テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。｜リアクション

テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。

食べチャイナ！

　篠崎響也は美味しくチャーハンをいただいたあと、店主の顔を見て気が付いた。
「やっぱり犯人は店長だったんだ」
　事情を知っていそうな面々に話を聞けば、篠崎はいてもたってもいられなくなった。
「こんなに美味しい炒飯なのに、悪い噂１つで店が潰れかけるなんて……」
　お店の役に立ちたい、そう考える篠崎のもとに、最上るるかから電話が。
『あ、あれ？　さっきまでチャーハンを食べたかったんだけど……？』
　騒動が収まって板野のろっこんの効果が切れたのだろう。
　最上は不思議そうな声を上げていた。
　篠崎は事件のことを説明すると、最上にあるものを持って『日本海』へ来るように頼んだ。
「来れるか？　最上？」
「もう来ちゃった！」
　なんと店先から電話していた最上である。
「響也を驚かせようとして隠れていたのに、全然気が付いてくれないんだもん！」
　いや、流石に分からない、と言うときっと拗ねてしまうだろう。
　篠崎は「ごめん」と一言告げながら最上の頭を優しく撫でた。
「実はね、ちょうどフルートの自主練しようと思って持ってきてたの！　役立って良かったぁ！」
「最上は練習熱心だな。俺も負けてられない」
　篠崎もバイオリンケースを開いた。
　早速２人は準備に取り掛かる。
　篠崎の準備に時間が掛かるらしく、最上はその間に自身の立場を最大活用することにした。
「あたしは読モ！　自分で言うのもなんだけど、表紙を飾るくらいの知名度はあるし、そこそこ売れてるんだから！」
　板野のチャーハンを八十八旗にシャァァーッとしてもらったあと、最上は実食しながらねこったーと自身のブログに画像付きでアップする。
『今日はシーサイドタウンの日本海っていうお店の炒飯を食べに来たよ♪』
『変な噂？　あれ絶対うそだよ！！　だってすごく美味しいもん！』
『お店もチョーキレイだし！（画像添付）ね？　キレイでしょ？』
『みんなはあたしと画像を上げた人、どっちを信じる？』
『疑うなら実際食べにきたらいいよ！』
『自分の目で見て舌で確かめるのが一番の近道だもん！』
『あ、そうそう！　今なら日本海であたしに会えるよ♪』
　最上のこのテコ入れは効果絶大であった。
　近隣の女子中高生がこぞって反応したのだ。
『るるかちゃんに会えるの！？』
『マジでＧ炒飯をるるかちゃんが食べてる！？』
『あれやっぱりウソだったんだ……』
『うちも食べてみようかなぁ？』
『るるかちゃんのいる日本海へ急げ～！』
　更新して10分もしないうちに、多くの女子中高生たちが日本海へ押し寄せてきたのだ！
「最上ってすごいんだな……！」
　篠崎が戸惑うほどの盛況ぶりである。
「まだまだこれからだよ！　ね、響也？」
　店先から出てきた最上は、何故かセクシーなチャイナドレスだった。
　髪もお団子頭にして、メイクもオリエンタルな印象に。
　なんでも、前日の撮影で使った物を気に入って購入していたのだという。
　勿論、ブログに画像はアップ済だ。
　彼女の胸元のスリットにちょっと動揺しつつ、篠崎は調弦を終えた。
「……ああ、やるか」
　２人はそれぞれ楽器を店先の前で構えると、クラシックの有名な曲を演奏しだした。
　中華飯店に響く優しいバイオリンとフルートの音色。
　一見ミスマッチのような組み合わせだが、来店したお客の疑心暗鬼を一気に吹き飛ばしてくれた。
　集客効果も大いに見込める。
　実際、足を止めて演奏に聞き入る通行人が次第に黒山の人集りを作っていく。
　なにより最上は大好きな篠崎とこうやって演奏できる事をとても喜んでいた。
　……人集りの奥で、灯斗南を追い掛ける野阿胡桃が猛ダッシュで横切っていく姿を、少し疑問に思いながら。