天使のたまご｜リアクション

天使のたまご

●合流

「の、のう、ちょっと？　おぬしにはおぬしで、なんか事情があるんじゃろうが、ひとまずここは帰って、　また出直してもらえんか？」
　平蔵はたまらず蓮太郎に言う。
　蓮太郎は花火を抱いて、平蔵に赤ん坊に対するミルクの与え方を講義している途中であった。
「事情って……俺は、あなたをどうしても放ってはおけないだけですよ。放っておいて下手すれば、世界で一人ぼっちになってしまう気がするから」
　そっと目を伏せ、蓮太郎は呟く。
「どうすれば話が通じるんかのう……」
　平蔵は頭を抱えた。
「ねえ、間違いだったらゴメンネ。もしかして、平蔵さん、久子さんの為に何かしようとしてるの？　手に泥がついてた、っていうのも、何かを作ろうとしていたとか？」
　円がたまらず、直截に語りかける。
「ど、泥？！　う、うむ。それは……」
　平蔵が言い淀んでいると、
「こんにちはー、その子が花子ちゃんですか？」
　にこやかに梢が現れた。
　悠、小路も一緒である。
「や、屋敷野さん、あれは赤ちゃんじゃなくって、花火ですよ！　……えーっと、い、今はろっこんも使ってないみたいですし……」
　悠は、念のため右目を掌で覆い、『嘱目する実正』で花火玉を見て確認しながら言った。
「そうです！　おじいさんは、自覚もあります！　さっき言ったのですっ！」
　小路も悠に同調するが、
「えー？　どう見ても子どもじゃないですかー！」
　と嘯き、取りあわない。
　梢としては、どうも大した理由もなさそうだし、さっさと花火玉を蝶にして回収したいという風に気持ちが傾いてきている。
　この発言は、この場にいる全員を油断させる、という意味合いを持っていた。
（また、変な人来た……）
　湊面は多少呆れながらそう思っていた。
　これ以上混乱するともっと面倒くさくなるな、と湊面は考えていたのだが、ここからさらに事態は混乱し面倒くさくなるのである。