【ハロウィン】空飛ぶホウキと魔女暴走族｜リアクション

【ハロウィン】空飛ぶホウキと魔女暴走族

「……というわけで、フジコーノさんには押しの強さを見せることが鍵だと思うよぅ」
「なるほど、情報ありがとうなのだ、陽太ちゃん！」
　フジコーノに会ってきた呉井陽太の情報を聞き、後木真央と八神修は作戦を開始した。箒で飛ぶ練習をしたあと、空高くに舞い上がって魔女の姿を探す。修は双眼鏡を覗いて、光り輝く目立つ箒を探した。
「……あれか」
「ふむ、確かにゴンちゃんそっくりなのだ。本人ではないのだ？」
「いや、もれいびでもないのに飛ぶ箒を受け入れているのは不自然だから、きっとフジコ先生そっくりの魔女だろう」
　修は、真央を残してフジコーノの元に急降下を始める。
「俺が押し倒す……真央は援護よろしく」

　相談に乗ってもらったりはしたが、やはり素敵な男性は現れない。フジコーノの機嫌は悪化の一途をたどっていた。その時である。
「そこの美しい君、どうしてそんなに憂鬱そうなんだい」
「あたしのことかしら？お世辞は無駄よ」
「そんなことないさ、輝く箒も良く似合ってる……君にもっとふさわしい景色があるよ、見に行こう」
　フジコーノは、修の誘いを受け入れた。二つの箒が向かった先は、九夜山の頂上だった。
「美しく、優しく、力強いフジコーノさん……」
　見上げれば星空、見下ろせば街の夜景。周囲には（真央が隠れているのを除き）誰もいない。舞台装置は完璧だ。
「君のためなら、死ねる……」
　修の腕がそっとフジコーノの肩に周り、優しく背中を撫でる。修は真剣だった。フジコ先生への尊敬と、大切な友のいる世界と、何より愛する人のため。
（俺は平気だ。俺は逃げない！）
　うっとりと目を閉じたフジコーノを押し倒し、愛を貫く。しからずんば死、だ！

「計画発動なのだ！」
　修がフジコーノを抱きしめた瞬間、真央は茂みから飛び出し、猛ダッシュを始めた。真央は素早くフジコーノの後ろに回り込むと―――
「うおおぉ、往生せいやなのだ～！」
　フジコーノの膝裏に、渾身の「膝カックン」をしかけた。
　修とフジコーノの体が、鮮やかな紅葉の絨毯の上に崩れ落ちた。その瞬間―――
　ぽきり、と乾いた音がして、フジコーノの手にあった箒が折れた。

「あたしの箒―――」
　呟くフジコーノに、修は静かに答えた。
「俺の箒の後ろに乗ればいい」