃあ、いまのは？」
「……わからない……」
美桜はちらりと鋭二の方を見る。
鋭二はドキリとした。目に泥が入ったふりをして片目を擦る。
美桜は何も言わなかった。でも彼女は気づいたのかもしれない。
いまのニセ幽霊騒ぎが鋭二の仕業だったということに。
鋭二のろっこん＜巷談写＞――片目を閉じ、何かの噂話の内容を念じることで、対象にその噂の内容どおりの幻覚を見せるというもの。鋭二は、この古井戸の噂を念じて、皆に気づかれないようそっと片目を閉じたのだ。
（それにしても……変だな）
鋭二は猫のような目を細めて考え込んだ。右側頭部の跳ね毛が、下向きに揺れる。
（霊は、猫じゃないのか？ ミャーゴと聞こえるといっていたが……さっきのあれは……）
鋭二は先ほどの幻覚をみんなより冷静に見ていた。
あの幻覚は、噂の内容、つまり霊の正体を見せてくれたはずだ。
それが、やや前かがみのひとのような形で、二足で立っていたように見えたのだ。
（それに、首の位置が、どうもおかしかった……）
首は、右側に傾いて、肩の上あたりに乗っている感じだった。
（ただの動物霊じゃないのか？ 何とも不穏な感じがするな……）
美桜を見る。霊感がある彼女に意見を聞いてみようか。しかしそうすると先ほどの騒ぎが自分の仕業だと打ち明けなければならないし……。
迷ううち、前方から声がした。
「川だ！」
探検隊の先頭が、水路を抜けたらしい。
「川か……川はこの世とあの世を分かつもの。……渡った先はあの世ってか。笑えないな」
ごうごう、という水音が聞こえる。
長身のコブラが取っ手を回す。
ゆっくりと歯車が回る。
呼応して、丑寅の門と思しき木製の戸が、上方に持ちあがる。
奥に暗い通路が続いている。
「この丑寅の門ってのは水門だったのかもな。今でこそ枯れてるが、昔は水路だったんだろう」
民谷 鋭二がそうつぶやく。
何人かは『ミャァァァゴォォォォ……』という猫の声のようなものが聞こえると言った。
普段から病弱そうな細身の鬼久保 美桜はいつにもまして辛そうだ。
「鬼久保先輩、大丈夫か？」
「……平気。歩けるから、いいよ……。慣れてる」
オカルティックな彼女は拒絶したが、鋭二はいつでも支えられるように彼女の近くを歩こうと決める。
古井戸探検隊の面々は、身を屈ませて丑寅の門をくぐった。
入口こそ狭かったが、奥は立って進めるほどの高さがある。
長く閉じられていた空間特有の、すこし饐えたようなにおいがした。
難波 辰が明るくいう。
「みんな、はぐれんなよ。うっかり遭難なんてことになったら目もあてらんねー」
次の言葉で、場の空気がすこし和んだ。
「そうだ、合言葉決めるか。俺が『パンツ！』って言ったら『白！』って叫び返してくれ」
「パンツ！」
「白！」
古井戸探検隊、ノリのいいやつら（一部）である。
調子が出てきたのか、暗い穴の中に、陽気な歌声が響きだした。
「ゆけ～ゆけ～山口サトシ、ゆけ～ゆけ～山口サトシ♪」
シャベルを担いで先頭をゆく雨崎 荒太郎と大田原 いいなの歌声だ。
鋭二も「懐かしいな」という。
「俺も見てたぜ、あの番組。あれだと次から次へと何かしらのトラブルが……」
「『その時、洞窟の中で彼らが見たものとは！？』」
荒太郎が往年の名台詞を口にしたそのときだった！
「ア、あそこにナニカガ！」
アレハンドロ・佐助があらぬ方を指差す。
「えっ」
「何！？」
「で、でたああああああ！」
うすぼんやりした影が、たしかに、そこに！
一番驚いたのは佐助自身だった！
「マジですカ！？」
女性がびっくりしている顔を撮ろうという佐助の悪戯……のはずだったのだ。
指に力が入りカメラのシャッターを押してしまう。
パシャリ！
「ぎゃああああああああああああ！！！！」
絶叫が木霊した。
フラッシュライトに驚いたのだ。
いいなと荒太郎のものすごい形相が、皆の網膜に焼きつく。もちろんフィルムにも。
「神は言っている、ナイスリアクションです、と……のわあっ！！」
ゴワァン！ と気持ちのいい音がして。
いいなと荒太郎が、がむしゃらに振り回したシャベルがクリーンヒット！
佐助と、そして、いいなまでが、気持ちよーくノックアウトされた。
「アカーン！」
「なんでこうなるのじゃ！」
「……みんな、落ち着いて。今のは、霊じゃない……」
一種の恐慌状態に陥った探検隊一行を鎮めたのは美桜だった。
「……だって、みんな、見えてた……だから偽物……」
「そういえば……」
荒太郎はともかく、いいなは霊感ゼロだといっていた。
にもかかわらず、隔たりなく驚いていた。見えていたということだ。
「じゃあ、いまのは？」
「……わからない……」
美桜はちらりと鋭二の方を見る。
鋭二はドキリとした。目に泥が入ったふりをして片目を擦る。
美桜は何も言わなかった。でも彼女は気づいたのかもしれない。
いまのニセ幽霊騒ぎが鋭二の仕業だったということに。
鋭二のろっこん＜巷談写＞――片目を閉じ、何かの噂話の内容を念じることで、対象にその噂の内容どおりの幻覚を見せるというもの。鋭二は、この古井戸の噂を念じて、皆に気づかれないようそっと片目を閉じたのだ。
（それにしても……変だな）
鋭二は猫のような目を細めて考え込んだ。右側頭部の跳ね毛が、下向きに揺れる。
（霊は、猫じゃないのか？ ミャーゴと聞こえるといっていたが……さっきのあれは……）
鋭二は先ほどの幻覚をみんなより冷静に見ていた。
あの幻覚は、噂の内容、つまり霊の正体を見せてくれたはずだ。
それが、やや前かがみのひとのような形で、二足で立っていたように見えたのだ。
（それに、首の位置が、どうもおかしかった……）
首は、右側に傾いて、肩の上あたりに乗っている感じだった。
（ただの動物霊じゃないのか？ 何とも不穏な感じがするな……）
美桜を見る。霊感がある彼女に意見を聞いてみようか。しかしそうすると先ほどの騒ぎが自分の仕業だと打ち明けなければならないし……。
迷ううち、前方から声がした。
「川だ！」
探検隊の先頭が、水路を抜けたらしい。
「川か……川はこの世とあの世を分かつもの。……渡った先はあの世ってか。笑えないな」
ごうごう、という水音が聞こえる。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年03月31日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年04月07日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年04月07日 11時00分
