ダイナミック・ザ・フツウ｜リアクション

ダイナミック・ザ・フツウ

●●●ダイナミック・ザ・フタリノリ●●●
　修がオフロードを堪能しているとき、急にバイクの重みが増す。
　そして、後ろには暖かな感覚。

「修ちゃん、バイクの練習なのだ？」
「後木か？　ヘルメットはしてるだろうな」
「してないのだ！　今日は映画みたいだから大丈夫なのだ！」

　バイクの後ろに飛び乗ったのは真央だった。
　今日がダイナミックになっていることに気が付いている2人は普段と変わらぬ挨拶を交わす。
　ヘルメットをしていないと聞いた修はバイクを止める。

「なら2人乗りはだめだろう」
「えー。分かったのだ」
「今日は不思議な日のようだからと油断していると痛い目を見る」

　あらかじめヘルメットを借りてきていた真央は仕方ないとかぶる。
　万が一を常に気にかける修はヘルメットを付けたことを確認し、頷く。
　そして真央を乗せてまたオフロードを走り始める。

「修ちゃん、運転上手なのに練習が必要なのだ？」
「あぁ、何もしなければ腕は鈍るからな」
「なるほどなのだ」

　談笑をしながら走行するのは存外に難しいことなのだが、意識せずとも行なえている。
　それどころか、広い場所でぎりぎり足が地面に付かないほどにバイクを傾けて円を作るように走る。
　縁を作り終わったと思ったら後輪だけで前進するパフォーマンスを見せ、真央の背が地に着きそうになる。

「おお～！　修ちゃんすごいのだ！」

　真央には刺激的のようで歓声をあげる。
　パフォーマンスとしても魅せられるほどの運転能力を遺憾なく発揮した修は満足してバイクを返却した。

「いや～楽しかったのだ～」
「それは何よりだ」

　バイクを堪能した2人は一緒に『スポーツランドＮＹＡＧＯ』を後にした。
　普通自動二輪の試験まであと少しだな、と意気込む修。
　次はどこに行こう、と思案していた真央は九夜山に目を付けた。

●●●ダイナミック・ザ・エイガ●●●
　森羅万象、事象があれば原因はある。
　今回ダイナミックな普通になった事に対して原因はあるはずだ。
　気が付いた者の中にそう考えるものは少なくない。

「凄い風圧だ！　にゃーくん大丈夫！？」

　映画のような現象だと思った桜庭円は茶トラの子猫、にゃーくんと共に映画館に向かっていた。
　円は電車の上にへばりついて、にゃーくんはその円の肩に掴まって。
　なぜか、と問われれば移動のため、電車の上で？と問われれば経費削減のため、と。

「み、見えた！　シーサイドアウトレット！」

　叫んだ円はにゃーくんと一緒にジャンプする。
　そこに運良く止まっていたトラックの上に乗ることが出来た。
　1人と1匹が乗った時、映画館を通るルートで走行するトラック。

「上映時間には間に合いそうだね！」

　せっかく映画館に行くのであれば1本ぐらいみた方がお得という物だろう。
　嬉しそうに鳴くにゃーくんに微笑む円。
　おかしいのはトラックの上だというぐらいだろうか。

　程なくして映画館が見えてきた。
　とう、と小さくかけ声をかけ、にゃーくんを守りながら受け身を駆使する円。
　急いで入った映画館では洋画の特集を行なっていたようだ。

「経験になったかも。アメリカンなノリは結構好き」

　結末まで見届けた円とにゃーくん。
　にゃーくんもしっぽを立たせて頷いているように見える。
　原因を探すというより、映画を楽しんでしまったがこれはこれでいいものだと思う。

「次は映画村…に行ってみよう、原因の元があればいいけど」

　にゃーくんと目線をあわせて話しかける円。
　わかった、というように円の肩に乗るにゃーくん。
　満足そうに再び歩みだした時に、違和感を感じた。

「ってえぇぇぇ、マンホールがあいてたぁぁぁ！？」

　その先に待っていた開いたマンホールに吸い込まれる1人と1匹。
　悲鳴は不思議と辺りに響いたという。

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