白昼斬月　～寝子島辻斬り物語　弐～｜リアクション

白昼斬月　～寝子島辻斬り物語　弐～

【落神神社参道】

　修は、あれからずっと山道を登り続け幸運にも敵に見つかることなく影人の大物の場所へとたどり着いた。
　周りには２体ほどの雑魚の影人しかおらず、絶好の機会とも言える。
（集中……集中……）
　作戦は単純。参道の道の石段を分解し、相手がこけたところを一気に襲いかかるのだ。
　相手は、こちら側に気づいていない、そして味方が来るということを修は断念せざるを得なかった。
（待てるだけ、待ったしな）
　そして、ついに相手が参道をゆっくりと降り始めたとき、分解が炸裂。
　相手の足下が崩れる。
（よしっ！）
　途中で拾った長めの枝と傘を武器に、一気に逆落としのように迫る。
「……はっ？」
　が、修の目に映ったのは獣のようにそのまま分解していく地面を蹴って、こちらを見据える大物の影人と、こけている雑魚２体。
　折りたたみ傘と枝を武器……絶望。
　修としては、この状況に笑いがこみ上げてきた。
　だが、彼は必死で頭を働かせる。
（示現流は確か、連続技も有るけれど初手を大事にする速攻の流派……だったな。なので初太刀はかわす事に全力だ）
　そして、影人の大物が常人ではない速度で修に迫る。
（対策……対策は。切下ろす動作を途中でやめることは不可能だ。なら、やっても足を踏ん張る時に瞬間的に静止することになる……故に、その物理的な動きを利用し、視界外から切り上げる）
　短時間で作戦を練り上げる修。
（相手の体重移動の最中に斜め下、そこだ！）
　その攻撃は、会心の一撃だったが……。
「……ちっ」
　見えた。が、反応できるかどうかは別である。
（馬鹿みたいに、早い、早すぎる！）
　そして、修にとって武力行使という手段は想定外であり、苦手な分野であった。
　そのまま修は消失し、参道には静寂が戻った。