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寝子電が止まった日
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【幸せな時間】
そう。このオレンジ色の日の光に照らされて……それにこうして時間が止まっているからこそ、輝きを増して見えるものもあるのでしょう。
「それにしても、何だか久しぶりだね、神嶋くん。こんな風に電車で会うのって」
そう言った
結城 日和
の、きらきらとした微笑みに。
「……ああ。そうだな」
神嶋 征一郎
はふと、いつもとはどこか違った彼女の顔を見たような気がしてきます。
ちょっぴりひそめた彼の眉には気付かず、日和は明るい調子のままに、
「最近は、演劇フェスティバルの準備で忙しかったからかな……って、そうだ!」
彼女ははっと何かを思い出したようなそぶりで、
「あの時、
お花をくれた
よね? すっごく、嬉しかったんだ。ありがとう、神嶋くんっ」
まっすぐに見つめられるまま、そんな風にお礼を言われて。クールな征一郎も、思わず少しばかり、目を見開いてしまいました。
確かに、あの演劇祭のさなかに。日和たちの大舞台の終わりに、彼は激励の花束を贈ったのでした……自分の名前は告げないままに。
悪戯っぽく、日和はこちらの顔を覗き込んで、
「あ、なんで自分だって分かったんだろ? っていう顔してる。ふふふー、それは内緒ですー♪」
「……別に。礼はいらねぇ、たまたま用意があっただけだ」
取り澄ました顔で返したものの、日和は楽しそうに、くすくすと笑みをこぼしています。
演劇祭。あの日にちらりと見た彼女の顔や、そして今、いきいきと思い出を語るその表情を見れば、征一郎にも分かりました。伝わりました。日和にとって、あれは大きな意味のあった舞台であったのだろうと……彼女はあそこで、何かを掴んだのだろうと。
いささかぶっきらぼうな征一郎だって、そこには、素直な賞賛を述べてやるのもやぶさかではありません。言わずにいられるほど、彼は狭量では無いのです。
「クラ同と軽音部の合作……演技に歌、演奏。準備や練習も大変だっただろ。それをよくあそこまで、纏め上げた……と思う。それは誇っていい」
「そ……そうかな? ありが」
「演出、演技、表現力は及第点だな。だが最後のカーテンコールの演奏、あれはまだまだだ。結城はビブラートが甘いのと、デタッシェにもう少し力を入れろ」
なんて、付け加えた率直な指摘もまた、彼なりの好意的な評価ではありました。
それはもちろん、日和にも分かっているようで、
「……ふふ。うん、分かった。ありがと、神嶋くん……ちょっとは認めてもらえて、嬉しいな?」
「別に。思ったままを言っただけだ。大したことじゃねぇ」
きらきら。きらりと。あたたかくい光に照らされた、日和の横顔。征一郎には何だか、いつもよりずっと、その顔が輝いて見えました。クラスメート同士、いつも見慣れた顔のはずなのに。
彼女は、不意に真剣な表情を滲ませて、語ります。
「前に、聞かれたっけ。私……今なら、答えられる。歌でも、楽器でも、オペラでもミュージカルでも……クラシックでも、ロックでも。何でもいいの。ジャンルも全部飛び越えて、音楽が作り出す世界が……私は、好き」
その言葉は、日和自身の思いでありながら、図らずも、征一郎の胸の内、深い部分をそろりと撫でたようにも思えました。
ぞくり、と征一郎の胸は、揺れて。
「ヘタだとか上手だとか、そんなのは関係なくて。その人が音楽を好きで、そして精一杯、一生懸命に演奏するのなら。それはどれも、全部ぜんぶ、素敵な音楽。私は、そう思うんだ」
使い古された言葉だけど、と、照れ臭そうに笑いながら。
「音楽は、『音を楽しむ』、って書くんだもの。ね」
「……音を……楽しむ……」
征一郎は。彼女の笑みに、あるいは、引け目を感じていたのかもしれません。だからこそ、まぶしく見えてしまうのかもしれません。
精一杯に。一生懸命に。彼がいつしか、そうすることを避けるようになった理由を、彼自身も気付いてはいました。
彼は、自分の持つろっこんを、時に無作為な被害を他人へともたらしてしまう能力を、恐れているのです。自分の魂を塗り込めるような渾身の演奏が、そのさなかに、手にしたヴァイオリンの弦を弾けさせてしまったら……誰かへと害を及ぼしてしまったら。
そうならないようにと、彼は全力を振るわず、自分を抑えつけているのです。
そんな彼にとって、演劇祭をきっかけに自分の進むべき道、目指すべき場所を再確認し、その第一歩を踏み出した日和。真っ直ぐな彼女の夢は……あまりに、まぶしくて。
(……いや)
けれど、思い返します。並んで、こちらを見上げた彼女とは視線を合わせず、海を眺めて思います。
(結城。お前は、そのまま真っ直ぐ、信じる道を行けばいい)
自分はただ、上を目指すのみ。誰かに理解してもらおうとは思いません。自分に、並び立つ理解者は必要無い。そう、自身の胸へと言い聞かせます。
けれど。
けれど、どこかちくりと、胸が痛む気がするのは……なぜなのでしょうか?
他人と話すとき、自分とであっても、征一郎がどこか相手と一歩引いて接するところがあるのを、日和も知っています。そのくらいには、彼を理解しているつもりです。
そんな彼が、自分たちに花をくれた理由も。何だかんだで、彼、根は優しいのです。
だから、彼の表情が気になって。知りたくなります。その理由を。
(いっぱい、いっぱい。神嶋くんと、話したいな。神嶋くんのこと……知りたいな)
同じ電車に乗り合わせた偶然に、日和は感謝しました。演劇祭のお礼をしたかったのも、彼の感想を聞きたかったのも、もちろん本当。けれどそれ以上に、彼とこうして会話をすることそのものが、何気ないこんなひと時が、日和にはとても嬉しくて。楽しくて、素敵で、幸せな時間なのです。
頭上から、ざざざ、と割れ気味なスピーカーの音。車掌さんのアナウンスが聞こえてきて、点検が無事に終了したこと、間もなく発車することを告げました。
直後に。
「あ、もう電車動くみたい……って、うわ!?」
がたん。きい……がたたん、と電車が動き出した弾みで、日和の身体はがくり、大きく揺れて。足がもつれてうっかり、倒れこんでしまいそうなところへ。
「……危なっかしい奴だな。気を抜いてんじゃねぇ」
「あ……」
がっしりと自分の肩を支えた手の感触に、日和は、ぴくりと身を震わせて。直後にぐいと、身体を引き寄せられました。力強く。
胸に満ちた安堵と……気付けば、彼の顔が。すぐ傍に。
支えてくれた優しい手は、すぐに離れてしまいましたけれど。日和は、頬が熱く、ぽうっと火照っていくのを感じながら、
「ご、ごめんね。ありがと……神嶋、くん」
「ああ。ほら、しっかり掴まっとけ」
つり革を掴んで、上げた腕でちょっぴり、顔を隠します。きっと、真っ赤になってしまっているでしょうから。だって、あんな風に掴まれたら、支えられたら……抱き寄せられたなら。
(うう、照れちゃうよ……)
だって、彼は……好きな人。
止まった時間の中、何気ないけれどちょっぴり素敵なひと時は、これで終わり。
がたん、がたん。がたん、ごとん。ごとん、がたん……再び動き出した電車は、駅に着くまで、ほんの少しの間。ふいに訪れた、何だか心地の良い沈黙に浸る日和と征一郎を乗せて、ゆったりと優しく、ゆりかごのように揺らし続けました。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。『寝子電の止まった日』のリアクションをお届けいたします~。
墨谷が学生時代に利用していた電車の駅は、イナカだったもので駅員さんのいない無人駅で、通る電車も一時間に二本とか三本とかで、冬場は特に、ちょっと雪でも降ろうものならそんな数少ない電車が途端に運休したり、ぴたっとが止まってしまったりと、そんな場所でして。乗った電車が妙なところで立ち往生なんてことも、しょっちゅうでした。
そんな時のために、いつも暇つぶし用の本を持ち歩いてたり、友人とその時にハマってた本やら漫画やらについてとか、そんな他愛の無い話をしたり……執筆しながらに、そんなことを思い出しました。
ご参加いただいた皆さんの時間の過ごし方も様々で、物思いに耽ったり、しっとりと穏やかな空気の中で誰かの存在を感じたり。あるいはちょっとしたトラブルの解決に乗り出してくださったり。きっと皆さん、退屈してしまうことは無かったのではないかな、と思っております。
本当に何気ない、ちょっとした時間を取り上げてみた今回のシナリオですけれど、それぞれに何かしら感じていただいたり、心に残るものなどありましたら、幸いです。
それでは、今回もご参加ありがとうございました!
またの機会に、再びお目にかかれますことを、心よりお待ちしております~。
お疲れさまでした!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年05月25日
参加申し込みの期限
2015年06月01日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年06月01日 11時00分
参加キャラクター一覧
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