みんなで、かぼちゃ三昧！｜リアクション

みんなで、かぼちゃ三昧！

　【４】
　望春は、レンジで加熱してやわらかくなったかぼちゃの実に、砂糖を加えながら潰してこねていた。
　彼が作ろうとしているのは、きんつばだ。
（甘いものを作りたいけど、洋菓子系は他の人も作るかな……？）
　何を作ろうかと考えた時、彼が最初に気にしたのは、それだった。結局。
（いろんなものがあった方がいいだろうし、俺は和風なものにチャレンジしてみようかな）
　と決め、きんつばにした。
　こね上がった生地は、長方形に形成して、それを更に小さくカットする。
　そこに、小麦粉を溶いた液をつけてフライパンで焼けば、完成だ。
（美味しくできてるといいなあ……）
　胸に呟きながら、彼は形成したきんつばを、フライパンでせっせと焼いて行く。
　ほどなく、きんつばは出来上がった。
「案外、早くできたなあ……」
　まだ、他の参加者たちが調理中なのを見回し、望春は呟く。
「他にも何か作れそうだ。……手軽なのは、茶巾絞りかな」
　少し考えてうなずくと、彼はもう一つ小さ目のかぼちゃをもらって来ると、それを割った。
　種とわたを取って、一口大に切ると、レンジで加熱する。マッシャーでつぶしたものに砂糖を加えて混ぜる。
　あとはこれを、ラップで絞るだけだ。

　森蓮も、同じ調理台で料理していた。
　彼が作っているのは、煮物だ。
　前日に、かぼちゃを一つもらって帰っていた彼は、しっかり仕込みをして来ていた。
　仕込みといっても、かぼちゃを大きめの一口大に切って面取りをし、鍋に入れて砂糖をかけ、蓋をして半日置いただけではある。が、こうすると、かぼちゃそのものから水が出て来て、あとは調味料を入れて煮るだけでいい状態になるのだった。
　鍋ごと持参したそれに、蓮は酒としょうゆとみりんを入れて、弱火で煮込んでいる。
　彼にとって、食べるということは、生き物の命をいただくということだった。望んで食べられるわけではないだろう食材と真摯に向き合い、食材の良さを引き出すように仕込みをし、手をかけ、時間をかけ、食材と食材の作り手に感謝し、食べる者たちのために工夫を施す。そういう心と手間こそが重要なのだと考えていた。
　その彼が選んだ調理方法は、最もシンプルでありながら、最もかぼちゃの美味しさを引き出すものだった。
　火の傍で、鍋の様子を見ていた彼は、望春が茶巾絞りを作っているのに気づいて、声をかけた。
「茶巾絞りですか。自然の味をそのまま楽しむのは、いいですね」
「かぼちゃは、それそのものが美味しいからな」
　笑って返すと、望春はこちらを覗き込む。
「そっちは、煮物かな？」
「ええ。かぼちゃそのものから出た水分と、調味料だけで煮込んでいます」
　蓮も、うなずいて答えた。
「まだ煮込み途中みたいだけど、いい匂いがして、食欲がそそられるなあ……」
　望春が言って、小さく鼻をうごめかせてみせるのを見て、蓮は笑う。
「出来上がったら、望春さんも、どうぞ食べて下さい。かぼちゃに真摯に向き合った結果、導き出されたのが、この煮物ですから……きっと、美味しいですよ」
「ありがとう。……楽しみだな」
　笑い返してうなずくと、望春は再びラップで生地を絞る作業へと戻って行った。