テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。｜リアクション

テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。

　テオの言葉は、不特定多数のもれいびの頭の中に響くようで。
　寝子島高校歌留多同好会に所属する小倉もなかもその１人だ。
「ふふふふ…話は聞かせてもらったわ」
　バンッと両足を大地につけて、腰元に両手を添えて胸を張る。
「これは！　私の！　この能力の！　珍しい……珍しい！！　出番じゃないかしら！！」
　小倉のろっこんは、なかなか披露する機会に恵まれていないようである。
　いや、むしろうっかり発動しないように注意しないといけないかもしれない。
　そんな癖のあるろっこんが、今日、まさにこの瞬間、活躍できる好機を得たのだ。
「兎に角カメラを抱えた『おじさん』ね。かなり目立つはずだわ。聞き込みしながら探していけば会えるはずよ！」
　そう言うと早速付近の中高生に話し掛けて、『おじさん』の出現ポイントを割り出すとする。
　すると、同様に聞き込みをしている貴家衿花と遭遇する。
「あなたもテオの声が聞こえたのね？」
　漆黒の髪のポニーテールと深い海色の瞳が特徴的な貴家が小倉に尋ねた。
　……小倉の背が小さくて、一瞬、同学年に話しかけられたかと勘違いした彼女である。
　寝子高の制服がなかったら分からなかったかもしれない。
「ええ、私もその『おじさん』を探している最中よ」
　小倉はそうとも知らずに頷いた。
「それじゃ、私たちは協力者ね。抱えるカメラってことは本格的なものなのかしら？　それならきっと目立つわ」
　貴家が周囲を見渡せば、小倉も注意深くあたりを警戒する。
「そういえばコック姿だってテオは言ってたわ。だから相当目立つはずじゃないかしら？」
　だが、このあたりにそれらしき影は見当たらなかった。
「お互い自己紹介がまだだったわ。寝子中３年の貴家衿花よ」
「私は寝子高１年の小倉もなかよ。……あっ」
　しまった、と思った時には遅かった。
　小倉のろっこん『小豆の誘惑』が貴家に発動してしまった。
　苗字を含めて自分の名前を名乗ることで発動してしまうこのろっこん。
　その効果は……。
「な、なんなの？　先輩の名前を聞いた途端、急に粒餡のお菓子が食べたくなったわ」
　こういうことである。
　小倉は自身のろっこんで、犯人を粒餡ジャンキーにしてしまおうと企んでいるのだ！
「と、とりあえず、コンビニで最中をご馳走するわね？」
「はやく……餡子が食べたいわ……！」
　メガネをキリッと掛け直す貴家を連れて、やむなく小倉は彼女へ粒餡チャージをさせることになった。