時間を切り取るカプセル｜リアクション

時間を切り取るカプセル

　　【タイムカプセル】

　片付けがろっこん頼りの為、予想外な所に人がいるなど、予想以上に時間が掛かり、ギリギリ間に合った終発の寝子島ロープウェイに乗って、旅鴉月詠は下山していた。

　今日一日の出来事に想いを馳せる。タイムカプセルの模様は想定外だったが、最後の１つは少しどうかと思いつつも、相手は紫苑の花を知ってこちらに来た。だから、正しく必要な人の手に渡ったのだと思える。
　胸に溜まっていた息をゆっくりと吐き出した。心地良い疲労感が軽く圧し掛かってくる。

　そして思う、自分のタイムカプセル。
　ロープウェイから見下ろせる光景を眺めながら、とつとつと思考を巡らす。

　自分は芸術家であるから、有名になろうがなるまいが“この地に旅鴉月詠という芸術家がいた”という足跡を遺しておきたかった。
　その為のタイムカプセルは最適なものでもあった。
　２００年という保障こそあるが、何かの事情で九夜山が開発されないとも限らないし、月詠本人がいつ死ぬかも分からない。だからこそ。

　絵や写真という“芸術”という名の記録装置に、タイムカプセルを介して自分と言う存在を残してきた。それらは幾らでも、残しておくこと、残しておく程に価値がある。
「そうだ、例えば遮光器土偶に価値があるのはそこに歴史的文化があるからだ。
　そうだろう？」
　試しに口に思考の一部を出して言ってみる。当然返事は無いが、何か自分の中で腑に落ちた。

　ついに、寝子島ロープウェイの“登山道入り口”にゴンドラが到着して、月詠が地面に足をつける。
　見上げれば今日一日限定でライトアップされていた光景は一際紅葉が綺麗で。
　そして、先程まで見ていたゴンドラからの景色を照らし合わせる。

「やはり、個人的にはこのままでもいいじゃないかと思うのだがね」

　しみじみと、一人ごちた月詠の感想は、やはり深い夜の闇に溶け込むように消えていった。

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あとがき

担当マスター：冬眠
ファンレターはマスターページから！

ご参加下さいました皆様、そして最後まで読んで下さいました皆様。誠に有難う御座います。この度ＭＳを努めさせて頂きました冬眠と申します。

この度は、タイムカプセルを扱ったものでしたが、シナリオガイドのアップ当初はもっとライトなものとなるだろうと予測しておりましたら、アクションを拝見し、皆様今のキャラクター様にとって本当に大切な物を沢山預けて下さって、申し訳ないやら自分に書けるのだろうか等をひたすらに思案しながらの執筆となりました。

今回、大切なキャラクター様をお預かり出来て大変嬉しく思われました次第です。皆様、本当に有難う御座います。

今回は皆様へ個別コメントをお届けさせて頂いております。是非ご覧頂ければ幸いです。
それでは、この度は有難う御座いました。また、他のシナリオにてお会いできます事を願いまして……

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