●ヘイ、らっしゃい!!
「このわし等に侍やれやなんてなー。びっくりするわー」
老舗寿司屋『源寿司』の息子・
山路 源太郎は、キュートな(ケツ)顎を撫でながら、思案に暮れる。
親父の手伝い半分、店の隅で寝子高の友人達に手ずから握り寿司を振舞っている所に、1人の男が尋ねて来た。
寝子島映画村事務所所属の『尾猫(おねこ)座』団長・通称、庄次郎親方と呼ばれるその人だ。
岩石の如く、いかつい強面ながら人を信頼させる誠実さが伺える。
店に入るなり、カウンターを挟んで談笑していた源太郎達に「おめぇさん等、時代劇の舞台に興味はねぇか」と話を持ちかけて来た次第。
◇
毎年、寝子島映画村では、本土の某町老人会御一行様が観光で訪れ、小劇場の舞台劇を観劇する事が恒例となっている。ところが、あいにく今年の尾猫座は舞台演目にふさわしい花形役者が揃わなくて困っていた。
地方の小劇団より都会へと、若手が流れたからである。
「残った仲間内で話し合ってな。今年は趣向を変えて、高校生ボランティアの寸劇舞台を披露したらどうでぃって事になったのよ」
おめえぇさん等、寝子高生の粋な活躍は、ねここテレビや噂で知っている。
大人顔負けの度胸もいっぱし。若くてみなぎる活力。
こいつぁ天の助けじゃねぇかと思ったねぇ。
自分達で衣装を借り、化粧をし、役者になりきって寸劇舞台に花を飾る。
「演目は時代劇の花形、王道の勧善懲悪、
『成敗! 闇を斬る!(仮)』」
「ヤマは剣戟で、舞台の決着をつけるトコみたいやなー」
「お。大将の息子さんは落語、歌舞伎を趣味にしてるだけあって飲み込みが早ぇ。まさに、チャンバラ劇な訳よ」
梗概紙(あらすじ)に眼を通す源太郎に、親方は嬉しそうに云った。
「どうか、ご長寿様方を楽しませてぇと思っちゃくれぇねぇかい?」
「そりゃあ……毎年、ご長寿様方が観劇を楽しみに、はるばる本土からお越し下さるんは、わしもよぅ判る。
今年は劇を観る事が叶わんとなりゃ、どんだけ哀しむやろ……」
出来る事なら、力になりたんやけど……人が集まるかどうか。源太郎は唸る。
フツウに考えれば、男役は男。女役は女。役に合った人材を見つけるのも至難の技だ。
「おぅおう。それは気にするなぃ。男があどけねぇ小娘役やったっていいんだ。逆も然りよぅ」
重要なのは、舞台では
役になりきる事だ。
「ご長寿様に夢を見せるんだ。チャンバラ劇という舞台の夢をな」
庄次郎親方の眼は真剣だ。
◇
「勿論。ボランティアと云えど、ほんの気持ち程度のバイト代。それから源寿司の大将に打ち上げ会用の特上全員分、握って貰うよう頼まぁ。俺の財布を絞り取って行けぃ。舞台上映会もやって、裏話を肴に、最後は、パァっと騒いでくれぃ!」
「そら、眼ん玉飛び出る大盤振る舞いやないかー」
ガタっ。
店内の席を一斉に立つ音が鳴り響いた。
親方は鋭い眼光で、立ち上がった寝子高生一人一人の高揚した顔を覗き込んで、声を掛けていく。
── おめぇさんは白い鉢巻似合って、なかなか面構えがぁいい。
── そっちの姉ちゃんは金に眼がねぇ商人役はどうでぃ。
── ひょろい兄さんは機転が利きそうだ。
……不思議だ。耳に入って来る親方の言葉には、心地よい力強さがある。
空気と水を飲み込むように、ごく自然の事に役になりきれると思えてしまうのだ。
出来る。出来るぞ!
自信が沸いて来る。
寝子高生、1日限り! なりきりチャンバラ劇団の団員だ──ッ!
「そうと決まりゃ、まずは皆で、『なりきり役』と『筋書き』を考える所から始めたらええんやないかー」
源太郎は額に巻いたねじり鉢巻を締め直し、店内の活気を見回して笑った。
こんにちは。
第2作目は山路 源太郎さんに、ご登場頂きました。
いぶし銀、有難うございます。
目 的:ご長寿様方に、ご満足して頂こう
ルール:全員、決めた役を最後迄、なりきって演じきります。
裏方の募集はありません。
(強制的に舞台へ放り込みますので、くれぐれもご注意ください)
出演出来る役は一つのみになります。
補 足:もれいび、神魂の事件ではありません。
【ろっこん使用について】
観衆と記録媒体機が見ておりますので、ご利用は計画的に。
演出効果は尾猫座の方に、ご協力頂けます。(血糊もお任せあれ)
【リアクション構成】
冒頭に配役表を表示し、劇中の物語を公開した後、打ち上げ会をします。
(※作中の名前表記は、一貫して、皆様がご自分で決めた「役名」です)
【アクションについて】
必ず希望の役を記入して下さい。
題名募集中です。親方のピュアハートを射止めた案が採用されます。
配役は自分の好みで決めましょう。
ご相談されても良いですし、誰かと役が被ってもOK。
例えば、殿様役が何人もいれば「影武者A」「影武者B」に転じる事も可能です。
不可欠な空いた役は、さくっとモブさんが入ります。
女装も男装も、体格も美醜も問いません 役になりきればOK。
【打ち上げ会】
感想や舞台裏を軽く話題にしつつ、劇中から自分達の日常へと戻る過程を和やかに描写出来たらと思います。
それで、おしまい。
見事な演技でMVPを取った方には、皆さんで胴上げするのもいいですね。
【ご長寿様方の情報】
人生もうちょっとで一世紀。往生する迄、ピュアハート。
とても寸劇舞台を楽しみにしていらっしゃいます。
だって、この日を楽しみに長生きしていらっしゃるんだもの。
『成敗! 闇を斬る!(仮)』
※物語も配役も、お好きなように変更して下さい。
※皆様のアクションで物語の展開と結末が変わります。
■ 物語の雛形
夜な夜な現れる鬼面の辻斬りの噂。
嫌疑を掛けられた傘売り浪人親子を助けるべく猫太郎侍が暗躍する。
市井の偵察。協力してくれる町人。誰が味方で、誰が敵か。
やがて浮上して来る悪代官と悪徳商人のカラクリ。
暴いてみせるぜ正義の刀の下に。
(見せ場)
「世間を揺るがす悪党どもを、天に代わって成敗致す!」
「何をこしゃくな! やっちめぇ! 野郎ども!」
「「おー!」」
侍も娘も武器を取れ。
ちゃんちゃんばらばら。
見事、悪代官達を打ち倒し、市井に平和が訪れる、のか。
■ 配役
□猫太郎侍(実は殿) □猫太郎侍のお庭番・風早
□鬼面の辻斬り・狩野兵臓 □悪徳商人・腹笑屋
□悪代官・冠部骨衛門 □めし屋の看板娘・小町
□傘売り浪人・胴三郎 □胴三郎の長屋隣人・占い家業の常葉
□頼りになる岡っ引・爪吾郎 □胴三郎の孝行娘・千代
【ゆるめな点】
・なんちゃってチャンバラ劇です。(武器は和物のみ可。刀、拳、箒、盥……)
何だかんだともつれ込んでも、最後は皆一斉(任意)に参加して、ちゃんちゃんばらばらやって
決着をつけるパターンかと思います。
・時代劇風味の体裁を守る為、現代用語は、時代劇風味に全て変換されますが、
細かい時代考証は気にしなくてOKです。