【中間テスト】そんなこんなの最終日｜リアクション

【中間テスト】そんなこんなの最終日

　家族が寝静まった時間帯、花厳望春は精力的に動いていた。自身の部屋の掃除に余念がない。あまりの出来栄えに笑顔が零れる。
「びっくりするくらい綺麗になったな」
　自らの成果を素直に喜ぶ。部屋の中を悠然と眺めて、そうじゃない、と声を荒げた。
「なんで呑気に掃除なんかしてるんだよ。現実逃避にも程があるだろ！」
　部屋の時計は深夜の十二時を指していた。望春の腰が砕けそうになる。両足を踏ん張り、急いで机に飛び付いた。やばいやばい、と焦った口調で教科書を片っ端から開いていく。
「テスト勉強が全くできてないって。やばすぎてヘンな汗が出そう！」
　目は忙しなく文字を追う。垂れ下がってくる邪魔な髪は数個のヘアピンで止めた。
「寝ないで勉強すればなんとかなるはず！　きっと、たぶん、神様お願い！」
　悲壮感を漂わせて勉強に打ち込む。熱意に燃える双眸は難問の連続に忽ち下火となった。
「年号が覚えにくいよなぁ。ゾロ目の時に争ってよ。それとカタカナの地名が多過ぎる。俺は日本人なのに」
　望春は両手で頭を掻き毟ると上体を前に倒した。机上に額を押し付けた姿で、ひんやりする、と穏やかな声を漏らす。体勢が苦しいのか。横向きとなり、自然に目を閉じた。
　しばらくして緩んだ口から寝言が聞こえてきた。
「……簡単な……問題だよ……頭に、スラスラ、入る……これで、テストは、完璧だな……」
　望春は幸せそうな顔で呟いた。