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悠久の時の彼方へ～オルレアンの少女
「撃て！」
フランス軍の弩部隊が、一斉に矢を放ち敵軍を足止めする。間髪を入れず、さらに斉射。
「作戦がうまくはまって、良かった」
フランス弩部隊は、１列目が射撃、２列目が矢の装填という２列構成になっている。１列目が撃っている間に２列目が装填し、すかさず矢を射掛けるというわけだ。逆巻 天野が出したアイデアだった。弩の発射速度も上がるし、軽度の負傷者も装填作業は手伝える。
「戦いは困難だが、傷は浅いという人には、是非やってほしいことがある」
天野はもう一つ提案を出した。
「味方の士気高揚のため、勝利と生還を願う歌を歌うんだ。それだけでも、ひとつの希望になる」
さらに、天野は弓矢を手に前線へと駆けていく。乗り手を失った敵の馬を見つけ、すかさず飛び乗った。
目の前には、先陣に立って戦うジャンヌの姿がある。仲間のために、自分も戦わないといけない。天野は覚悟を決めた。命は奪わないよう、肩や目を狙って戦闘能力を失わせることを目標にする。
その時だった。天野の目に、2人のイングランド兵がジャンヌを前後から槍で突こうとしている光景が飛び込んできた。
「いけない！」
天野は、反射的にろっこん〈天邪鬼〉を発動していた。発動中は、目視した対象の行動が逆さまになる。ジャンヌを挟み撃ちにしようとした兵士は、わけのわからないまま同士討を始めた。さらに、天野の視界にいたイングランド兵も全て味方を攻撃し始めたのである。
敵方は、恐怖と混乱に陥った。天野はさらに大声を出す。
「さあ、裏切りの時だ！」
味方に裏切りが出たと思い込んだイングランド軍は、さらに混乱した。
「一体、どういう術を使ったのでしょう……」
窮地を脱したジャンヌは、不思議そうに呟いた。
生きようが死のうが、別にどうでもいい。
でも、大人しく殺されるのも嫌な気がする。それなら。
敵兵を一人でも多く、道連れにしてやろう。
剣を手にした朝鳥 さゆるは、感情を失った瞳で戦場に現れた。内面から、名状しがたい熱い衝動がこみ上げてきた。
体が、恐ろしい程に勝手に動く。攻撃対象は主に歩兵だ。勝手に剣が閃き、確実に相手に致命傷を負わせていく。返り血が全身を赤く染めるが、全く動じる気配もない。
無表情で、無言でひたすら敵兵と切り結ぶ。血に染まった顔の中で、目だけが異様に輝いている。
「なんだ、あの小娘は……」
イングランド兵たちは、さゆるの不気味な戦いぶりに底知れない恐怖を覚えていた。不可解なまでに無慈悲で、しかも悪魔に憑かれたかのように異様に強い。
さゆるの歩く先で、折り重なった死体が道のように連なる。休むことなく剣を振るいつつも、意識はいやに冷静だった。
こんな戦い方を見られたら、味方のジャンヌも引いてしまうかもしれない。でも、今の自分にとってはどうでもいいことだ。そう、思った。
「小僧、我々の役目はジャンヌ・ダルク隊の支援だぞ。それを忘れるな」
ラ・イル将軍に言われ、鈴野 海斗は答えた。
「わかってるべ。あまり前には出過ぎず、万一劣勢になったら士気向上のために前に出るっちゃ。もっとも、ジャンヌがいるなら士気の向上なんて朝飯前だろうけんどもな」
癇癪持ちで恐れられているラ・イルだが、海斗のことはお気に召したようだった。
「報告いたします！ 奇襲部隊、イングランド軍の一部の足止めに成功しました！」
斥候がラ・イルのもとに来て報告をする。海斗がラ・イルに進言して、指揮下の兵の一部をゲリラ戦や物資略奪に回したのだ。
「貴様の策、面白いほどに当たるな」
「うんにゃ、ゲクラン元帥に倣ってのことだべ。む……左翼が多少押され気味だべ。前線で味方を鼓舞してくるべ」
「ああ、行ってこい。50騎をつけてやる。くれぐれもくたばるなよ」
馬に鞭打って前線に駆けつけた海斗は、力の限り叫ぶ。
「Au pas camarade！（友よ、進もう） ラ・ピュセル（乙女＝ジャンヌのあだ名）の前で弱腰になっては、戦士の名がすたるっちゃよ！」
海斗の激励の甲斐あって、じりじりとフランス軍は押し返し始める。
「Viva La France！ イングランド軍をオルレアンから叩き出すんだべ！ ラ・ピュセルは神が遣わしたフランスの乙女、その力を信じるんだべ！」
ラ・ピュセル＝ジャンヌの名は、それを口にするだけで兵士の心の支えになりつつあった。海斗はなおも続ける。ジャンヌ・ダルクの正当性をここで強調するのだ。
「ラ・ピュセルのことは教会も認めてるべ！ 今、ここでイングランドの大軍に善戦していることが、その証拠だっちゃ！」
フランス兵を励ますことに成功した海斗は、戦況の好転を見届け、いったんラ・イルのもとに戻る。
「遠目で見ても、ジャンヌの部隊は善戦しているな。神がかりの少女というのも伊達ではないということか」
ラ・イルの言葉に頷きながらも、海斗はひとりごちた。
「んでも、ジャンヌといえどゲクラン元帥のようにはなれんべなぁ」
フランス軍の弩部隊が、一斉に矢を放ち敵軍を足止めする。間髪を入れず、さらに斉射。
「作戦がうまくはまって、良かった」
フランス弩部隊は、１列目が射撃、２列目が矢の装填という２列構成になっている。１列目が撃っている間に２列目が装填し、すかさず矢を射掛けるというわけだ。逆巻 天野が出したアイデアだった。弩の発射速度も上がるし、軽度の負傷者も装填作業は手伝える。
「戦いは困難だが、傷は浅いという人には、是非やってほしいことがある」
天野はもう一つ提案を出した。
「味方の士気高揚のため、勝利と生還を願う歌を歌うんだ。それだけでも、ひとつの希望になる」
さらに、天野は弓矢を手に前線へと駆けていく。乗り手を失った敵の馬を見つけ、すかさず飛び乗った。
目の前には、先陣に立って戦うジャンヌの姿がある。仲間のために、自分も戦わないといけない。天野は覚悟を決めた。命は奪わないよう、肩や目を狙って戦闘能力を失わせることを目標にする。
その時だった。天野の目に、2人のイングランド兵がジャンヌを前後から槍で突こうとしている光景が飛び込んできた。
「いけない！」
天野は、反射的にろっこん〈天邪鬼〉を発動していた。発動中は、目視した対象の行動が逆さまになる。ジャンヌを挟み撃ちにしようとした兵士は、わけのわからないまま同士討を始めた。さらに、天野の視界にいたイングランド兵も全て味方を攻撃し始めたのである。
敵方は、恐怖と混乱に陥った。天野はさらに大声を出す。
「さあ、裏切りの時だ！」
味方に裏切りが出たと思い込んだイングランド軍は、さらに混乱した。
「一体、どういう術を使ったのでしょう……」
窮地を脱したジャンヌは、不思議そうに呟いた。
生きようが死のうが、別にどうでもいい。
でも、大人しく殺されるのも嫌な気がする。それなら。
敵兵を一人でも多く、道連れにしてやろう。
剣を手にした朝鳥 さゆるは、感情を失った瞳で戦場に現れた。内面から、名状しがたい熱い衝動がこみ上げてきた。
体が、恐ろしい程に勝手に動く。攻撃対象は主に歩兵だ。勝手に剣が閃き、確実に相手に致命傷を負わせていく。返り血が全身を赤く染めるが、全く動じる気配もない。
無表情で、無言でひたすら敵兵と切り結ぶ。血に染まった顔の中で、目だけが異様に輝いている。
「なんだ、あの小娘は……」
イングランド兵たちは、さゆるの不気味な戦いぶりに底知れない恐怖を覚えていた。不可解なまでに無慈悲で、しかも悪魔に憑かれたかのように異様に強い。
さゆるの歩く先で、折り重なった死体が道のように連なる。休むことなく剣を振るいつつも、意識はいやに冷静だった。
こんな戦い方を見られたら、味方のジャンヌも引いてしまうかもしれない。でも、今の自分にとってはどうでもいいことだ。そう、思った。
「小僧、我々の役目はジャンヌ・ダルク隊の支援だぞ。それを忘れるな」
ラ・イル将軍に言われ、鈴野 海斗は答えた。
「わかってるべ。あまり前には出過ぎず、万一劣勢になったら士気向上のために前に出るっちゃ。もっとも、ジャンヌがいるなら士気の向上なんて朝飯前だろうけんどもな」
癇癪持ちで恐れられているラ・イルだが、海斗のことはお気に召したようだった。
「報告いたします！ 奇襲部隊、イングランド軍の一部の足止めに成功しました！」
斥候がラ・イルのもとに来て報告をする。海斗がラ・イルに進言して、指揮下の兵の一部をゲリラ戦や物資略奪に回したのだ。
「貴様の策、面白いほどに当たるな」
「うんにゃ、ゲクラン元帥に倣ってのことだべ。む……左翼が多少押され気味だべ。前線で味方を鼓舞してくるべ」
「ああ、行ってこい。50騎をつけてやる。くれぐれもくたばるなよ」
馬に鞭打って前線に駆けつけた海斗は、力の限り叫ぶ。
「Au pas camarade！（友よ、進もう） ラ・ピュセル（乙女＝ジャンヌのあだ名）の前で弱腰になっては、戦士の名がすたるっちゃよ！」
海斗の激励の甲斐あって、じりじりとフランス軍は押し返し始める。
「Viva La France！ イングランド軍をオルレアンから叩き出すんだべ！ ラ・ピュセルは神が遣わしたフランスの乙女、その力を信じるんだべ！」
ラ・ピュセル＝ジャンヌの名は、それを口にするだけで兵士の心の支えになりつつあった。海斗はなおも続ける。ジャンヌ・ダルクの正当性をここで強調するのだ。
「ラ・ピュセルのことは教会も認めてるべ！ 今、ここでイングランドの大軍に善戦していることが、その証拠だっちゃ！」
フランス兵を励ますことに成功した海斗は、戦況の好転を見届け、いったんラ・イルのもとに戻る。
「遠目で見ても、ジャンヌの部隊は善戦しているな。神がかりの少女というのも伊達ではないということか」
ラ・イルの言葉に頷きながらも、海斗はひとりごちた。
「んでも、ジャンヌといえどゲクラン元帥のようにはなれんべなぁ」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2015年04月03日
- 参加申し込みの期限
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- 2015年04月10日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2015年04月10日 11時00分
