繋がりを求めて｜リアクション

繋がりを求めて

＜校長室の攻防＞

　奈々美は再び校長室を訪れていました。
「新聞部鍋島です。取材の続きに……」
　そこへ直治がやってきました。
「ケータイがないと困るから返して欲しい。……いや、いつもなら困らないんだけど……」
　直治は校長先生に訴えました。
「まずクラスと名前を名乗るざます」
　校長先生が問い質します。
「２年 1組、津島直治。先生達が心配するようなネット依存とかにはならないから、お願いします。だって俺、携帯電話の電話とメール以外の使い方よくわからないし……！」
　っていうかネット依存ってなんですか……？、と内心思うほど直治は機械類にとても疎いのでした。
「あ？　なんだ他にも呼び出された奴いるのか……」
　そこへ、乱暴に戸を開け新江天懸が入ってきました。
「あなたはスマホを取り上げられなかったざますか。よく使っていると聞いてるザマスが」
　小春校長が、眼鏡のフレームを上げました。
「あ？　スマホがどうかしたのか」
　よくわかっていない天懸に、後からやってきた樹が堂々と言いました。
「スマホが規制されているんだよ。先生、放課後は返してもらってもいいでしょう？　物ひとつでどうにかなるほど単純な人間なんていません、こんな横暴な手段はやめてください」
「スマホ規制？　ネット取り上げるって事か」
　眼光鋭い天懸の様子に、誰もが反抗的なセリフを予想しました。ところが。
「いいんじゃねーの？　校長がそれで満足だったら」
　天懸の口にした言葉は意外なものでした。
「なんだよ杉村その顔。俺が反抗して暴れると思ったのか？」
　唖然とした様子の校長を天懸はからかいます。
「まああれだ、取り締まられた方としてはこう思うぜ。『じゃあスマホ持ってる教師や俺たちの親は立派に生きてるんだな？』って」
「それは当然ざます、スマホ自体が悪いわけではないざます、正しく使えば……」
　校長は、自分の口にした言葉にはっとしたようでした。
「校長が中学生の時に携帯があったかなかったはしらねーけど。校長が俺たちの目線で考えてくれて行動してるっていうのなら俺は従うぜ」
「あなたたちの目線……」
「俺杉村好きだし、杉村校長は教育者として俺達に対して最適な指導をしているって信頼してるしよー。もしかして自分の手には負えないから、校長として、生徒のネット問題から逃げたくてスマホを取り上げたいなんて思ってんのか？」
（これはいい記事になるで）
　質問も忘れて、奈々美は聞き入っていました。首輪につけている隠しカメラで天懸を撮影します。　
「いやいやまさか杉村校長とあろう方がそんなことするなんてなー」
　棒読みな口調で、天懸は校長を煽ります。
「つーかその指導法だったら俺みたいな夜遊び方の生徒への指導は放棄するって事と同意義となるだろうしな。さーどうする？」
「……私は逃げたりしないざます」
　校長は天懸を睨みました。
　窓の外では、再び携帯の奪還に来たバニーが話を聞いていました。
（これはもしかして、奪還しなくても済むかもね？）

　

このページにイラストを設定する