進路相談、君等の道【中学編】｜リアクション

進路相談、君等の道【中学編】

○２－４　八葉るちる

「先生、るちるさんは将来映画監督になりたいです。でもそのためにどうすればいいか……最近よくわからないんです」
　開口一番、るちるはそう告げました。
「へえ。君でも迷うことがあるんだね」
　超ポジティブで何事も自分の都合のいいように解釈するるちるを見慣れているので、藤倉先生は言いました。
「実は前にドラマの監督さんとお話する機会があったんです。その時言われたこと、ずっと考えてるんです」
「なんて言われたの」
「『まず勉強して基本的な知識を身につけろ、後のことはそれからだ』って」
「なるほど。いいこと言うね」
　先生は感心しました。
　芸術関係の科目はいいけれど、それ以外の成績ははあまり良くないるちるです。
　天才肌で、感覚で物事をこなしてしまうるちるですが、やはり基礎ができていないとかなりの斜め上の結果になってしまうこともあります。ぴったりのアドバイスと言えるでしょう。
「勉強は大事だってことはるちるさんも分かってます。頭が良くなればできることも増えるし、選べる道も無数に開けるようになります。でも、その中から通りたい道を選ぶにはどうすればいいのか……。ひたすら勉強し続ければそれも自然に見えてくるものなんでしょうか？」
　へえ、とまた感心しそうになって先生は少し考えました。
「うん、見えてくることもあるし、選ぶしかなくて決断することもあるだろうね」
　しかしすでに、るちるの気持ちは切り替わっているようです。
「おっと、ガラにもなく真面目になっちゃいました。まあ正直な所、夢のためとはいえさすがに勉強ばっかりするのは辛いものがありますねー。その辺どうやって折り合い付けるのか悩ましいです」
「そうだね。バランスを取るのが大事じゃないかな」
「ひとまず高校には行こうと思ってるんですけど、やっぱり寝子高の芸術科がいいんですかね？」
「ああ、それがいいと思うよ。映画研究会なんかもあるんじゃないかな」
「映研ですか！　興味あります。いきつけのお店のバイトさんが映研の人らしいんですよ。学校に通って映画も作れたら最高ですよね。独学で映像を作って腕を磨いたりもしてますけど、やっぱりちゃんと学ぶべきだと思いますし。そういう『勉強』なら喜んでするんですけどねー」
　だんだんとるちるの目は輝き始めました。
「もう映像作ってるのか。作って人に見てもらうことで学べることもいろいろあるんじゃないかな。試写会やる時は呼んでくれたら見に行くよ」
　先生もけっこう映画好きのようです。
「ぜひ見てください。試写会と言わず映画館希望ですが」
　自信満々のるちるでした。
　

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