繋がりを求めて｜リアクション

繋がりを求めて

「先生達の抜き打ち検査とか正直怖いわ……」
　二年二組の鍋島奈々美のクラスでも、持ち物検査が行われていました。
（まあ、うちはすぐに見つからんとこに入れといてるから服剥ぎ取られん限りはバレへんけど、他の生徒が可哀想やな）
　奈々美の隠し場所とは、大きな胸の谷間の中なのでした。
「……次の記事はこの件についてで決まりやな！」
　廊下で杉村校長を見かけた奈々美は、つかつかと歩み寄り、声をかけた。
「新聞部の鍋島です。突然ですけど、休み時間に取材をさせてもらえませんか」　
　小春校長は少し驚いた様子でしたが。
「よろしいザマス。では、今日の昼休みに校長室で」
　眼鏡を押し上げながら答えました。
「ありがとうございます。ほな、後ほどうかがいます」
（……あんまりやり過ぎてもこのネット社会、絶対苦情来て問題になるからな……それとなく校長に妥協点を提案しに行くつもりやで）

「ネット禁止令？　うーん、最近は公衆電話も無くなってきているし万が一の時に連絡できないのは困るんだけど……」
　金髪を一つ結びにした呉井弦月がつぶやきました。
「と言っても、実際に事件が起こっているし、今はおとなしくスマホは家に置いて様子見しておくよ」
　そんな話を小耳に挟みながら、津島直治は思います。
（ネット禁止令ですか、そもそもネットのことがよくわからないので私には関係ないですね……）
　直治は普段は無愛想でつっけんどんですが、口に出さない内心では敬語を使っています。
「津島くん、この携帯は没収させてもらうわよ」
「えっ！　……しまった、忘れてた」
（鞄の中に携帯電話を入れてたんでしたっけ……）
　担任の小林かなみ先生に見つかってしまい、直治は大人しく没収に応じました。
（なければないで困りませんしね）
　その後は携帯のことを忘れて行動していました。

　昼休み。直治は音楽室に向かいました。
　寝子島クラシック同好会に所属している直治は、鍵盤打楽器の練習をしたかったのです。
（マリンバ６本マレットの演奏を練習したいので、マリンバにしましょう）
　マリンバは、大きな木琴にパイプがついたものです。音板を叩くバチをマレットと呼びます。
　直治はマレットを片手に３本ずつ持ちました。
　マリンバは音域がとても広いので、こういう演奏法もあるのです。
　楽譜に合わせてたたくと、あたたかく落ち着きがある音が奏でられました。
　少ない本数のときより重厚な音がでます。
　音楽室にいた生徒たちが、感心したようにこちらを見ています。
　しかし直治は納得できませんでした。
（片手に３本ずつ持つのはやはり難しい……マレットの使い方、もっと上手になりたいです）
　親指と人差し指を自由に動かせる形で持つことがポイントなのですが、練習を重ねなければなかなか思うようにいきません。
　昼休み終了まで、直治の練習は続きます。

このページにイラストを設定する