……がたん。がたん、がたん。がたん、ごとん。ごとん、がたん……オレンジ色に染まる夕暮れの光へ分け入るように、寝子電はがたん、ごとんと走ります。
ある日の下校中。差し込む秋の西日は暖かくて、窓の外いっぱいに広がるオレンジの海を眺めて。
結城 日和はうっとりと、ヘッドフォンから流れるお気に入りの曲に耳を傾けながら、
「……♪ ……~♪」
知らずのうち、鼻歌。
……がたん。がたん、がたん。がたん、ごとん。がたん……がたたん、たん。きい、と軋んだ音を立てながら、ゆっくりと速度を緩めて、やがて電車が止まりました。停車駅にはまだ遠いはずの半端な場所で、目の前にはオレンジの水をたたえて静かに揺れる、広い海。
「止まっちまったな」
隣を見ると、たまたま乗り合わせた彼と目が合いました。
神嶋 征一郎の落ち着いた声に、
「……うん。止まっちゃったね」
日和がヘッドフォンを外したところで、ざざ、と車内のスピーカーから、車掌さんの声が届きます。
「……設備点検のため、これより10分から20分程度の間、停車をさせていただきます。お急ぎのところ誠に恐れ入りますが、しばしお待ちいただけますよう、お願いいたします。繰り返します、設備点検のため……」
どうやらしばらく、電車はこのまま。動かないようです。
車内では乗客たちが、唐突な停車に眉を寄せたり。時計をちらと確認したり。何も無いように広げた文庫本へ目を落としたり。ぼんやりと窓の外の風景を見つめたり。不意に空いてしまったこの時間、どう過ごすのかは、人それぞれです。
「結城。それ、何聞いてるんだ?」
「え、あ、これ? 神嶋くんも、聞いてみる?」
日和は、横にしたヘッドフォンを耳に当てて、漏れ聞こえてくる音楽を、征一郎と半分こ。
ゆらり、
ゆらりと、
二人は、聞き心地の良いリズムに浸ります。
急ぐことも無く。それにどうやら、退屈してしまうことも無さそうです。
日和は征一郎と二人、お気に入りの曲を楽しみながら、ゆったりと時の空白へ身を委ねました。
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~。
ガイドへは、結城 日和さんと神嶋 征一郎さんにご登場いただきました。ありがとうございました!
(もしご参加いただける場合は、上記のシーンに寄らず、ご自由にアクションをかけて下さって構いませんので!)
このシナリオの概要
今回は、乗っていた電車が止まってしまって、さあ、どうやって時間を潰そうか? という、しっとり穏やか系日常シナリオといった感じなります。
とある日の夕暮れ時、あなたが乗っていた寝子電の車両が唐突に、駅ではないところで停車してしまいました。どうやら何かの点検作業を行うらしく、10~20分ほどの間は、電車は止まったままのようです。
不意にぽっかりと空いてしまった、この少しばかりの時間に。あなたはひとり物思いに耽っても構いませんし、乗り合わせた誰かとおしゃべりに興じても構いません。
車内を見回せば、ちょっとしたトラブルなどもある様子。誰か、困っている人に手を差し伸べてあげるのも、あるいは有意義な時間の使い方かもしれません。
大事件も起こらず、ある意味退屈で、ある意味自由な、ほんの短いちょっとした時間。
あなたは、何をして過ごすでしょうか?
アクションでできること
アクションでは、それぞれ違う場所で停車した寝子電車両のうち、1つを選び、どの車両に乗っていたかを決めてください。
それぞれの車両を見回せば、様々に目に付くものがあります。それらに関わっていただいても構いませんし、ご自分の時間を自由に過ごしていただいても構いません。
ただし停車中とはいえ、他人に迷惑がかかったり、騒がしい行為はご遠慮くださいませ。
※例外的に、例えば『車内の誰かと電話でおしゃべり』『止まっている車両の中に知り合いの顔が』など、停車した車両内のPCさんとGAにて絡む場合に限り、車外でのアクションも可とします。
なお寝子電の車両は、2両編成となっています。
ちなみに実は、止まっている車両はそれぞれ、以前行われた『寝子電、ラッピングコンテスト!』にて、賞を受賞した車両だったりします。好評につき、公開期間を延長して運行中です。
【1】『寝子ヶ浜海岸付近』に停車中の車両(G-10)
コンテストで『秋賞』を受賞したラッピング電車。紅葉柄に赤と黄の車体が美しい。
<目に付くもの>
○窓の外に、シーサイドタウンの街並み。寝子ヶ浜海岸。オレンジ色に染まった海。
○ペットケージに入っていた小型犬が脱走。飼い主さんが慌てている。
【2】『寝子電スタジアム付近』に停車中の車両(L-8)
コンテストで『褌賞』を受賞したラッピング電車。褌姿のキャラクターたちがてくてく、インパクト大な車体。
<目に付くもの>
○窓の外に寝子島小学校。寝子電スタジアム。よくよく目を凝らせば、運動している誰かが見えるかも。
○唐突な停車で、不安になった子供が泣いている。
【3】『旧市街付近』に停車中の車両(L-5)
コンテストで『寝子島賞』を受賞したラッピング電車。初々しい感性で描かれた寝子島の風景が楽しい。
<目に付くもの>
○窓の外に、旧市街の街並み。
○やや混雑している。席に座れず立ち乗りの乗客の中には、お年寄りや、お腹の大きな妊婦さんの姿も。
アクションには、
・参加にあたっての心情
(早く動かないかなと愚痴る、焦らずまったり、など)
・どの車両に乗り合わせた?
・空いてしまった時間で、何をする?
といったあたりをお書きいただければ。
その他
●参加条件
特にありません。どなたでもご参加いただけます。
●舞台
主に、寝子島を走る寝子電の車両内が舞台となります。
時刻は夕暮れ時、お天気は快晴です。
●備考や注意点など
※NPC、及び今回のシナリオには参加していないPCに関するアクションは基本的に採用できかねますので、申し訳ありませんが、あらかじめご了承くださいませ。
以上になりますー。今回はまったりです。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております!