【ハロウィン】かぼちゃ城とオバケのパーティー｜リアクション

【ハロウィン】かぼちゃ城とオバケのパーティー

キャンディ回廊・その４

◆
後木真央が辿り着いたのは、回廊の果てのような場所だった。
眼前にそびえ立つのは、キャンディが複雑に絡みあって一種異様な模様を描き出す大扉だった。
「お、おおー……」
その存在感に圧倒される真央だったが、呆然と視線を上げていくうちに気付く。
大扉の頂上部、ひときわ大きな灯りが存在感を放っていることに。
もしかして、石はあの中に？
しかし、真央ではどうやってもあそこまでは届かない。
「どうすればいいのだー……」と途方に暮れている彼女に、
「お、後木くんじゃないかー」
聞き覚えのある声がかかった。
振り返れば、ドラキュラと雪女の二人組――三ヶ島葵とエヴァ・ブランシェが居た。
「後木くんも石探し？」
「そうなのだ！　でもあそこの灯りに届かなくて困ってるのだ」
「それじゃあ、あたしが見てくるわ。元々そのつもりだったし」
とエヴァ。
雪女の力で作り出した氷の階段を昇り、大扉の灯りを覗きこむ。
瞬間、エヴァの心臓が大きく跳ねた。
光の奥、かすかにソレは姿を覗かせていた。
３センチから５センチ程の、細長い小さな石。
目を凝らさなければ見落としてしまいそうなサイズ
ともすれば光の中に紛れてしまうような大きさでありながら、不可解なまでの存在感を持っていた。
灯りごとゆらゆらと揺らめき、暖色の輝きの中に一点染みのような暗いソレをその石は放つ。
眺めているうちに、意識が吸い込まれていくような錯覚すら覚えた。
何が何でも、これをクローネに渡してはいけない。
エヴァの直感が、そう強く告げる。
あるいはそれは、警鐘と言っても過言ではなかった。

石を発見するのを見計らっていたかのように、カラス達が押し寄せてくる。
どうやらここで奪いとる心算らしい。
しかし慌てることもなくデジカメを構え、葵はシャッターを切り続けた。
少しずつ、そして確実にカラス達の体力を奪い取っていく。
真央も座敷童の力で少しでも有利になるように手伝うが――
「エヴァくん！」
カラスが一羽、ギリギリでカメラの圏内を抜けた。
一直線へエヴァへ向かうカラスの狙いは、エヴァが灯りから取り出した件の石。
「っ、あ……！」
嘴が閃き、エヴァの手からソレをかすめ取る。

その時、真央は視界の端で翻る短い着物の裾と、艶やかな脚線美を垣間見た気がした。

どこからか、一本の氷柱がカラス目掛けて飛来。
急旋回して回避した拍子に、カラスの嘴から石がこぼれ落ちる。

カラスが血相を変えて追いかけ、
エヴァが慌てて手を伸ばし、
葵がカラスをカメラに収め体力を奪い――

――真央が、落ちてきたソレを呑み込んだ。
呑み込んでしまった。カラスに奪われないためには一番確実だと、焦った頭が判断してしまったから。

ごくん、と。

腹に納めた音が響く。

＜Mission complete...?＞

◆
「あら、やっと会えた」
にっこりと微笑む桜庭弓弦の視線の先には、
「わぁ、ゆず姉じゃん！　ちっこい！」
ずっと探していた桜庭円が居た。
弓弦はわーっと手を広げて
「そうなの、私ちっちゃくなっちゃった！　昔のあなたにそっくりよ！」
「わー、そっか。昔のボクってこんな感じだったんだー……って、ゆず姉？」
弓弦の視線は、円の着ているゴス和服に注がれていた。
「……一度、そのロリータも着てみたかったのよね～」
「ん、じゃあ交換する？」
こくんと頷いての円の言葉に、
「ありがとうまどか！」
弓弦は瞳を輝かせるのだった。