雨上がりの屋上｜リアクション

雨上がりの屋上

　日が沈んできた、南校舎の屋上。
　佐和崎紗月と初瀬川理緒は、北校舎での凄まじい稽古を見ていた。その速さと小ささに、何が起きているのかまではあまり分からなかったが、ふたりは顔を見合わせ「すごいの見ちゃったね」と笑みを交わした。
「ねえ、紗月」
　理緒が塔屋の上を指差して言う。
「この上、上がってみない？　一度も上がったことないんだよね」
「いいよ。理緒ちゃんが行ってみたいなら」
　先程まで行われていた強靱な体と運動能力のぶつかりあいとは大違いで、紗月と理緒はおっかなびっくり少しずつ梯子をのぼっていく。
　ようやく登り切って、深呼吸。
　ひゃあ～とか、わあ～とか、なんとも言えない声を漏らしながら、初めての景色に感動するふたり。
　手をつないで、肩を寄せ合い、遠く寝子ヶ浜の海を見る。
　何を話しただろう。なんてことはない。中間テストの結果がどうとか、来年の大学受験がどうとか。
　ふたりで勉強したりしているけれども、理緒は受験勉強の合間にグラドルとしての活動もあり、なかなか重いように進まない。
「あたし、頑張れるかな」
　自信を失いかけている理緒の手を、ぎゅっと握る紗月。
「大丈夫」
　その言葉だけで、いや、そのぬくもりだけで、理緒は自分を取り戻す。
「うん、ありがとう」
　見つめ合い、思わず笑うふたり。
　西日が差して、寝子島全体が美しく輝く最高の時間。
　そんな綺麗な一瞬の中に、好きな人と一緒にいる。こうしてふたりで笑いあっている。ふたりは、それが嬉しかった。
　そこで、下校の鐘が鳴る。
　屋上は今日もまた、こっそり忍び込んだほしびとや寝子高生たちの日常と青春を受け止めて、静かに夜を迎えるのであった。

＜おわり＞

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あとがき

担当マスター：漂流サーカスランド
ファンレターはマスターページから！

遅くなりまして、本当に申し訳ありませんでした。

久しぶりに皆さんの思いが詰まったアクションを読んで嬉しくて嬉しくて、嬉しさのあまり体を壊してしまいましたが、
素晴らしいキャラクターが動いたり喋ったりするところを想像しながら、とても楽しく執筆することができました。

本当にありがとうございました。また機会があれば、お願いします。

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