テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。｜リアクション

テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。

　数分後、板野は自慢のチャーハンを皿に盛ると、来店した者たちへ盛大に振舞った。
「これは俺の奢りだ。みんなに迷惑かけた謝罪の気持ちも込めて、今日は食べ放題だ！」
「無理はしなくていいぞ、店主」
　旅鴉は財布から１万円をカウンターに置いた。
「釣りはいらないよ。……ここの代金は私が持つということでどうかな？」
　腹ぺこたちは旅鴉を「女神降臨だ！」と一斉に平伏した。
「月詠ちゃんばかりにいいカッコさせられないよ！」
　八十八旗は板野に芝居がかった口調で言った。
「マスター、彼女にいつものを」
　すると八十八旗はカウンターテーブルに乗せたチャーハンの皿を勢いよく滑らせた。
　しゃぁぁぁーっと滑らせた。
　図解すると、こうなる。

（八）ﾉｼ　　　　　　　＝三三三三[チャーハン]　　（鴉）

「……アチラのお客様からです」
　板野も何故かノリノリで八十八旗の演技に付き合っていた。
「俺の奢りさ！」
　キラッと白い歯を見せる八十八旗。
　更に八十八旗はパチンと指を鳴らす。
　今度は板野がグラスに入れたお茶をカウンターテーブルの上で滑らせた。
　しゃぁぁぁーっと滑らせた。

（八）ﾉｼ　　　　　　　＝三三三三[特定保健用食品]　（鴉）

「黒い烏龍茶さ！」
　爽やかオーラを撒き散らす八十八旗。
　両方受け取った旅鴉は、それを夏夜と稲場が座るテーブルへ給仕をしだした。
「お待たせしました。炒飯と烏龍茶です」
「おーい、月詠ちゃーん！？　そういうことじゃないんだけどー！」
　肩透かしを食らった八十八旗はテーブルに突っ伏した。
「炒飯は、高カロリー食品だ……」
　夏夜はカロリーを気にして炒飯を食べようとしなかった。
「それじゃ、私がいただきますね！　八十八旗さん、ありがとうございます！」
　もっちゃもっちゃと食べながら稲場は八十八旗に手を振った。
「ま、まぁ、いいか！　レディーが喜んでくれるならオッケーさ！」
　その後も八十八旗は女性陣にチャーハンを奢り続けた。
　奢ることを口実に「ダイエットのためのジョギングデートをしないかい？」とナンパも忘れない。
　しかし、全員が八十八旗のお誘いに乗ることはなく、今日は全敗を喫した。
「いやぁ、みんなシャイだね！　アッハッハ！」
　八十八旗信彦、16歳。チャラ男。
　それでもへこたれない彼に、この先の幸多からんことを。