フラッシュ・モブやろうぜ！｜リアクション

フラッシュ・モブやろうぜ！

♪Oh yay 寝子饅頭
個性派パッケージ寝子饅頭
俺までサンマ色に染まっちまうぜ
「このサンマは…期間限定だってぇ！？」
寝子島発寝子饅頭
今ならただで食えるってよ！
「ほらお前もこっち来いよ！」
Oh yay 寝子饅頭
もっと食べたいならおみやげ屋さんへ
寝子島人もおやつにどうぞ
1家に1つ寝子饅頭
Oh yay 寝子饅頭

「ねえ、おじちゃん大丈夫？」
「全然大丈……ぶだあ」
　最初のように瑠樹と一緒に踊っている鴻は、ノックアウト寸前だ。
「どこぞのコメディアンみたいな喋り方になってるわよ」
「まだまだ序の口だぜえ」
「ふふ、楽しいですねえ」
　翠響と弓弦がそんなふたりをほほ笑ましく眺めていた。
　スキップで息が切れ切れのあやめを励ますのは、まだまだ体力の有り余っている真央だ。
「それにしても、こんなに……多くの人に集まって、貰えるとは……嬉しいぜ……！」
「そうなのだ、だからもうちょっとがんばるのだ！　褌パワーお裾分けなのだ！」
　謎の褌パワーを注入されながら頑張るあやめ。
　その足元ににゃんにゃん集まる猫たちを、刀は不思議そうに見ていた。
「しかしなんだこの猫の数、14匹どころじゃないぞ……どことなく焼き魚臭いし」
「それはサンマの臭いか？」
「確かに云われてみればサンマの匂いかも」
「俺の匂いはなかなかのもんだろ？」
「まあ食欲をそそられる匂いではある……え、俺の匂い？」
　ぱっと後ろを向くと、そこには見慣れたサンマさんの着ぐるみがいた。しかし、褌をつけている訳ではない。
　美脚でもなければギターを掻き鳴らしているわけでもない。
　スキップしているわけでも、足元が覚束ないわけでもない。
　刀には無表情の筈の着ぐるみの着ぐるみが、不敵に笑った気がした。

「さ、さささサンマさん！？」

　その声に、みんなの視線が一斉に集中する。
「ほ、……本人です……か？」
　あやめの言葉に、その着ぐるみは大きく頷いた。
「お疲れさん、お前らよくやったぜ！」
　突然のことに呆然とする全員をよそに、サンマさんは自前のマイクを片手に颯爽と観客の前へ出てゆく。
「そう、何を隠そう、今回の企画は俺が発案だ！　寝子島饅頭食った奴！　帰りにひと箱買ってけよ！　駅の売店にも売ってるからな！」
「それはあまりにも横暴じゃない？」
　翠響の冷たい視線にもめげないサンマさんは、観客と握手をしつつ人の間を歩き回った。
　そんな姿にうっとりと見惚れている弓弦は両手で頬を覆った。
「ああ、サンマさんは思考までユニークなのね」
　それならまだいい方で、あやめなどはもう地べたにひれ伏している。
「サンマさんさん…！それを、寝子饅頭を食べれば、僕…オレもあなたみたいになれるんですね！」
　興奮のあまり「さん」が重複しているが、もはやそれにツッコむ人もいない。
　ひとしきり周囲の目と話題をかっさらったあと、サンマさんは前であたふたしていたメンバーを指差した。
「おお、そうだそうだ。あそこにいる奴らは俺の命を受け企画を実行してくれた素晴らしい奴らだ！　みんな、拍手で激励してやってくれ！」
　割れんばかりの拍手に包まれ、8人はこそばゆい思いで礼をする。
　それはフラッシュ・モブが無事に終わったことを指していた。

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