秋の空は危険がいっぱい｜リアクション

秋の空は危険がいっぱい

○鳥を追い払おう！

　雨寺凛は、寝子高からの帰りその道を通りかかった。
「きゃっ！」
　上から体の近くに落ちて来たものに身をすくめ、地面を見る。
「何かと思ったら柿の実や栗が落ちてきたよ……！　危ないなぁ……」
　上を見上げれば、たくさんの鳥たちが果実をつついている。
「あー、鳥が実を落としてるのか……あの鳥たちを追い払えばいいんだね……よーし」
　何事か思いついたらしい凛は、美しい黒髪をかきわけた。
（町なかで聞こえても違和感のない音がいいよね……よし、犬の吠える声を出して鳥を驚かせるよ！）
　右耳に触れると、ろっこん「加虐的虚偽声楽」発動！
「ワン！ワン！」
　犬の鳴き声に、鳥たちは一斉に羽ばたき枝から去っていく。
「さあさあ、帰った帰った！」　
「えっ、犬のこえ？　いまのおねえちゃんがだしたの？」
　きょろきょろあたりを見回した海美が驚きの声を上げる。
「……えへへ、実はそうなんだ」
「すごい！」
　海美の尊敬の眼差しに気を良くした凛だが、すぐに問題に気づく。
「うーん、軽く追い払った程度じゃまたすぐ戻ってきちゃうかなぁ……」
　思ったとおり、しばらくすると、鳥たちはまた枝に鈴なりになっていた。　
「よし、せっかく進化したろっこんだし、ここは思い切って大きい声で吠えちゃおうかな！」
　凛の進化したろっこんは、とても大きな音を出した際、同時に音量に応じた強さの衝撃波を出せるのだ。
「ろっこん？　じゃあおねえちゃんも」
　海美が言いかけた時、すでに凛は右耳に触れていた。
「ワオーーーン！！」
（大きい音でついでに衝撃波も軽く放てば流石に危ないと思って逃げてくれるかな……実を落としたり木を傷つけたりしないレベルでうまく調整して出せるといいな……！）
　さっきより大きな羽ばたきで、鳥たちは逃げて行った。
「すごーい！」
　しかし残念ながら衝撃波は、柿や栗も落としていた。
　鳥たちの羽も一緒だ。
「あーあ……」
　さっき頑張って掃除したのに、また柿や栗が道に落ちてしまっているのを見て仄はため息をついた。
「なんの騒ぎなのだ猛犬注意なのだ？」
　犬の声を聞きつけた後木真央がダッシュしてきた。
「あっ、まおちゃん！」
　猫なで仲間の海、それに凛も反応する。

「ふーん、そういうわけなのだ？」
　二人から話を聞いた真央が、少し厳しい顔になった。
「敷地外の物を取っても泥棒ではないのだ持ち主の管理不備なのだ。この枝が落ちて他人を傷つけたら持ち主が責任を問われるのだ」
「なんかむずかしい！　でもたべていいってことだよね」　
　真央の意外な言葉に、海美がちょっと驚く。
「栗はかなり丸裸に剪定するし落果が危ないからまぁいいのだ。でも柿は……」
　独り言をつぶやいた真央は、今度は周囲を見回し子供たちに尋ねる。
「この柿はみんなが取り放題だけど……みんなは柿があるのとなくなるのどっちがいいのだ？」　
「うーん……しぶいのかもしれないけど、コンポートにして食べたいな」
　フードに入っていた柿を見つめながら仄が言う。
「くりもかきもみんなで食べたらいいと思う」
　と白燕。
「柿とか栗ってそういえばあんまり食べたことがないな。でも、この間授業で、柿を干して甘くするって教えてもらったっけ」
　樹弥が言い、
「ちょっともらえたらやってみたいな。おもしろそうだし、どんな味がするか気になるじゃんか」
　と続けた。
「たく山とったらいるみんなでわけっこしよう！」
　と元気に言うのは海美だ。
「みんな食べる気満々だねー！　お家の人に許可をもらえたら、私も食べてみたいな」
　凛も言う。
「わかったのだ、柿は手をつけずにおくのだ」
　そう言うと真央はどこかへ駆け出して行った。

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