迷子の迷子の……｜リアクション

迷子の迷子の……

　さてその頃、その情報の出所である信彦は、車を降りて栞凪を全力追跡中だった。

「カンナ！　何をしたか知らないけど、いい加減に諦めて出頭するんだ！」
「ひこにゃん、しつこい～ッ！」
「だって、生徒まで使って捜査が行われるなんて尋常じゃないよ。でも、素直に謝れば、きっと先生も許してくれるって、なっ？」
「何もしてないってば！　それに探されてるのは私じゃなくて！」
「仕方ないよカンナ、そのセーラー服が物言わぬ証拠さ！」
「だから違うってば～ッ！？　あああッ、志鳥さんどこ～ッ！」

　逃げる栞凪と、追い回す信彦ははっきり言って、とても、ものすごく、この上なく目立っている。おまけに栞凪だけではなく、寝子高生があちらこちらで、見知らぬ制服の女生徒を見かけなかったか、と聞いて回ったお陰で、街の一部ではすっかり転校生の存在が噂になっていて。
　栞凪の行く先、行く先、学校までの案内を頼まれたという人やら、見つけたら保護して欲しいと頼まれた人やらが、表れては彼女の行く手を阻む。それにいちいち「私は転校生じゃなくて」と説明している間に、信彦があの調子で叫びまわるものだから、栞凪はすっかり悪目立ちしていた。

（ひこにゃん、許すまじ……ッ）

　あとで絶対に後悔させてやる、と胸に誓うものの、今となっては街の全てが追っ手と言っても過言ではない栞凪は、逃げるだけで精一杯である。それでも紫乃を探さなければ、とあちらこちらを走り回るので、ますます注目を集める一方で。
　今もまた、向こうから豆腐を売りながら歩いてきたかなえが、見知らぬ制服の女の子が逃げ回っている、と聞いてリヤカーを押しながらやってきた。

「ここら辺で、違う制服着た女の子が走り回っとる、って聞いたけど……あれかなぁ？　おーい、紫乃センパーイ！」
「だから！　確かに寝子高の制服じゃないけど！　セーラー服着てるけど！　私じゃないんだってば！」
「紫乃センパイ、そないに怒って、お腹減ってるんちゃう？　豆腐ドーナツで良かったら食べるー？」
「話を聞いて！？」
「カンナ、出頭を……ッ！　ちょうどいい、そこのカナエちゃん、カンナを捕まえてくれ！　きっちり更正を促すのは友の務めだッ！」
「お前は黙れ～ッ！」
「ん、センパイ捕まえればええのんー？」

　見事にカオスになっている事態を、結局三夜湖まで行っても紫乃に会わなかった為、走りながら寝子島神社の裏まで降りてきた真央が、うや？　と見つめて大きく首を傾げる。どうやら紫乃は無事に、寝子高生によって保護されたらしい事はねこったーで解ったので、買い食いしてから猫鳴館に戻ろうと思っていたのだ。
　が、ここではまだ紫乃を探しているらしい。うーん、と考えた真央は、もう一度ねこったーを見て、おーい、と声をかけた。

「紫乃ちゃんセンパイは無事に学校に着いたらしいのだ。真央ちゃんは参道商店街で買い食いするのだ。豆腐ドーナツは美味しいのだ？」
「めっちゃ美味しいでー♪　おおきにー♪」
「志鳥さん見つかったんだ？　良かったー」
「え、志鳥さん？　何の話？」

　にぱー、とリヤカーから豆腐ドーナツを出したかなえと、ありがとなのだー、と早速食べ始めた真央の前で、栞凪と信彦がそう叫んだ。そうして次には、栞凪が信彦を追い回し、そんな栞凪から信彦が逃げ回る光景が見られたのだが――それはまた、別のお話である。

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あとがき

担当マスター：蓮華・水無月
ファンレターはマスターページから！

こんにちわ、水無月　深凪でございます。
このたびはご参加頂きまして、本当にありがとうございました。

皆様のとても楽しいアクションに、執筆しております水無月もその光景が目に浮かぶようで、非常に楽しく書かせて頂きました（笑
迷子のお嬢さんも無事に発見され、どうやら無事に寝子島高校の一員となることが出来そうです。

お届けさせて頂きましたリアクションが、皆様に僅かなりとも楽しんで頂ける物であれば、心から嬉しく思います。
またのご縁がございましたら、どうぞ宜しくお願いいたします（深々と

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