【ハロウィン】かぼちゃ城とオバケのパーティー｜リアクション

【ハロウィン】かぼちゃ城とオバケのパーティー

もなか墓地・その１

◆
ゆらりゆらりと、鬼火が揺れる。
もなかの墓石の間を、キョンシーが飛び跳ねる。
そして不気味に鳴くカラス。
そんなおどろおどろしいもなか墓地でも――
「ロリッ娘の胸の感触キタコレ―！」
冴木竜司はいつもどおりだった。見た目は一部トカゲ男だが。
「お兄ちゃん、また恥かしい事言って……もう……」
少し頬を染め、ぎゅっと抱きつく鬼崎つくし。そのちっぱいの感触を背中で堪能しつつ、『性春パワー！』を発動させた竜司は駆け出した。
目指すは光り輝いている場所、もしくは光っているものだ！

◆
お菓子がいっぱい。和菓子がいっぱい。
小豆のやさしい甘い香りに包まれて、黒兎都は幸せいっぱいに頬をゆるめてもなかを堪能していた。
つぶこしどっちもあって、両方イケる口の都にとってはただただ得な状況である。
和菓子万歳。あんこ万歳。
「……それにしても、皆急がしそうだの」
一緒になってもなかを食べていた小倉もなかが、んぐっともなかを呑み込んで、
「悪魂石？　っていうのを探さないといけないらしいですよ！　クローネより先に！」
「んー……あの馬鹿カラスにはちょっと恨みあるっちゃあるから手伝いたいけどのー、うちバトル系じゃないから役にはたてんと思うしなあ」
まあでも、探す手伝いくらいはできる。
幸い、ろっこんもオバケとしての姿――座敷童も、他者の幸運をブーストすることに長けているし。
「私も今日は張り切っちゃいますからね！　頑張りましょう先輩！」
「おー、もなか楽しみつつ頑張ろー」

金髪のコケシみたいな座敷童が、ちょこまかともなかの間を駆ける。
「オバケの骨が！　見られる機会が！　来るなんて！」
鼻息荒く、稲井いおねは『レントゲン・ラブ』を発動。
墓碑の中身が透け――るが、残念ながら骨は入っていない。違う、悪魂石は入っていない。
墓石から視線を上げると、骨の透けたキョンシーが見下ろしていた。
「おお！　キョンシーの骨なのですよ！」
キョンシーの骨格に興奮し、伸びてくる手に我に返って逃げようとした――その時。

「小倉もなかでーす！　さぁさぁもなか食べ放題なのよー！！」

もなかの声が響いて、キョンシーは突然もなかの墓石に顔を埋めた。
すごい勢いで貪り食っているうちに、いおねはそそくさと逃げ出した。
いい骨格のキョンシーだったのに、じっくり観察できないのが悲しい。

◆
「とわぁーっ！」
頭上を通過していく鬼火をかわし、キョンシーを墓石に隠れてやり過ごし、椿美咲紀は悪魂石を探す。
墓に敷き詰める小石やらも逐一確認する。
石といっても、墓石だけではないのである。
灯り取りの石塔に首を突っ込んでいると、フッと頭上に影が差す。
キョンシーとカラスに、見下されていた。
ぼうっ、と迸った炎がキョンシーとカラスの足を止める。
鬼火ではない、劉瑞麗の『鉄扇娘娘』である。
「今のうち走る！」
「ありがとうなのですよ！」
瑞麗に手を引かれ、美咲紀はキョンシーの伸ばした手から逃れたのだった。

◆
「塔尾さん、足元に気をつけてください」
塔尾松生に呼びかけて、日向透は氷を放つ。
近づいてきたキョンシー達の足元が凍り付き、飛び跳ねるしか移動手段のない彼らは見事にすっころんだ。
「――うわっ」
気をつけていたはずの松生も体勢を崩して転びかけ、透は自分も倒れないようにうまく工夫して彼女の手を取った。
「大丈夫ですか」
「う、うん……ごめんなさい」
体勢を立て直し、松生は気を取り直すように軽く頭を振った。
そこに、カラスの鳴き声。
今度こそはと気合を入れて、松生は近くのもなかをもぎ取った。
「そりゃっ！」
ぎっしりとあんこの詰まったもなかの塊が、カラスにぶち当たって撃墜する。
ちょっとしたボールくらいの大きさのあんこの塊は、質量もあってなかなかの凶器である。
「今度はちゃんとあたしが抑えるから！　日向さん、今のうちに！」
「すいません、お願いします」
松生がカラスの相手をしている間に、透はすぐ近くの大きな墓石へ走り寄る。
『Psychometry』、発動――墓石に残った過去の断片を読み取る。
居並ぶ墓石。
飛び跳ねるキョンシー。
揺れ踊る中に、一回り大きな鬼火。
見えたのは、それだけだ。
「今の鬼火は……？」
瞳を閉じたまま、ぽつりと透は呟く。
あれが、悪魂石に関わっているのだろうか。