地上に堕ちし神々の深淵　～幻影なる平和を求めて～｜リアクション

地上に堕ちし神々の深淵　～幻影なる平和を求めて～

【闇堕ちの資質】
　突如、目の前に現れたツェツィーリエ・ヴィクトリア・フォン・インゼル＝カッツェの姿に、５歳の少女あやこはしばし呆然と立ち尽くしていた。
「あ、あ……」
　あやこは小さな喉を震わせて、深紅のスカーフをはためかせるツェツィーリエと、彼女が召喚した守護精霊サン・魔・サンの姿を交互に見比べる。
　そう。普通なら目に見えないはずの守護精霊の姿が彼女には見えていた。
　その意味するところは――

（……サン・魔・サン、ちょっとカッコいい……！）

　どうやら、彼女とツェツィーリエは微妙に波長が合うらしいということだった。彼女の将来がちょっとだけ心配である。

「ほう？　小さき者よ、貴様にも見えるか？　我が愛しき守護精霊サン・魔・サンの姿が」

　ツェツィーリエは、あやこの反応に少し嬉しそうにそう訊いた。
　あやこは少し躊躇いがちに「……う、うん」と頷いた。
　すると。
「ふっ、ならばそこで指をくわえて見ているがいい。このツェツィーリエ・ヴィクトリア・フォン・インゼル＝カッツェが暗黒の偽天使からレッドクリスタルを奪還する姿を！」
「あ……」
　言うが早いか、ツェツィーリエはサン・魔・サンを引き連れて、颯爽と鳩が飛んでいったのとは反対の方角へ走って行った。
「…………」
　あやこはそんなツェツィーリエの姿を、ぽかんとした表情で見送ったのち、

「……えーん……えーん……あのおねーちゃん……あほのこだよー……」
　　
　また激しく不安になって、再びえーんえーんと大きな声で泣き叫び始めるのだった。

このページにイラストを設定する