ゲームブックを作ろう！―サンマさんサバイバル―｜リアクション

ゲームブックを作ろう！―サンマさんサバイバル―

●二
　教室からの笑い声にまぎれ、杖をつく音が静かに廊下に響く。音の主は教室前でとまり、何をやってるんだろうと首をかしげた。
　男性にしてはやや長めの髪が、静かに肩から滑り落ちる。
「あれ……氷雨先輩」
　輪の中に加わっていた逆巻天野に気づき、杖の持ち主――氷雨潤一が顔を覗かせた。
「こんにちは。何をなさってるんでしょう？」
「おや、いらっしゃい。今、ゲームブックを作ろうという話になってるんだ」
　旅鴉月詠がドアを開き、氷雨を教室内に招き入れる。
「自分で選択肢をえらびながらストーリー展開を楽しむ読み物なんだ。選択分岐型の小説、といえばわかりやすいかな」
　八神修がかいつまんで説明すると、氷雨は興味深そうに手にとってめくりはじめた。
「氷雨先輩もゲームがお好きなんですか」
「ゲームというより、本が好きなんですよ。天気がいい日に窓際で陽の光を浴びながら本を読んだりすると、とても安らぎますから」
　逆巻の問いに、氷雨がすっと目を細める。

「なんだか懐かしいな。小学生のころ、こういうので遊んだ気がするわ」
　そうつぶやいたのは塔尾松生。
「私もだ。子ども向けだと思っても案外作りがこってたりして、夢中でページをめくったものさ」
　桜月。おおよそインドアの遊びは遊びつくしていそうな彼女の目にも、独特の筆致で描かれるゲームブックの文章は懐かしく映った。
「自分たちで作るのも面白そうよね。誰かを楽しませるのってやりがいがありそうだし」
「ああ。しかし、サンマさんを主人公にするのか……」
　今回の主役、サンマさん。
　考えれば考えるほど謎の多い存在だが、いかにして彼の見せ場を作るかも腕の見せ所だろう。
「ハプニングもいいけど、サンマさんのことだからロマンスもありそうだよね！」
　そういって桜庭円は口元を綻ばせる。
　気のいい彼の人柄を、なんとかヒーローっぽい活躍でシナリオに落とし込めないかと彼女は考えていた。
「ねえ、ゲームブックの選択肢なんだけど、行動じゃなく結果を選択肢で選ばせる形にしても面白いんじゃないかな？」
「えーと、つまり……どういうこと？」
「たとえば、出会った相手は誰だったでしょう？　みたいに、この先の展開を二つの選択肢にするの。自分が読みたいって思う展開を選んでもらうのも楽しいかなって」
「なるほど。心理テストみたいで面白そうだね」
　桜が乗り気になったのを見て、桜庭が表情をほころばせる。
「まずサンマさんが女の人を助けてー、その女の人が振り返ると実は……ののこちゃんでした、とか。権蔵先生でもいけるかも？」
「ののこちゃんだとお礼より先にサイン求められそうね」
「だね。権蔵先生は……そっち系のバーに消えていったりして！」
　もし万が一富士山先生とサンマさんが手をつないでネオン街に消えていったとしたら、あらゆる方面での大ニュースになりそうだ。

=====
＜２＞
　旧市街の裏路地を歩いていた君は、日傘の女性がチャラ男達に囲まれているのを発見した。
「おっと、お困りのレディを放っちゃおけねーぜ！」
　もてるイケメン力、もとい、イケ魚力から女性を救わずにいられなくなった君は、
　サンマさんトルネードキックでチャラ男達を一気に蹴散らした！
　女性がお礼を言おうと近づいてくる。
　その女性とは……！

　富士山先生だ！　→ページ１１へ
　ののこちゃんだ！　→ページ４へ
=====

このページにイラストを設定する