せんせいといっしょ：久保田先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：久保田先生編

（恋愛かぁ……）
　話を聞きながら、八兵衛はズレ落ちそうになった眼鏡を掛けなおし、ふと、思う。自分を見て恋愛経験があるようには見えないだろう、と。それに……。
「恋人どころか、友達も居なかったからな、俺」
　言ってしまってから、余計な事を言ったかな、と思った彼を、瞬平とセレッソが見ていた。
「さっきの、聞こえた？」
「いや？　何か言ったのか？」
　瞬平はサングラスを正して首を振るも、とことこやって来たセレッソは違った。
「でも、今日からは皆と友達ナノ♪　ね？」
　元気が弾けるような彼女の笑みに、八兵衛は少し照れくさく思う。瞬平もまた、セレッソの言葉に、妙なむずがゆさを覚え、苦笑した。

　それから作業を再開したのだが……るるかと美和はいない。何か思いついたのか、るるかは美和を連れて隣の教室へ行ってしまった。
「一体、どーしたのかな？」
「お化粧がどうのこうの、って聞こえたけど……」
　真央と真魚が不思議そうに首をかしげていると、不意に声が掛かる。
「まおちゃん、ちょっと……」
「「はい？」」
　綾花が、真魚に用事があり声を掛けたのだが、二人とも振り返る。やってしまった、と少し赤くなる綾花に八兵衛がぽつり。
「まぁ、二人とも名前の読み方が同じだし」
「仕方ない事アルよ」
　と華菜子もうんうんと頷く。他のメンバーもよくある事だな、と思っていると、るるかと美和の声が聞こえてくる。
「おまたせ～♪　ねーねー、こんな感じにしてみたけどイケてるんじゃない？」
　と、るるかが美和を連れてきたのだが……メイクががらりと変わっていた。
　アイラインがよりハッキリし、目が少しパッチリしたように見える。付けまつげの効果だろう。春らしい色合いのチークが、美和の肌の色をより健康的に見せていた。それに、唇にはパールのような光沢があるコーラルピンクのルージュがひかれ、とても艶っぽい。
　普段のナチュラルなメイクとは違う、気合の入った姿に、女の子たちは色めき立つ。
「あ、ネイルもかわいいっ」
　真央の一言で、美和の手元に注目が集まる。綺麗に整えられた爪も、これまた今の季節に合う色合いのネイルが塗られ、花のデコレーションが付けられている。ワンポイントのラメも中々様になっていた。
「似合うかしら？」
　今度の合コンはこれでいこうかな？　とノリノリな美和に、るるかは「さっすがあたし！」と胸を張る。
「これにふんわりとしたスカートとか合わせたら素敵かも」
「このお洋服には、いつものメイクの方がいいかもしれませんね」
　真魚と綾花の言葉に、美和は納得したような顔で相槌を打つ。しかし、いつもの違うメイクで笑う美和もまた、魅力的である事には変わりない、と思う一同だった。

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