猫好き集まれ！　キュートなにくきゅうスタンプラリー開催！｜リアクション

猫好き集まれ！　キュートなにくきゅうスタンプラリー開催！

【肉球スタンプラリー　開催】

　１０月のとある日曜日。鉄衛守は、１０時５分前にシーサイドタウン駅についた。
　イベントの発案者である町長の挨拶と、スタンプラリーのルール、賞品の説明を聞いてから、
受付の列に並ぶ。

「鉄　衛守さん、会社員の方ですね。本日は肉球スタンプラリーにお越しいただきありがとうございます。
こちら、スタンプラリーで使うインクパッドとスタンプカードになります。ネックストラップで、首にかけて
くださいね」

　受付の女性からクリップボードを渡されたので、名前と住所、職業を書いて返す。すると、ラリーで使う道具とルールを書いたプリント、そしてペットボトルのスポーツドリンクを渡された。

「秋になりましたけど、今日はお天気もいいですから。熱中症に気をつけて、きちんと水分補給してくださいね。受付にお戻りの際は、よろしければアンケートにご協力くださいませ」

　受付を終え、女性に会釈をして歩き出した鉄はおや、と振り返った。テントは参加者でごった返しているのに、自分の後ろに並んでいた人間は少ないような――気のせいだろうか。

「おや、鉄さん。奇遇ですね。まさか貴方もスタンプラリーに参加するなんて」
「……なんだ、日向か」

　振り向いた先には、金髪の知人、日向透の姿。

「なんだとはご挨拶ですね。ぷふっ……今の鉄さん、とてもおもしろい格好ですよ」
「何がだ」
「何がって……黒いスーツにサングラス、強面の男性が、首からラジオ体操のカードをぶら下げて
るんですよ！」

　鉄がちら、と周りに目をやると、他の参加者が露骨に目をそらしたような気もする。

「これはラジオ体操のカードではない。『猫好き集まれ！　キュートなにくきゅうスタンプラリー』の
カードだ」
「おぉ……鉄さんのまじめな顔で『キュート』とか言われる日が来るとは思いませんでした」
「俺は寝子島について一つでも多くのことを知らなくてはならない……町長の思考を探る端緒として、
このイベントは適している」

　顎に手をあてつつ発した言葉に、日向は肩をすくめて苦笑いした。

「まぁ、そういうことにしておきましょう。それよりも鉄さん、せっかく顔を合わせたんですから協力して
スタンプを集めませんか？　ルールには『協力してはいけない』って書いていないし。俺、コンプ賞
狙ってるんですよね」

　日向の指差す先には、二人三人と連れ立って出かける参加者の姿がある。

「お前、猫の扱いには慣れているのか？」
「それはもちろん！　家で２匹飼ってますから。写真、見ます？」

　日向の示す携帯の画面を見ながら、鉄はふむ、と頷いた。

「俺も、どうせ参加するならコンプリートをと思っていたところだ。その話、乗ろう」
「そう来なくちゃ。行きましょうか、鉄さん」

　鉄には、自分が愛想がいい方ではないという自覚があったが、知人がつきだした拳を無視するほど
無愛想ではなかった。
　男二人は拳を突き合わせ、スタンプラリーの受付を後にした。

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