ウレシハズカシ男子会｜リアクション

ウレシハズカシ男子会

　ＢＯＸトークも終盤、続いてのお題は『ひんぬー派？　きょぬー派？』だ。
　年頃の男子が集まれば、自然と花咲く永遠の命題に、ええお題や、と感慨深く剛は頷いた。
「いやあ、思春期、青春よきかなよきかな〜」
「……ところで、服部先輩」
　昌也はふと、先ほどから剛の手にある雑誌が気になった。
　さっきから雑誌を読みながら、質問に答えているようだが、よく見るとこの雑誌……。
「……ん？　ああ、これか？　ちょうどええわ、今胸の話やろ？」
　剛は雑誌を開いて、皆の前に差し出す。
「どういのがええ？　ちなみに剛さん的には健康的なほうが好きやな☆」
「こ、これは……！！」
「所謂……健全な男子のバイブルやな！」
　それは男子にとっての永遠のロマンの本……略してエロ本！
「こんなんさっきから素知らぬ顔で読んでたんすか！？」
「はっはっは、驚いたか！　剛さんはエロ本を真顔で読むスキルを習得済みやねん。さ、ほら、選びや……？」
　菩薩の表情の剛に、刀は鼻息荒く食いついた。
「聖書？　性書？　非常に、ヒッジョーに興味があります、先輩！　是非見せてください、先輩！！」
「御剣君、鼻息が熱いよ……」
　蒸気機関車の如く漏れだす熱い鼻息に、顔をしかめる寝太郎。
　しかし、こんなに肌色の本を前に落ち着けなんて、酷なことである。
「やっぱり、俺はこういうのが……。胸の大きさは……大きいほうにイロイロと魅力を感じますハイ」
「ま、まぁ大きいほうが、夢はある……よね」
　寝太郎も静かに同意の頷き。
「大は小を兼ねるとも言うしなー……ん？　ちょ、何顔を背けとるんや、桐野もほら選びや？」
「！　ま、待て、その雑誌を俺に近づけるな……！」
「……へ？　わわっ！？　誰かちり紙持ってきて！　桐野、鼻血噴いとる！」
　健全純情な高校生の正也には、ヌード写真はあまりにも刺激が強すぎた。
　とは言え、そこは男の子、顔を真っ赤にして、ティッシュを鼻に詰めながらも、エロ本は気になる様子。
　エロ本をちらちら見ながら「俺は、まぁ、やっぱ弾力があるほうが、な……」と頑張って答えた。
「桐野もきょぬーかぁ、圧倒的の多数のきょぬー派やな！」
「巨乳巨乳ってバカのひとつ覚えみたいに……わかってないぜ、君達！」
　嘆かわしいな、とばかりに肩をすくめる竜司。
「胸に貴賤なし！　巨乳、貧乳……ひっくるめて、おっぱいという概念を愛でてこそ、男の中の男だろがいッ！」
　訳：どっちも好きです。
「ええで、冴木……その熱さ、嫌いじゃあらへんで！」
「だろ！」
「けど、一言言わしてもらえれば……俺的には着とらんより着とるほうがエロいッ！！」
「！！！！！」
「乙女の胸はロマンや！　ロマンにはイマジネーションが必要や！　あの服の下の胸はどんなんかな、こんなんかな、と想像するのがサイッコーにエロいんやで！　隠された胸、そこに地球最後の冒険の舞台があるんとちゃうんかい！！」
「服部先輩、アツいっす……！！」
「ロマンありますハイ！！」
　昌也と刀の羨望の眼差しに、よせやい、俺はただの一般的健全な男子やで、と剛は不敵に笑う。
　しかし、大いに盛り上がる男子会だが、武道と庚、はちょっと冷めた態度だった。
「ひんぬーきょにゅーは、こだわりないかなぁ……」
「俺もあんま拘らねぇです」
　別に……と興味無さげに振る舞う庚だが……。
　——実は、彼女が巨乳だなんて言ったら、イジリ倒されちまうな、これ……。
　冷めた表情の下で、内心戦々恐々だったのは、ここだけの秘密だ。
「なんや、お前ら。３時間は喋れるお題なのに、テンション低いんとちゃう？」
「……胸の大小に興味はない、外見より中身だよ」
　エロ本に群がる男子に呆れた様子で修は言う。
「胸なんてどうでもいいから、俺は優しい子がいいな。あと、話してて楽しい子、明るくて周りまで幸せにしてくれるようなさ。頭の出来は気にならない。わからなきゃ俺が教えるし……」
　修は窓辺に立ち、夕日が沈み行く校庭を見つめた。
「俺だって方程式でできてるわけじゃない。女の子にそんな普通の夢を見る」
　差し込むオレンジの光が、彼の白い肌を明るく染める。
「そんな理想の子が傍にいてくれたら、胸の大小なんて気にならな……」
「服部先輩、次のページ！　次のページが見たいっす！」
「ははは、そう焦るな。まだ冴木が見とるんやから」
「ああ、悪いな、御剣。そのロリ顔巨乳の子のグラビアを目に焼き付けるまで待ってくれ」
「……………………」
　修は遠い目で夕焼け空を見上げた。
「次のお題、行こうか……」

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