香りで癒しの一時を｜リアクション

香りで癒しの一時を

●ティータイムに致しましょう

「お待たせしました。カモミールティーです」
　問題集に集中していたので、修は真珠がハーブティーを持ってきたこと、声をかけられたことに気付かず。
「あの……お客様？」
　何度目かの声かけで、ようやく現実に戻った。
「ものすごい集中力ですね。私が声をかけたのに気付いていませんでしたし」
「ああ、すまない。集中しすぎて気づかなかったよ。ありがとう」
「それと……これ、私が作ったミントとチョコのクッキーです。どうぞ」
「ありがとう、いただくよ」
　真珠が店内に戻ると、修は問題集をテーブルに置き「休憩」と椅子に座ったまま背伸び。
　冷めないうちに、と淹れたてのカモミールティーの香りを楽しんでから一口。
「ふう……良い香りだ」
　飲み終えるとホッとした気分に。真珠手作りのクッキーは食べ終えた後、口の中がスーっとした。
「スースー感と粒チョコの甘みは結構合うんだな。食べた後のさっぱり感が良い」
　リラックスしただけでなく、爽やか感も楽しめるとは思わなかった。
　ハーブティーとクッキーで休憩を終えると、再び問題集に目を通し、勉強に集中する。

　その時、舞達はお喋りをしながらのんびりティータイム。
「ジャスミンは寝る前に飲むのもいいそうです。月さんを外でお見かけするのは、ちょっと珍しい気もします」
　舞と月は星ヶ丘寮で生活しているので寮内では見かけることがあるが、外で会うことは滅多にない。
「冬華さんに誘われて来たんだ。店内を歩いたからちょっと疲れたけど、ハーブティーで少し楽になったよ」
　たまにはこういう外出もいいものだ、と冬華に感謝する。
「そうだ。皆さん、せっかくですし、良ければ私の部屋でティータイムに致しませんか？」
　ＭＯＥＧＩでティータイムも良いのだが、長居しては迷惑がかかると判断した舞は自室でのお茶会を提案。
『ティータイム？　うん、私は全然大丈夫だよ』
　楽しくなりそう、と期待する海。
「うん、良いね。これだけのハーブティがあるんだ、色々と飲み比べてみたい」
「ティータイムの準備、お手伝いしますね」
　月と冬華も、舞の誘いに応じた。
　誘われた際、春爛漫なお花畑にいるような和んだ雰囲気になったのは舞が意図せず使ったろっこんの影響。
「ここで買った茶葉で、美味しいハーブティーを淹れますね」
　ハーブティーと紅茶の淹れ方はあまり変わらないので、紅茶の知識に長けた舞なら美味しいお茶を淹れられるだろう。
「では、星ヶ丘寮の私の部屋にまいりましょう」
　会計を済ませ、店を出ようとした４人を真珠が引き止めた。
「あの……これ、皆さんで召し上がってください。私が作ったローズヒップとハイビスカスのクロッカンです」
　ティータイムをしよう、という彼女達の話を耳にした真珠は舞達に食べてほしかった。
　４人が試作品をひとつ摘まんで食べると、ほんのり酸っぱいローズヒップとハイビスカスの味が。
　中には細かく砕いたナッツが入っているので、サクッとした食感も。
「美味しいですね。これはお店で売っているお菓子ですか？」
「いつかお店に出せるお菓子の試作品です。出せるかどうか、お客様の反応が見たくて試食品として置いているものなんです」
　失礼なことをしたかと少し落ち込む真珠に、舞はティータイムのお菓子にしたいと言い出した。
「美味しいお菓子ですね。お茶の時間に食べたいです。いくつか分けてくださいませんか？」
　喜んでもらえたので、勧めて良かったと真珠は安心した。
「わかりました」
　そう言うと、カウンターに置いてある花模様の透明な袋を取り出しクロッカンを詰め、赤いリボンをつけた。
「お待たせしました。お茶の時間、楽しんでください」
　感謝の気持ちを込め、真珠は壊れ物を扱うように舞に手渡した。