ボール……にゃ！？｜リアクション

ボール……にゃ！？

●ネコミミの甘い時間

　グラウンドの片隅。
　小山内海と御剣刀は球技大会の練習をしていた。
　サッカーに出ることになったものの、海はサッカーなどやったことはない。
『いっしょにれんしゅうしない？』
　同じくサッカーに出るという刀を誘ってみたら快く引き受けてくれた。
　海は白猫組、刀は黒猫組と別々のチームだが、そんなことは気にしない。
「ボールに慣れるところから始めないとな」
　剣道で体は鍛えているが、刀もサッカーは慣れていない。
　刀は海にパスの練習を提案した。
（一緒に練習頑張ろう）
　最初は思う方向に飛ばすこともおぼつかなかった。
　海は声が出せないから、スケッチブックに言葉を書きながら謝ったりもしたけれど。
　いちいち書かなくてもいい、と刀は言ってくれた。
　
　でもお互いだんだん慣れてきたようだ。
　脇を走る三毛猫に動ずることもなく、海がパスを出す。
「あ、しまった」
　刀が蹴ったボールは少々飛び過ぎた。
　海の頭上をはるか越え、向こうの木の方まで飛んでいった。
「ゴメン！」
　海は笑って頷くと、ボールを追いかけていく。

　　　　　　　◆　　　　　　　　◆　　　　　　　　◆

　茂みを移動中の解理の足元に、そのサッカーボールは転がってきた。
「おっと、さっきの事もあるしスルー……」
　と思ったのに。

「なんで僕はしっかり掴んでるんだぁぁぁ！
くそ、丸いものについ反応する。これが猫化した影響という事か！」
「はわぁ、今度はしっぽが！」
　嘆いてもしょうがないから、再び進撃。
　過去は振り返ってはならない！
　ボールを放り出し、黒い尻尾をフリフリしながら解理はその場を離れた。

　　　　　　　◆　　　　　　　　◆　　　　　　　　◆

（あった）
　海はボールを見つけて拾い上げ、そのまま刀の元へ戻る。
「ゴメン小山内、次は気をつけるよ……」
　言いかけた刀の視線が、やけに上を見ているのに海は気づいた。
　そして何故か刀は自身の頭を撫でている。ちょっとほっとしたようにも見える。
　ボールは向こうの木の方まで飛んでいったから、葉っぱか何かついてしまったろうか？
『なにかついてる？』
　そう尋ねたが、刀は首を振る。
「ん～、最近この手の事件に慣れてきたとはいえ驚いた……」
　海はボールを放し、頭を触ってみた。
　葉っぱなどではない、この感触は……
　鏡に映すと、髪と同じ亜麻色の猫耳が生えていた。
　なんだが気になるお尻を確認したら尻尾も生えていた。こっちも同じ色だ。
　こうなると練習どころではない。
『ボールのせいかな？』
「ボールに触れたら猫耳と尻尾が出てくるってことか？　不思議だな。
とりあえず、今の小山内の姿を携帯のカメラで撮影しておこう。アレだ、記念写真？」
『あとでわたしにもおくってくれる？』
「わかった」
　それならいいよ、と海は許可する。
『みみ、にあってるかにゃ？』
　ちょっと上目遣いで海が聞く。
「うん、似合っているよ、可愛い」
　思った事をそのまま口にして、あれ？　と刀は思う。
　俺なんか恥ずかしい事を言ってないか？
（可愛いって、可愛いって言われた）
　尻尾ふりふり、海は照れる。
「この耳は本物なのか？」
　言われて、改めて海は猫耳に触れてみる。
『ほんものっぽい、なんかうごかせるし　かんかくもあるし』
　耳をピコピコさせながら、海は文字を書く。
『かたなくんもさわってみる？』
　刀はそっと手を伸ばした……
「ふわふわしてて触り心地良いな」
（あっ、尻尾が動いている）
（ん……なんかくすぐったいというか変な感じ）
　海の顔が赤くなっていた。
　冷静に今の自分達を振り返ってみると結構アレだ、と刀は思う。
（だが、この触り心地も捨てがたい……）
（びくってなっちゃいそう……ん、もう少し我慢するね）
（えっと、もう少しだけ触ってから元に戻す方法を考えようか……）

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