繋がりを求めて｜リアクション

繋がりを求めて

＜下校時間＞

（そういえば、今日は『家に帰る前に連絡しろ』って叔父さん仰ってましたっけ）
　授業の後、下駄箱で津島直治は思い出しました。
　直治は叔父の家に居候しているのです。
「えーっと、電話電話」
　電話しようと鞄を開けて、ようやく気づきました。
（あ、携帯没収されてたんでした。取りに戻らないと。……もう下校時間ですし、さすがに返してもらえますよね？）
　少し迷って、直治は校長室へ向かうことにしました。
（返してもらえないとなったら、交渉するしかないですね）

「朝、杉村がよくわかんねー事してたけど一体なんだったんだ」
　偶々スマホを家に置き忘れていた新江天懸は、ふと思い出していました。
　そこへ、担任の武藤先生が声をかけてきました。
「新江、校長先生がお呼びだ。校長室に来るように」
「……ってまた俺校長室に呼び出しかよ！」

（あれ……？　あそこにいるのは貴家先輩……だよね）
　下駄箱で、呉井弦月は貴家衿花の存在に気づきました。
「そうだ。この間、演奏をするって約束をしていたし」
　弦月は衿花のそばに歩み寄ります。
（家にすぐ帰るのもちょっとって思うけど……）
　スマホがなく手持無沙汰だった衿花も、弦月に気づきました。
「あら、呉井君。何か用かしら？」
「こんにちは。今日お時間ありますか？」
　相変わらずツンツンした様子で衿花は答えます。
「そうね、いつも別に何かあるわけじゃないわ」
「もしよかったら、僕が通っているクラシック同好会に来て、ヴァイオリンの演奏を聞いてほしいので」
「ヴァイオリンの演奏？それはちょっと楽しみだわ」
「それじゃ、ご案内します」
　ヴァイオリンケースを提げて、弦月は衿花を案内すべく歩き始めました。　