みんなで、かぼちゃ三昧！｜リアクション

みんなで、かぼちゃ三昧！

　【２】
　一方。
　自分の調理台に戻った刀は、作業を再開した。
　彼が作っているのは、パンプキンスープだ。
　皮を剥いて一口大に切ったかぼちゃは、すでに触るとすぐに潰れるぐらいにまで柔らかく茹でられていた。
　彼はそれへ溶かしたコンソメを加えながら、裏ごしし始める。
　裏ごしが終わると、今度はそれを牛乳で伸ばしながら、沸騰させないように気をつけつつ、火にかけた。
　やがて、鍋の中身がとろりとした液体になる。
「うん、いい感じだ」
　それを見やって刀は、楽しげに呟いた。火加減を見つつふと、さっきクルジッカがひっくり返しそうになった鍋のことを考える。
（ミキサーで滑らかにするとか言ってたから……あれも、俺と同じスープかな。黒兎先輩はてんぷらを揚げてたみたいだし、なんか、かぶってるなあ）
　というのも彼は、スープができたらもう一品、かぼちゃのスライス揚げを作る予定だったからだ。
（俺のは、てんぷらともちょっと違うんだが……）
　胸に呟きつつ、スープの味見をする。
「よし」
　小さくうなずき、塩胡椒で味を調えると、最後に生クリームを垂らした。
「こっちは、これで完成だ」
　火を止めて吐息をつくと、続いてスライス揚げを作り始める。
　こちらは、種とわたを取ってくし切りにしたかぼちゃを、まずはレンジで九十秒ほど加熱して柔らかくする。それへ軽く塩をふって片栗粉をまぶし、溶き卵にくぐらせ、更にスライスしたアーモンドや細かく砕いたナッツを混ぜたものを両面につけたら、油で揚げるのだ。
　あたりに、揚げもの独特の香ばしい匂いが漂い、小気味のいい音が弾ける。
　刀は、一つ出来上がったものを味見した。
（……うん、これはやっぱり、砂糖をふった方が、よさそうだ）
　口の中に広がるかぼちゃの甘味と、ナッツ類の香ばしさに、彼はうなずく。
　組み合わせ的に、おかずというよりおやつに近い感じになるだろうとは思っていた。だが、砂糖をふっていいものかどうか、少し迷っていたのだ。なのでそれは、出来上がったものを味見してから決めようと考えていた。
　やがて、スライス揚げが出来上がると、彼はその上から軽く砂糖をふる。
「よし、完成だ」
　うなずいて、彼は一人、満足げに笑った。

　同じく、調理台に戻った華菜子も、作業を再開した。
　彼女が作っているのは、麻婆南瓜だ。
　麻婆豆腐の豆腐をかぼちゃに変えたもので、作り方は麻婆豆腐とほとんど同じだ。
　クルジッカの所に駆けつけた時には、材料を全て刻み終えたところだった。あとは、炒めて行くだけだ。
　最初に炒めるのは、みじん切りしたネギと生姜だった。香りが出るまで炒めたら、次は挽肉をぱらぱらにほぐれるぐらいまで炒める。
「そろそろ、いいアル」
　小さくうなずいて、華菜子は調味料を手にした。
「うちの店で使ってるものを、持って来たアルヨ。美味しくできるといいなぁ」
　呟きつつ、それを中華鍋の中に入れ、更に食べやすい大きさに切ったかぼちゃも入れる。
　あとは沸騰して来たら灰汁を取りつつ、かぼちゃが柔らかくなるまで煮て、最後に水溶き片栗粉を加えてとろみをつければ、完成だ。
　あたりに立ち込める独特の匂いに引かれてか、調理のあとかたずけをしていた刀が歩み寄って来た。
「いい匂いだな。畑中は、ラーメンか？」
　彼女を知っている者なら当然とも言える問いを発して、刀は中華鍋の中を覗き込んだ。
「今日はラーメンじゃないアルヨ。麻婆南瓜アル」
「へぇ。美味そうだな。……試食が楽しみだ」
　答える彼女に、刀は笑って返す。それへ彼女は言った。
「上手くできたら、お店のメニューに使えないか、お父ちゃんに相談してみようと思ってるアル」
「そうか。……メニューに使ってもらえるぐらい、うまくできるといいな」
　がんばれよ、と付け加えて刀はあとかたずけに戻って行く。
「ありがとうアル」
　うなずいてそれを見送り、華菜子は灰汁取りを続けるのだった。