繋がりを求めて｜リアクション

繋がりを求めて

＜クラシック同好会＞

　シーサイドタウンにある音楽会館。
「ここで寝子島クラシック同好会の集まりが開かれているんです」
　そう説明して、弦月は珍しそうに辺りを見回す衿花を招き入れました。
「こんにちは。見学の方を連れてきました。貴家衿花先輩です」
　居合わせた他のメンバーに紹介します。
「よ、よろしくお願いします……」
　あんまり興味ありません、という態度を取りたい衿花ですが、ぎこちなく挨拶します。
　メンバーもにこやかに挨拶を返してくれました。
　その間にヴァイオリンを取り出した弦月が尋ねます。
「ええっと、貴家先輩は好きな曲はありますか？」
「好きな曲……」
「何か思いついた曲をリクエストでも構いませんが、どうでしょう？」
（っていってもクラシックでそんなに知ってる曲ってないのよね）　
　ちょっと考える衿花です。
「ええと例えば、月光とか第９とか、カノンとか……ええとＧ線上のアリアとか……」
「あ、Ｇ線上のアリアですか。それなら弾けますので、大丈夫ですよ」　
　弦月が微笑みました。
「それじゃあそれをお願いしようかしら」
「はい、頑張って弾きますね」
　ヴァイオリンを構えた弦月の表情が真剣なものに変わりました。
　おもむろに演奏が始まりました。
　ヴァイオリンは難しい楽器です。まともに弾けるようになるまではキーキーとうるさくて騒音ともいえます。
　ですが弦月のヴァイオリンからは、穏やかで美しいゆっくりとした旋律が奏でられました。
　衿花はまじまじと弦月を見ています。
（なんとなく、演奏している時って印象違うのね）
　そう思いながら、衿花は演奏に聞きほれました。
　弦月の左手は細やかに弦を爪弾き、右手は優雅に弓を引きます。
　その優雅な動き、首の傾げ具合。
　音色だけでなく、演奏する姿に見入ったと言っていいかもしれません。
　金髪で灰色の瞳の少年が無心にヴァイオリンを奏でる様は、確かに美しいものでした。
　
　演奏を終えた弦月が一礼すると、衿花は心から拍手を送りました。
「思ったよりうまかったわ」
　目をそらしながら衿花はそっけない口調でいいます。
「ありがとうございます」
　弦月は演奏の出来と衿花の反応に満足していました。　
「そういえば、中間テストの結果はどうでしたか。僕の方は……英語は大丈夫だったんですけれど、社会科の方はもう少し頑張らないと……という結果でしたね」
　苦笑する弦月に、衿花は答えます。
「テスト？　そうね、英語は前よりまだましって程度だけど、やっぱり苦手だわ……社会が苦手なの？　それならちょっとくらいは教えてあげられるかもね。テストに出る傾向って、似るじゃない？　簡単よ」　
　つい弦月を見つめていた自分に気づき、衿花はぷいと顔をそらしました。
「ありがとうございます。なかなかコツが掴めなかったので助かります」
　そっぽを向きながらも社会科の事で気遣ってくれた言葉が嬉しくて、弦月は微笑みました。

　

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