【ハロウィン】空飛ぶホウキと魔女暴走族｜リアクション

【ハロウィン】空飛ぶホウキと魔女暴走族

「なんだろう、あれ。面白そう！」
　空中散歩を満喫していた篠原翠響は、遠くでなにやら騒ぎが起こっているのを見つけた。魔女との戦いのことは知らないので、遠目からのんびりと見物しよう……と思っていたが。
「どけどけ！」
　勢い余って突入してくるクマキチーノを、翠響はすんでのところで避ける。
「ちょっと、危ないじゃない！」
　翠響の負けず嫌いな性格に火が付いた。
「ほら、追いついて見なさいよ～」
　翠響は、クマキチーノの視界に入るようにアクロバティックに宙返りした。単純なクマキチーノはすぐに挑発に乗る。向かってくるクマキチーノを、翠響は軽々と避けた。新体操で全国大会に出ている翠響の運動神経やバランス感覚は抜群なのだ。

「くっ」
　クマキチーノは、クルジッカのマンホール攻撃を拳で撃退する。力勝負をしきれないクマキチーノはだんだん息が上がり、苛々は頂点に達していた。
「Hey！熊さんこちらデス！」
　マリナは声を上げて、クマキチーノが追いかけてくるよう誘導する。クマキチーノはマリナの狙い通りその背後についた。マリナは逃げながら急上昇し、わざとスピードを落とす。クマキチーノはすかさず速度を上げて追いつこうとした。
　その瞬間、マリナは体勢を立て直しつつ、垂直に弧を描いてクマキチーノの真後ろに回り込んだ。航空機のマニューバの一つ「木の葉落とし」を実演したのだ。
「何っ！」
　とっさに体勢を立て直せないクマキチーノに、マリナは背中のスラスターを全噴射する。
「これでFinishデス！ JET！！」
　放たれた矢のようにマリナはクマキチーノの背中にぶつかる。その衝撃とともに、クマキチーノの箒が鈍い音を立てて折れた。落ちそうになるクマキチーノを、クルジッカがとっさにろっこんで支え、そっと降ろす。

「勝利デス！」
「やりましたね！」
　互いにハイタッチして喜ぶマリナとクルジッカ。一方、勝負を見届けた翠響は、ほうきに乗ったまま満足げに笑った。
「ああ、楽しかった。明日は気分良く起きれそう！」