もれいびになれたなら｜リアクション

もれいびになれたなら

●ブログに綴った思い

「最近は、ねこったーが流行かもしれへんけどウチはまだまだブログ派や」
　今日のネタはこれ！　とマリベル・ロイスは、学校帰りに立ち寄った少しお洒落なカフェで今日一日あった出来事をブログに書くことに。
「ええ雰囲気やった、ケーキも美味しかった、ごっつ楽しかったわー」
　忘れないうちに……と書こうとするが、ふと「ろっこん」という単語を思い出す。
（そういえば、クラスの子や校内で、ろっこん、ちゅうモンの噂話を聞いたなあ。カフェの話題でもあったし。何なんやろ？）
　友達のひとりが噂話が大好きで、ろっこんの話を持ち出した。ろっこんは魔法や超能力の類なのだとか。

　ろっこん。不思議な力、何でも出来る力。
　それは寝子島に住んでいる人の中に眠っていて、まだ目覚めていないのかもしれない。
　不思議な事件をろっこんで解決。そのような出来事は、御伽噺か小説みたいなものなのだろうか。
　そんなことを、ブログを書く前にちょっと考える。
　今まで自分のみに起きたろっこん絡みの事件はいくつかあったが、すべては夢を見ていたものだと彼女は思っている。
「ろっこんかあ。超能力みたいなもん、ちゅう噂やったな。ウチも使えたらなあ」
　マリベルも、ろっこんですごいことができたらなあと思う時が。
「でも、ウチまだ高校生やし。怪力で何でもできるろっこん使うて、誤って物壊して弁償！　っちゅうことになったらどないしよ……」
　音楽専攻でティンパニを専門にしているので、考えたろっこんはティンパニを運ぶのに丁度いいと思ったが、壊してしまっては大変だ。
（ろっこんで弁償せえ！　な騒動になってもうたら、ウチなんもでけへん……どないしたらええねん？）
　力に対する責任とかはまったく駄目やなあ……と少し落ち込んでいるうちに、ブログに書こうとしていたお洒落なカフェでの出来事を忘れてしまった。
「あ！　ろっこん話ネタにできるなあ。ウチが考えた超能力、ちゅうカンジで。じゃあ……」
　忘れないうちに、とマリベルはブログを書き出す。その日のブログには、こう書かれていた。

　タイトル：もし超能力が使えたら！

　皆はどんな力がいいと思う？
　マリィ（マリベルのハンドルネーム）は、皆が平和だなあって気分にさせる力がいいな！
　笑顔で、毎日楽しく過ごせる。それが一番の平和だと思わない？
　こういうのがあったら、マリィ、さっそく使ってみたいな！

「ふふ、どうやろこれ。たまには、こういうネタもええな。日常的なモンだけじゃおもろない」
　一旦止めていた手を動かし、マリベルはノリノリでブログを書き続けた。
　書き終えると、七夕ゆかた祭りのことをふと思い出した。
　寝子高１年６人組で、いろいろな屋台を回って食べ歩きをしたり、金魚すくいとかして遊んだりした。
「こういうのも平和やな。争い事がなく、皆が笑顔で過ごせるのが一番ええんや」

　翌日。そのブログに「僕、私はこういう超能力が使いたいです！」といったコメンントが寄せられた。
「皆もウチとおんなじようなこと考えとるんやな。ウチだけでなくてホッとしたわ」
　世界が平和になるろっこんを使えるようになりたい、というコメントに共感したマリベル。
　感謝の気持ちを今すぐ伝えたい。その思いを込め、すべてのコメントに対する返事をブログを書き始めた。

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