進路相談、君等の道【中学編】｜リアクション

進路相談、君等の道【中学編】

○３－２　夜乃理沙

　１６３ｃｍ、中学生とは思えない身長と大きな胸の理沙が席に着きました。
　数学担当の武田剛志先生が尋ねました。
「進路の話の前に。夜乃、お前、ちゃんと寝てるのか」
「あちゃー……、すみません。眠い授業は寝てます……」
　理沙は赤いサイドテールの髪を揺らし頭をかきました。
　座学の授業は大抵寝ている理沙ですから、成績もお察しの通りです。
　生活態度は真面目に見えるし、読者モデルとして働いているのを知っているので、先生もあまり怒らずに起こしていますが。
「志望校は寝子島高校か」
　進路希望表を見ながら先生は言います。
「はい、家から近いので。公立で入れそうなマタ工には行きたくないです。工業は僕の進路に繋がらなさそうなので……」
　家から近いのを理由と言いましたが、本音はモデルやってる事務所の近くであること。程よく都会であることも理由です。
「将来の夢は、モデルとかじゃないのか？」
　そう聞かれて、理沙は真顔になりました。
「知ってると思いますけど、親は僕が5年生の時に死んでるんですよ」
　先生は黙って頷きます。
「で、引き取られた先が暴力親父……俗にいう虐待。最悪だった、抜け出す前何度も死ぬかと思ったし死にたくなった」
　思い出したくないことでしたが、あえて理沙は語りました。
「……そんなことがあったんで、子どもを守る仕事につきたいなって。カウンセラー、臨床心理士、児童福祉司。自分なりに調べて漢字書きました」
「そうか。だが勉強が必要だぞ」
「勉強はダルいし眠いしなぁ。ぶっちゃけ勉強したくないや。勉強しないで好きな職業につけたらいいのに」
「それで済むなら誰も勉強しないな」
「……分かってますって、言ってみただけですよ。本音も混じってますけど」　
　先生の口調に少し怒りが混じったのに、理沙は苦笑します。
　世の中の厳しさなら、下手な大人より身に染みています。
「私立……寝子高には入れるのかな。今面倒見てもらってる人は、近くていいんじゃないかって。お金は親のお金があるので大丈夫です」
「そうか。とにかく勉強はしろよ。授業を聞かないことには話にならない」
　頷きつつ理沙は考え込みます。
「……あぁ、でも最近あそこの学校に、不思議な噂や物騒な噂も効くし、個性強い人揃いって話も聞くからどうなんだろう。それで心配してる知り合いも居ますね……」　
　先生はそれに答えて言いました。
「……個性はうちの学校だって十分強いと思うがな。物騒なのは不良が多いマタ工も一緒だ。真面目に学校に通っている分には、そうそう変なことには巻き込まれないはずだぞ」
「うーん、そうでしょうか……」
　気にしすぎなのかもしれません。でも理沙は、得体のしれない人物や変態がどうにも苦手なのでした。

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あとがき

担当マスター：茄子りんこ
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ご参加ありがとうございました。
……担任が決まってないと言ったな、あれは（ちょっとだけ）ウソだ。
「半分コドモ、半分オトナ」にて風雅宿マスターが先生を描写してくださったので、参考にさせていただきました。
それと、同窓会リアクションで寝子高に来ないかと誘われていた志村先生は、今年度いっぱい中学に残ることになりました。

進路に悩む人、自分なりに目標を目指す人と様々で、中学生ならではの初々しさがありました。
先生たちのリアクションを考えるのも楽しかったです。
大人も何でもわかっているわけではなく、先が見えない不安は同じなのかもしれません。
皆様の洋々たる前途に幸多かれと祈ります。

今回は個別コメントなしですみませんが、機会がありましたらまたよろしくお願いします。

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