猫好き集まれ！　キュートなにくきゅうスタンプラリー開催！｜リアクション

猫好き集まれ！　キュートなにくきゅうスタンプラリー開催！

ねこまみれ

【踏み込めペダル、豪華海鮮に向けて】

「待ってろよ、俺の海鮮グルメ！」

　そう叫んでペダルをこぐ八神修に、友人である恵御納夏朝はくすりと笑った。
　肉球スタンプラリーというイベントの知らせを聞いてから、二人は協力して猫のたまり場を調べ、ラリー当日はレンタルサイクルでたまり場を回ろうという作戦を立てた。

（ネコ柄のエコバッグってどんなのかなぁ……楽しみ）

　幸いにして作戦は功を奏し、カードに押した肉球スタンプは既に３つを数えている。恵御納の心は、既に賞品の猫グッズへとトリップしていた。

「恵御納、着いたぞ！」
「あ、うん」

　八神の声に我に返り、小さな喫茶店の前で自転車を止める。店の植え込みから数匹のブチ猫がこちらをうかがう中、八神は着ていたパーカーのファスナーをおろし、サバトラ子猫のパトラを解放した。

「さぁ、みんな。俺たちと仲良くなろうぜ」
「猫ちゃんたち、あそぼ」

　八神はバッグの中から取り出したかつお節を手に乗せて、猫を誘う。恵御納も猫パペットのハルくんを動かして、そっと呼びかけた。餌につられて猫たちが出てくると、八神は地面に座ってかつお節を膝の上に。

「こーら、パトラ！　お前が先に食べちゃダメだろ。これはお客さんのだ」
「ふふ、パトラちゃん、かわいい……」

　かつお節効果か、パトラが猫たちの警戒心を解いたのか、５匹の猫が八神のまわりに集まってきた。

「う、動けねぇ……恵御納、スタンプを頼めるか」
「うん、分かった」

　恵御納は、猫まみれで動けなくなってしまった八神のスタンプカードをそっと引き出す。八神の腹の上で機嫌よく横になっている一匹の前足をそっと取り、インクをつけてスタンプを押す。自分のカードにもスタンプを押し、肉球をウェットティッシュで拭いてから一息つく。
　もう一匹くらい押させてもらえるかな、と思っていると、後ろから声をかけられた。

「あ、あのう……お兄さんとお姉さんの写真をとってもいいですか？　ネコさんといっしょに」
　帽子をかぶり、首からカメラとスタンプカードを下げた女の子――椎名あさひだ。

「うん。僕はいいよ」
　恵御納はすぐに承諾したが、八神はあわててこう言った。

「ま、待ってくれ！　えーっと、君もラリーの参加者なんだろ？　今のうち、そっとスタンプを押せばいいんじゃないか？」
　椎名は不思議そうに首をかしげたが、こくりと頷いてインクパッドを取り出した。

「よし、こんな感じでいいか。パトラをかわいく撮ってくれよ」
「ハルくんもよろしく～」

　八神と恵御納は、椎名のスタンプを押すのを手伝ったあと、被写体としてカメラの前で座っていた。かつお節をまいたおかげで、猫たちも集まってきて、賑やかな写真になりそうである。

「じゃ、じゃあ撮ります！」
　カシャッとシャッター音がして、カメラの向こうから椎名の笑顔が出てくると、恵御納と八神もつい微笑んでしまう。

「お兄さん、お姉さん、ネコさんたち、ありがとうございました」
　別の写真を撮りに行くという彼女を見送ると、八神が鼻の下をこすりながら呟いた。

「うーむ、礼儀正しくて可愛い子だったなぁ」
　恵御納はハルくんと目を見合わせる。

「ねぇハルくん……八神君ってろり」
「違う！　断じて違うからな！」

　澄んだ青空に、八神の絶叫が響いた。

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