ドキドキ？！　聖シエスタ女学院！｜リアクション

ドキドキ？！　聖シエスタ女学院！

（ブラックリスト発見、南波さんですね）
　円の次にきたのは、ブレザーを着崩し、リボンを未着用で登校した南波太陽である（リアルではチャラっぽい青年だが、こっちではちょっとギャルっぽい乙女らしい）。
「ごきげんよう、南波さん」
「……ご、ごきげんよう」
　ぎこちなく返事をする太陽は、そのまま鏡の横を通り抜けようとした。だが、別の女子生徒に進路を阻まれ、肩を竦める。
「ねぇ、行っていいかなぁ？」
「駄目です。さすがにそこまで着崩されると下級生に示しがつきませんから」
　鏡は取り巻きっぽい他の委員に彼女を抑えてもらったり、台を持ってきてもらうと慣れた手つきで手直ししていく。その鮮やかな手つきに円は目を見張る。
「リボンなんて結ぶのめんどーい」
「服装の乱れは心の乱れ、といいます。登校のときぐらいはきちんとしましょう？」
　そう言いながら手直しを終えると、すっ、と太陽の顎に手を沿え、くいっ、と上げる。
「？」
「次は、ちゃんとしてきてくださいね」
「……考えとく」
　太陽は目を逸らしながら言うと、鏡の横をすり抜け、のんびりと校舎へ歩いていく。その様子を円はなんとなく見ていた。
（良くも悪くも、目立つ先輩だなぁ）
　そんなことを思っていると、鏡が円に声をかける。
「桜庭さん、ごきげんよう。髪の毛、跳ねてますよ」
「えっ？！　わっ、ホントだ！！」
　鏡が櫛で梳くと、円に「はい、できましたよ」と笑顔でコンパクトを見せてくれた。礼を述べた円は、時計を見つつ余裕があることを確認しながら校舎へと向かう。
　背後では、鏡がスーツ姿で登校してきた男装の令嬢、矢萩咲を注意する声が聞こえていた。
（あの先輩も、良くも悪くも目立つ、かな。……確かに八咫先輩の言い分もわかるのだけど……）
　円はそんな事をぼんやりと思うのだった。

（この学校は由緒正しき乙女の園。やはり、生徒である以上制服をきっちり着こなさなくては）
　鏡は鏡でこの学校や生徒たちの事を考えて厳しく接している。だが、一部の生徒は鏡の存在を堅苦しいと思っているのかもしれない。太陽と咲が見せた表情を思い出し、小さくため息をつく。だが、気持ちを切り替えて正門が閉まる時間まで自分の仕事をこなすのだった。

　その頃、教室では……。
（これ、セーラー服なのだ……）
　元気一杯な後木真央が、赤猫リュックから取り出した制服を見て愕然としていた。普段どおり早起きして、普段どおりご飯をしっかり食べて、普段どおりに登校していた真央だが、ここに来て普段と違う事に気がついたらしい。
「なんだか解らないけど、清楚系セーラー服キタコレなのだ。でも着るのは真央ちゃんなのだ？　なんだかよく分からないのだ！」
　しかも普段どおりもう直ぐ授業が始まる。とりあえず、大人しくしておいてお昼休みに頼れる友人を訪ねよう、と決意する真央。だが、そんな時、元気な声が教室に響いた。
「これが、high school？　素敵デース！」
「トワ、落ち着け」
　真央が顔を上げるとトワ・E・ライトフェロゥと夜海霧楓が教室に入ってきた。二人ともブレザーである。一見深窓の令嬢を思わせるトワだが、全身から発せられる元気オーラがそれをかき消しており、傍らの楓は何かを堪えているようだった。
「後木だったか」
「そーなのだ。楓ちゃん、なんでふるふるしてるのだ？」
「悪い、限界に達したら『殴ってくれ』と頼むかもしれない」
「？！　どーしちゃったのだ楓ちゃん！！」
　楓の発言に、真央は思わず狼狽してしまう。だが、傍らのトワはそんな２人の様子も知らず、教室を見て楽しそうにしていたのだった。

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