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何も死守しない普通の一日
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強い風が吹いた。高台を歩いていた
秋ノ宮 こまち
は立ち止まり、被っていた臙脂のベレー帽を手で押さえた。ダークブラウンの長袖シャツに重ね着した同色のチュニックの表面に小波が立つ。
「飛ばされるかと思いましたわ」
ベレー帽の位置を直した。白いスカートの端に赤い葉が引っ掛かっている。その場で回って降り落とし、気ままな散歩に戻っていった。
道沿いに白亜の建物が見えてきた。少し足を急がせて立ち止まる。
「ここは、お店なのかしら?」
こまちは敷地に足を踏み入れた。静々と歩いて目の前にある扉をそっと開ける。香しい匂いに表情を和らげて中へと入っていった。
アンティークに属する家具が目に留まる。洒落た猫脚の椅子には着飾ったビスクドールが、あなたは誰? と尋ねるような瞳で座っていた。
「私はこまちよ」
人形に話し掛けて周囲を見やる。壁には蠱惑的な仮面が掛けられていた。中世のイタリアで夜な夜な開かれていたマスカレードを彷彿とさせた。
「いらっしゃい。おや、君は……この間、
美術館
で会った娘さんだね」
仕立ての良い背広を着た老紳士然とした
木原 一颯
が部屋の奥から現れた。左目に掛けたモノクルの位置を指で正した。
こまちは控え目な笑みで進み出る。
「また、お会いできて嬉しいです」
「よく来たね。僕も機会があればじっくり話したいと思っていた」
灰色の瞳にさり気ない優しさが宿る。こまちは面映ゆい表情を隠すかのように視線を周囲に向けた。
「素敵なお店ですね」
「店名は
villa L'eremita
、イタリア語で隠者の住処という。あまり素敵とは言い難いが」
困ったような表情で微笑むこまちに一颯も釣られて口元を緩める。
「美味しい紅茶を淹れて来よう。その椅子に座って待っていて欲しい」
「でも、大切な売り物に私が座ってもいいのでしょうか」
「人形が許されて、君が許されない道理はないよ」
一颯は微笑んで奥へと消えた。こまちは遠慮がちに椅子に腰掛けた。近くに座っている人形に目を向けて、よろしくね、と口にした。
甘い微かな匂いを引き連れて一颯が戻ってきた。
「熱いから気を付けて。砂糖は二つで良かったかな」
「はい、ありがとうございます」
こまちはソーサーを受け取ると膝の上に乗せた。ティーカップを持ち上げて表面の細かい装飾に感嘆の目を注ぐ。一颯は別のところから一脚の椅子を取り出し、向かい合う形で座った。
互いに紅茶で喉を潤すと一颯が先に口を開いた。
「まずは、そうだね。君が芸術の道を志した動機を聞かせてくれないか」
「私が芸術を志したのは……母の影響ですね。母は寝子島で芸術家を目指していました。私が幼い頃に亡くなりましたが、生前はよく島の話をしてくれました。そのような経緯もあって今年の夏に寝子島高校に転入しました」
「なるほど、母君の影響か。君と似た聡明な女性だったんだろうね」
その言葉に、どうでしょうか、とこまちは俯いて紅茶に口を付けた。
初々しい姿に昔を思い出したのか。少し寂しげな表情で一颯が話を始めた。
「……芸術家と言えるかはわからないが、僕の弟は楽器を手掛ける職人だった」
「今、その方は?」
「死んだよ。若い頃に不幸があってね」
温かい場に冷たい風が吹いたかのように、こまちは身体を硬くした。察した一颯が早口で言葉を繋ぐ。
「すまない この話は忘れてくれ」
「私こそ、ごめんなさい」
「どちらも謝り過ぎだな。少し落ち着こうか」
二人は苦笑してティーカップの紅茶を飲んだ。和らいだ表情で一颯はこまちを見つめる。
「それにしても君は彼女に……弟の恋人によく似ている」
「そうなのですか?」
「ああ、他人の空似だと思うが」
一颯は立ち上がった。ソーサーを近くの架台の上に乗せて、すぐに戻る、と言葉を残して奥へと引っ込んだ。
こまちは紅茶を飲んで軽く息を吐いた。人形に憂いを帯びた目を向けて、どうしたのかな、と呟いた。
遠くの方で、あった、と喜ぶ声が聞こえた。少し間を空けて一颯が両手に服を抱えた姿で戻ってきた。
「それは洋服ですか?」
「ああ、そうだ。奥手な弟が恋人に贈ろうとして果たせなかった洋服だよ。これを君に譲りたい」
「え、でも、それは弟さんの形見で大切な物ではないのですか」
こまちの心配をやんわりと否定するように一颯は頭を振った。
「先程も言ったが君は弟の恋人に生き写しだ」
「それは……」
「このまま、誰にも着られずに何十年と死蔵しておくのは忍びない。今日、ここに君が訪れたのは弟の導き……運命かもしれない」
「本当に私で、いいのですか?」
こまちは立ち上がった。ソーサーを椅子の上に乗せて一颯の元に歩み寄る。
「弔いを兼ねて君に着て欲しい」
差し出された服を見つめてこまちは受け取った。古めかしくも気品が漂う一着であった。
「あの、ここで着てもよろしいでしょうか」
「いいのかい? 着替えの場所はこちらの部屋を使ってくれ」
一颯はこまちを案内して店内に戻ってきた。架台に乗せた紅茶を手にして一気に飲み干した。両手の指を交差させて握り締める。祈りに似た姿で、その時をじっと待った。
「お待たせしました。どうでしょうか」
「あ、ああ、上品な趣が君によく合っている」
こまちの姿に一颯は僅かに声を詰まらせた。
「君のおかげで少なくとも洋服は幸せになれたに違いない」
「あの、頂くだけでは申し訳ないので、一つお願いを聞いて貰えないでしょうか」
「僕に出来る事なら」
「私にお店の手伝いをさせてください」
一颯に視線を合わせて言った。
「……隠居が無聊を慰める為にやっている店でよければ歓迎するよ」
「ありがとうございます。これからもよろしくお願い致します」
深々と頭を下げるこまちの肩に一颯が手を置いた。
「今日はありがとう。ん、今度は感謝ばかりになったが、これはいいか」
「そうですね」
明るい表情で顔を上げた。
その帰り道、洋服を手にしたこまちは改めて自身の言葉を思い返していた。
「出掛ける前には思いもしなかったわ」
紙袋に入れて貰った洋服に目を落とした。すぐに前を向いて力強く歩き出す。
「木原さんは芸術に造詣が深いから、もっと話がしたくて――」
言葉を切って軽く頭を振った。
「これが私の運命だから」
一颯が口にした『運命』に心が動いた。気持ちを落ち着かせるように左胸に手を当てる。
こまちは向かい風の中を突き進んでいった。
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3人まで
シナリオジャンル
日常
コメディ
オールジャンル
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月08日
参加申し込みの期限
2015年03月15日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年03月15日 11時00分
参加キャラクター一覧
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