せんせいといっしょ：久保田先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：久保田先生編

「あのっ、すみません！　ちょっと家に連絡してもいいですか？」
「ええ。そういえば、真魚ちゃんのお家はうどん屋さんだったわね」
「！？　せ、センセ」
　お手伝い、がんばっているのね、と美和が微笑めば真魚があたふたと更に慌てる。彼女は実家の事を隠していたのだが、担任はそれを知らなかったらしい。
「へぇ～、そうなの？」
「商店街でも人気のあるお店アル。私のうちのラーメンも美味しいけど、まおちゃんちのうどんも美味しいアルヨ。食べに来るとヨロシ」
　るるかが興味を示し、真魚と幼馴染の華菜子が楽しげに語る。その傍らで真っ赤になっていた真魚だったが、その様子に華菜子はふと、幼馴染の様子に気付く。
「そういえば、まおちゃん、実家のコト隠してたアルネ」
「別に隠す事でもないと、思ったけれど……」
　疑問に思い、美和がぽつり、と呟くと、真魚は更に顔を赤くする。
「いや、その……自分が接客をしている時に同級生とか来たら……恥ずかしいじゃない」
　もじもじしている真魚の様子をかわいい、と思いつつ我に返る美和達。るるかは１本のおさげを後ろへと垂らし、にっこり笑った。
「早く行って、ちゃっちゃと終らせちゃおうよ」

　美和がるるか達を伴って教室に戻る途中、八神修とも出くわした。美和が事情を説明すると、彼もまた二つ返事で了承する。
「そういう事でしたら、人手が多い方がいいですね」
「手伝ってくれるの？　ありがとう！」
　喜ぶ美和の後ろで、真魚達も安堵の息を漏らす。そして、教室に戻ってみると、綾花達の他に七草八兵衛の姿もあった。
「八兵衛君もありがとう。　本当に助かるわ」
「……いや、特に用事もないし……」
　ズレ落ちそうになった眼鏡を正しながら、八兵衛が作業しつつ答える。彼はふと、手を動かしながら１年４組の教室をちらり、と見た。何故だろう、自分が所属する１年２組の教室と作りは同じの筈なのに、全く違う場所のように感じるのは。
（まぁ、どうでもいいけど）
　僅かにぼんやりした雰囲気を持ちながらも、作業を止めずやっていく八兵衛。一方、修は作業用にと渡されたホッチキスを見つつ考える。
　ホッチキスは嵩張り、その上取れやすく消耗品代もかかってしまう。分別の事を考えると針なしで止める事ができる針無しステップラーの方がいいのではないか。けれども……傍らで新しく来たメンバーに説明しつつ一生懸命作業する美和の姿を見ていると、ちょっと言い辛い。
「とりあえず事務室から借りたのと、私の自前で間に合いそうね。これなら、思ったよりも早く終わるかも」
　美和がホッチキスの数などを見、少し安心したような顔になっていると……、窓から顔を覗かせている女子生徒が……。
「およ？　綾花ちゃんと庚ちゃんだぁ！　皆でみゃーちゃんセンセーのお手伝い？」
　ぴょこっ、と顔を覗かせたのは部活中に見かけた愛らしい猫を追いかけていた後木真央である。……部活はいいのか？　という周りの疑問はさておき、真央は教室に集う面々や道具などを見、にま～っ、と笑う。
　因みに「ちゃん」付けで呼ばれた庚は僅かにに強張り、瞬平が笑いを堪えているのを見、八兵衛と修は顔を見合わせていた。
「みゃーちゃんセンセー！　真央ちゃんは提案しまーすっ♪　文房具が可愛いとみんなのやる気度がアップすると思うのです！！」
「……確かに、それは解る気がするな～」
　るるかが相槌を打っているそばから、真央は寮へ『秘策』をとってくる、と猛ダッシュ！　その楽しげな足取りに、一同は思わず手を止めて見送ってしまうのだった。
「……その前に、部活は大丈夫なのかしら……？」
　少し不安になる美和なのであった。

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