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本日限り！ なりきりチャンバラ劇団公演です
【三幕】 裏長屋 ⇔ めし屋 （千代、新米岡っ引き、猫太郎、小町）
「嫌、嫌でございます！ 何をなさるのです！！」
翌日、ごろつきが数人、長屋の傘職人・胴三郎の住まいを襲った。
腰高障子を蹴破り、土間を荒らし、縁の欠けた水瓶を叩き割る。
「父上！」
父手作りの赤い唐傘を抱きしめ、ごろつきにか弱く抗う千代。
そこへ偶然、新米岡っ引きが通りかかった。
（あれは傘屋の千代さんじゃ……って、あぁっ千代さんが連れて行かれちゃうよ！）
乱暴に千代の細腕を捕えた一行の前に、勇気を振り絞り立ち塞がった。
懐の十手は勇気の……肝を冷やす鉛にしか思えないが。
「ふ、ふてー野郎ですねー！ い、いけないと思いますよ。そういうの……」
「ぁあん？」
まるで虎に睨まれた兎。
新米は飛びあがった。
「ひぃっごめんなさいごめんなさい、偉そうなこと喋ってすいません～！」
泣きながら逃げた。
訝る客の眼も意に介せず、地べたを転がり飛び込んだのは、再びめし屋。
「す、すいません～！ 傘屋さんのとこの千代さんが……千代さんが……！」
連れ去られましたー！
町の荒事をおさめるのが岡っ引きだが、新米は腕っぷしも度胸もない。
「誰か助けてください～！」
新米は号泣して、今日も安穏と店に入り浸っていた猫太郎の膝にしがみついた。
千代が危ない。
「何の騒ぎ？」と奥から顔を出した小町に、うっかり飯代も払わず、猫太郎は店を飛び出した。
「ちょっと猫太郎さん、お勘定は？！」
裏長屋へ一人で辿り着いた時には、父親は倒れ、千代は連れ去られた後。
八方塞で立ち尽くす猫太郎に、千代は代官屋敷に連れて行かれたのだと腹笑屋が現れて教えた。
「冠部様は千代さんにご執心でしてね。私が人を雇い、手引きをしてさしあげました」
「── 貴様？！」
胸倉を掴もうとしたが、腹笑屋にかわされた。
「おやおや。侍一人で正義の味方気どりですか」
冠部様には、あの辻斬りや手下が沢山居ると云うのに、無謀な正義もあったモンです。
「相手が誰であれ、俺は可哀想な娘さんを放ってはおけないよ」
でしょうとも。 腹笑屋は頷いた。
「では、この情報には金を頂きますよ」
「何故、俺が。──って、高いよ？！」
有り金全て取られた猫太郎は、「げ、解せぬ……」これで飯代は支払えなくなったと密かに項垂れる。
通り路に戻ると、小町とばったり遭遇したが、走って振りきった。
「ちょっと、なんなの！ 猫太郎さぁんーっ」
「すまぬ！ 訳は後で！ このツケは必ず！」
こ、こんの──っ、無銭飲食ザムライ───ッッ！！
小町の絶叫が猫太郎の背後で、にゃん戸の町中に木霊した。
【四幕】 或る路地 （辻斬り、お銀、猫太郎侍）
夕闇が町を覆い始めた。
人影二つ。
女狐のお銀と辻斬り。
「今日も獲物をお探しかい。浪人サン……♪」
「女……か。去れ」
不意に声を掛けて来たお銀に、辻斬りの全身がぴりりと警戒した。初対面の筈が、妖にも似た匂いに、何やら因縁めいたものを感じる。
しかし、興味を失ったように歩を進めると、お銀は、その背中に嘯いた。
「もうすぐ、向こうから代官に攫われた娘を助けに、一人の侍が来る。ちょいと粋な男でね。名を猫太郎……と、云ったかねぇ」
足が止まった。
「猫……何だ、と？」
振りむく鬼面の眼に殺気が宿った。
ふふふ。
女の忍び笑いは惑わすように響き、月が雲隠れした間に姿を消した。
残るは東風。
辻斬りに染みつく血の匂いも攫うかのように吹いてた。
やがて、浅葱の着流しの侍が現れた。
遠い昔に見たような風貌に、鬼面の記憶がギシリと歪んだ。
──鬼面の辻斬り……代官の手の者か。
──猫……尾猫……。
月明かりの下で、互いの只ならぬ殺気をぶつけ合い、通す通さないの問答の末。
鬼面の初手の一刀。
「猫太郎侍……参る！」
白刃の光が間合いに入るや否や、猫太郎は抜いた刀で受け流した。
静かに刀を構え、敵の視線、肩や爪先、重心の流れを読み、二刀目を潰すように踏み込む。
猫太郎の袈裟斬りを鬼面は体を弓形に後ろに反り、そのまま地に落ちる筈の背は、自ら肩越しに地に突き刺した刀で宙に浮く。刹那に、上へ鋭い蹴りを放った反動で身を回転させ立て直す鬼面。
「俺の一刀で落ちなかったとは……な」
更に敵を刈らんとする横一閃を、猫太郎は刀で跳ねあげ、上方に逸れた鬼面の腕と胸の隙間に鋒を突き入れた。
「急所は外した」
「敵に情けを掛けられるなど……か、はっ」
鬼面の辻斬りは膝を崩し、胸を押さえて血を吐く。
「行け……お前達が倒すべき悪……代官はこの先だ……」
「お主の名は」
「名など…無い。我は修羅……いずれ地獄から舞い戻り猫太郎侍……貴様を倒す……今はお前の義を果たせ」
立ち上がり、よろめいて去る辻斬りの背を猫太郎は見つめる。
「この国に、悪の根は蔓延りつつある。いずれ全てを断たねばならぬが……」
今は未だ……。
まずは代官と云う一つの悪を摘まねばならぬ。
「嫌、嫌でございます！ 何をなさるのです！！」
翌日、ごろつきが数人、長屋の傘職人・胴三郎の住まいを襲った。
腰高障子を蹴破り、土間を荒らし、縁の欠けた水瓶を叩き割る。
「父上！」
父手作りの赤い唐傘を抱きしめ、ごろつきにか弱く抗う千代。
そこへ偶然、新米岡っ引きが通りかかった。
（あれは傘屋の千代さんじゃ……って、あぁっ千代さんが連れて行かれちゃうよ！）
乱暴に千代の細腕を捕えた一行の前に、勇気を振り絞り立ち塞がった。
懐の十手は勇気の……肝を冷やす鉛にしか思えないが。
「ふ、ふてー野郎ですねー！ い、いけないと思いますよ。そういうの……」
「ぁあん？」
まるで虎に睨まれた兎。
新米は飛びあがった。
「ひぃっごめんなさいごめんなさい、偉そうなこと喋ってすいません～！」
泣きながら逃げた。
訝る客の眼も意に介せず、地べたを転がり飛び込んだのは、再びめし屋。
「す、すいません～！ 傘屋さんのとこの千代さんが……千代さんが……！」
連れ去られましたー！
町の荒事をおさめるのが岡っ引きだが、新米は腕っぷしも度胸もない。
「誰か助けてください～！」
新米は号泣して、今日も安穏と店に入り浸っていた猫太郎の膝にしがみついた。
千代が危ない。
「何の騒ぎ？」と奥から顔を出した小町に、うっかり飯代も払わず、猫太郎は店を飛び出した。
「ちょっと猫太郎さん、お勘定は？！」
裏長屋へ一人で辿り着いた時には、父親は倒れ、千代は連れ去られた後。
八方塞で立ち尽くす猫太郎に、千代は代官屋敷に連れて行かれたのだと腹笑屋が現れて教えた。
「冠部様は千代さんにご執心でしてね。私が人を雇い、手引きをしてさしあげました」
「── 貴様？！」
胸倉を掴もうとしたが、腹笑屋にかわされた。
「おやおや。侍一人で正義の味方気どりですか」
冠部様には、あの辻斬りや手下が沢山居ると云うのに、無謀な正義もあったモンです。
「相手が誰であれ、俺は可哀想な娘さんを放ってはおけないよ」
でしょうとも。 腹笑屋は頷いた。
「では、この情報には金を頂きますよ」
「何故、俺が。──って、高いよ？！」
有り金全て取られた猫太郎は、「げ、解せぬ……」これで飯代は支払えなくなったと密かに項垂れる。
通り路に戻ると、小町とばったり遭遇したが、走って振りきった。
「ちょっと、なんなの！ 猫太郎さぁんーっ」
「すまぬ！ 訳は後で！ このツケは必ず！」
こ、こんの──っ、無銭飲食ザムライ───ッッ！！
小町の絶叫が猫太郎の背後で、にゃん戸の町中に木霊した。
【四幕】 或る路地 （辻斬り、お銀、猫太郎侍）
夕闇が町を覆い始めた。
人影二つ。
女狐のお銀と辻斬り。
「今日も獲物をお探しかい。浪人サン……♪」
「女……か。去れ」
不意に声を掛けて来たお銀に、辻斬りの全身がぴりりと警戒した。初対面の筈が、妖にも似た匂いに、何やら因縁めいたものを感じる。
しかし、興味を失ったように歩を進めると、お銀は、その背中に嘯いた。
「もうすぐ、向こうから代官に攫われた娘を助けに、一人の侍が来る。ちょいと粋な男でね。名を猫太郎……と、云ったかねぇ」
足が止まった。
「猫……何だ、と？」
振りむく鬼面の眼に殺気が宿った。
ふふふ。
女の忍び笑いは惑わすように響き、月が雲隠れした間に姿を消した。
残るは東風。
辻斬りに染みつく血の匂いも攫うかのように吹いてた。
やがて、浅葱の着流しの侍が現れた。
遠い昔に見たような風貌に、鬼面の記憶がギシリと歪んだ。
──鬼面の辻斬り……代官の手の者か。
──猫……尾猫……。
月明かりの下で、互いの只ならぬ殺気をぶつけ合い、通す通さないの問答の末。
鬼面の初手の一刀。
「猫太郎侍……参る！」
白刃の光が間合いに入るや否や、猫太郎は抜いた刀で受け流した。
静かに刀を構え、敵の視線、肩や爪先、重心の流れを読み、二刀目を潰すように踏み込む。
猫太郎の袈裟斬りを鬼面は体を弓形に後ろに反り、そのまま地に落ちる筈の背は、自ら肩越しに地に突き刺した刀で宙に浮く。刹那に、上へ鋭い蹴りを放った反動で身を回転させ立て直す鬼面。
「俺の一刀で落ちなかったとは……な」
更に敵を刈らんとする横一閃を、猫太郎は刀で跳ねあげ、上方に逸れた鬼面の腕と胸の隙間に鋒を突き入れた。
「急所は外した」
「敵に情けを掛けられるなど……か、はっ」
鬼面の辻斬りは膝を崩し、胸を押さえて血を吐く。
「行け……お前達が倒すべき悪……代官はこの先だ……」
「お主の名は」
「名など…無い。我は修羅……いずれ地獄から舞い戻り猫太郎侍……貴様を倒す……今はお前の義を果たせ」
立ち上がり、よろめいて去る辻斬りの背を猫太郎は見つめる。
「この国に、悪の根は蔓延りつつある。いずれ全てを断たねばならぬが……」
今は未だ……。
まずは代官と云う一つの悪を摘まねばならぬ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年04月02日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年04月09日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年04月09日 11時00分
